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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
古代技術を守護せし豹と虎の拠点
412/503

◆海番虎トラキロⅢ

ついに決着なるか?

箱舟の番人、トラキロ戦。

 スペリアス様の魔剣は守りを意識して振るってた。そもそもトラキロさんが相手では、抜き身の技で傷を与えられるかも危うい。

 だから、攻めを意識する時はいつもの居合が必要。腰で納刀されたツギル兄ちゃんの魔剣こそがまさに攻め手だ。

 トラキロさんの右手に掴まれた魔剣を一度手放し、腰の魔剣へ素早く手を移す。間合いも完全に懐へと入った。


 ――魔法効果の付与もツギル兄ちゃんは素早い。これなら決められる。


「斬魔融合……震斬(ブレスラッシュ)!!」



 ズッパァァアアンッ!!



「ダッ……ハァ……!?」


 至近距離から伝家の宝刀、震斬(ブレスラッシュ)。私とツギル兄ちゃんが編み出した最初の技だから、繰り出す動きは一番軽い。

 威力についても確かなもの。おまけに完全に懐で決まり、トラキロさんのアテハルコンボディーごと一閃で斬り裂く。

 トラキロさんも体勢を崩すし、これで勝負あっただろう。




「……ってェ、これで終わるかァァアア!! シャァァラァァア!!」

「嘘っ!? 持ちこたえた!?」

【距離を置け! 完全にスイッチ入ってるぞ!】




 そう思ってたのに、トラキロさんはその場で踏みとどまって無理矢理右腕をこちらへ振り下ろしてくる。

 掴んでた二刀目の魔剣も手放し、普通のお目眼じゃなくても血走った眼光が見えるような錯覚。それほどまでに強烈な執念の覇気。

 反衝理閃でカウンターを狙う余裕すらない。ツギル兄ちゃんの言葉に従い、二刀目の魔剣も拾って距離を置くしかない。


「ぜェ……はァ……! こ、ここまで追い込まれたのは冒険者時代でもねェよォ……! だがァ……オレはロードレオ海賊団の副船長ォ! テメェらの求める箱舟とやらを守る壁として、簡単に引き下がれるかァァアア!!」

「す、凄い気合……!? こっちまで届きそう……!?」


 最早レオパルさんへの忠誠心や託された意志だけで立ち上がってるようなトラキロさん。それだけの価値が箱舟にあることだって理解してる。

 それらあらゆる感情を混ぜ合わせたように放つ咆哮は、離れたはずなのにアホ毛にまでビリビリ響いてくる。

 もうトラキロさんは細かいことなど考えてない。勝負の意味を全て背負いながらも、純粋に私を倒すことだけ考えてる。


 ――相手がサイボーグであっても、これが人間の『気持ちの力』というものか。一番油断できない力が備わってる。


「……でも、私だって負けない! 次で決める! 覚悟して……トラキロさん!!」

「ダーハハハァ! やれるもんならやってみなァ! オレだって……出せるもん全部出してやらァァアア!!」


 ただ、気持ちの力は私だって同じ。箱舟のためにここまで辿り着いて、あと一歩で負けるなんて嫌。

 再び二刀目の魔剣を抜き身で構え、トラキロさんと向かい合う。ここまで来ると、下手に技術と読みで掻い潜ることさえ難しい。


 ――まさに気持ちの勝負。その時々で最善の一手を選び抜くしかない。


「最後の攻防を始めようぜェ! オメメガビーム!!」

【ッ!? 初手を変えてきたか!?】

「何が来るかも完全には読めない! 集中して……見極める!」


 最初に仕掛けてくるのは、両眼から放たれるオメメガビーム。雷大砲のリスクを考え、あえて牽制気味に入れてきたと見た。

 何発か連続で放ってくるけど、トラキロさんのオメメガビームはレオパルさんほど連射に特化してない。魔剣で捌きながら縮地で左右に回避も交え、少しずつ距離を縮める。


「この距離なら……震斬(ブレスラッシュ)!」



 スパァ――ガキィンッ!



「効かねェなァ! そんなショボい遠当てじゃよォ!」


 試してはみたものの、トラキロさんの強度が相手では遠距離攻撃でまともな一撃も入らない。

 やっぱり、完全に懐まで潜り込まないとダメ。決定打がないと倒せない。


「こっちも狙い目かァ……! ブラスタークロ――」

「そのタイミングを待ってた!」


 そして、付け入る隙はやっぱりこれ。トラキロさんがブラスタークロウの発射準備に入ったところで、一気に間合いを縮めていく。

 あの技は強烈こそあれ、トラキロさんの技では一番隙が大きい。ずっとこのタイミングを狙ってた。

 至近距離では回避も防御も難しい。でも、発射前に潰すことができれば――




「――と見せかけてェ! プラズマフィールド、オープン!!」

【ッ!? しまった、フェイクか!? しかもブラスタークロウでだと!?】

「電気が使えれば同じなんだよォォオ!!」




 ――よかったんだけど、今度はトラキロさんも力押し以外で攻め立ててくる。

 雷大砲を発射すると思われたブラスタークロウを、すかさず床へ押し付けての技変更。プラズマフィールドで動きを止めるのが狙いか。

 私がこれまでと違う動きを見せたから、トラキロさんもそれに対抗してきたんだ。こんな状況でよくここまで機転を回せる。

 でも、これはかなりマズい。二刀目の魔剣を握ってるから、揚力魔法の足場回避も使えない。


 ――いや、足場なら作れる。無作法なんて言ってられない。



 バチバチィィイン!


 ザシュッ――タンッ!



「な、何だァ!? もう一本の刀を……踏み台にしたァア!?」


 思い付きから咄嗟の行動。でも、ギリギリ見極めてプラズマフィールドを回避できた。

 持ってた方の魔剣を床に突き刺し、柄の部分を足場に空中へジャンプ。スペリアス様の魔剣に守ってもらう形となり、トラキロさん目がけて空を駆ける。

 この技だって即席に過ぎない。だけど、私はこれまでだってこうやって思いついて乗り越えてきた。


 ――経験と窮地が可能性を生み出し、さらなる成長へ繋げてくれる。


「くっそォ!? だが、オレにはまだ近接での――」

【焦ったな、トラキロ! ミラリアがその隙を逃さないと思ったか!?】



 ガキィィィイン!



「なァ!? もう一本の鞘がァ!? ま、まさかこの技はァ……!?」


 プラズマフィールドのためにしゃがんでたトラキロさんの頭上もとれた。

 ブラスタークロウで殴りかかろうとするけど、それは悪手。こっちはすでに攻撃準備に入ってる。

 宙を舞いながらツギル兄ちゃんの魔剣を眼前へ構え、ブラスタークロウをガードする準備は万端。そこから放つのは、以前と同じくトラキロさんを倒した理刀流の奥義だ。




「反衝……理閃!!」



 ズッバァァァァアアンッ!!

経験が先を読ませ、勝利の一太刀へ。

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