試練の祭りは、最高潮へ
本人達はいたって真面目なつもり!
ロード岩流島中央闘技場にて、ラストダンサーのお出ましだ!
「オーディエンスも絶好調ォ! 喧嘩祭りもいよいよラストダンスゥ! 今回のファイトは過去最高のカードでお送りするぜェェエ!」
「……トラキロさん、復活が早い。もう元気に大声出してる」
【ああいうのって、実況だったか? もう完全に催しになってるだろ……】
「凄い熱気。周囲もだけど、下からも熱々」
私達が姿を見せたのは、大勢の観客に囲まれたリングの上。しかもリング自体は宙にぶら下がってて、下の方では赤いグツグツが煮えたぎってる。
こういうの、何て言うんだったっけ? 昔、本で見たことがある。確か『羊羹』だったかな?
「ほう。これが最後の番人が用意したステージか。中々の趣ぞ。我も気に入った」
「てやんでい。そう言ってくれると嬉しいでい」
「ただ、観客は全員ロードレオ海賊団ですからねい。ミラリアちゃんサイドはアッシらだけで、アウェイとなりますねい」
「成程。タタラエッジの時と逆になるか。これもまた、面白い試みぞ」
観客席は外周の離れた位置に設置され、金属の網で守られてる。これならグツグツにも落ちないし、熱々ながらも安全と言えよう。
ゼロラージャさん達も観客に紛れ込んでおり、どこかワクワクしながら見物してる。特にゼロラージャさんはこういうの好きだし、単純に催しとして楽しんでるっぽい。
――ただ、これが最後の試練のステージってのもどうだろう? お似合いと言えばお似合いだけど、何か物申したくてモニョモニョ。
「それじゃァ、まずはチャレンジャーの紹介だァ! もう今更、知らねェ奴もいねェだろォ!? 過去にもロードレオ海賊団へ挑み、今回の喧嘩祭り発端となったアホ毛の剣客ゥ! 二刀となった魔剣は、望む未来への壁を斬り砕けるかァ!? ミィィラァァリィィアァァアア!!」
「オオオォォオ!!」
「……トラキロさんもノリノリ。もうこのノリについて行くしかないっぽい」
周囲も下も熱々の中、トラキロさんの実況も熱が入って話は進んでいく。
少し前に私と戦ったダメージも何のその。観客のロードレオもそれに呼応し、これまでに感じたことのない熱気で辺りが包まれる。
――それにしても、あんな風に声出して大丈夫なのかな? 喉、潰れないの?
「対するはァ! ロードレオの頂点にして、この闘技場のチャンピオォン! ここでの戦績は無敗の帝王ォ! サイボーグの権威は伊達じゃねェ! レェェオォォパァァルゥゥウウ!!」
私の心配も我関せずとばかりに、トラキロさんの熱狂実況は続いていく。
私と同じく、レオパルさんのことも大声で紹介。何やらこの闘技場では凄いらしいけど、肝心の本人が見当たらない。
トイレにでも行ってるのかな?
ドンドン、ドドン! ドドドン、ドン!
「ふえ? これって太鼓の音?」
「キャァァアア! レオパル様の入場よぉお!」
「待ってたしー!」
「うおぉぉお! レオパル様ぁぁああ!!」
少し待ってると辺りに鳴り響く太古のリズム。観客――特に元Aランクパーティーといったニャンニャンパラダイスの面々が一層興奮を始める。
こういうのって、ノムーラさんもやってた。ただ、今回は規模が違う。
太鼓の音もドンドン大きくなり、リズミカルにペースを上げていく。さらには――
パッシュゥゥウウン!!
――私の前方で大きな上方向花火シャワー。そういえば、海賊船を自爆させるドッキリの時も花火を使ってたっけ。
本当にあの人ってこういうのが好き。何か派手にしないと気が済まないみたい。
「あっ! とうとうここまで辿り着いたか~……ミラリアちゃん! ウチと最初に会った時、まさかこないな展開になるとは思いもせんかったで候~!」
花火が収まってくると、リングの上で派手なポージングを交えて語る人影が一つ。語り口も最初に会った時と同じく、ソーローがどうのこうの語ってる。
私だって、この人とここまでの付き合いになるとは思わなかった。そもそも最初がパンティー怪盗だったのに、今では目指すものの前に立ちはだかる最後の壁だ。
「ロードレオ海賊団の女船長、レオパルちゃん! 喧嘩祭りのグランドフィナーレとして、大見参やでぇぇええ!! ……どや、カッコええやろ? 惚れた? 惚れ直した?」
「カッコよさは別として惚れてない。最初から今まで一度も惚れてない」
その場でクルリと回り、私の方へ向き直ってフィニッシュ。途中まではそこそこ決まってたのに、最後の言葉で台無しにしてくるのはどこか『らしい』とも言える。
とはいえ、これで役者も出てきてくれた。右手にはいつものポン刀を握ってるし、向こうも準備は万端だ。
「レオパルさん、ようやく直接会えた。熱々な羊羹の上にリングまで用意して、私の消耗が狙い?」
「アホか! 今回はそないにせこいことせえへんわ! ……後、下で煮えたぎっとるのは『羊羹』やない。『溶岩』や」
※溶岩は食べられません。




