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その聖女、兄妹の味方となる

スケベ兄貴はさておき、聖女様にも事情を話してみる。

「そう……ですか。ミラリアちゃんの故郷が……。大変お辛いことがあったようで、私も心が痛みます……」

「でも、今は大丈夫。目指すべき場所も見えたし、ツギル兄ちゃんも一緒にいてくれる。デレデレ魔剣だけど」

【ミラリア。お前は余計な一言を加えないと気が済まないのか?】


 ツギル兄ちゃんの態度にムカムカしつつも、フューティ様を交えて事情を説明してみる。

 ディストール王国がエスカぺ村を滅ぼしたこと。ツギル兄ちゃんが魔剣として私を守ってくれてること。楽園を目指してること。

 そのことを話していくと、フューティ様は時折涙を浮かべながら最後まで聞いてくれた。

 一応はお尋ね者な私だけど、フューティ様もレパス王子の態度などから事情は飲み込んでいる。こっちの話を信じてくれる。


「ともかく、ミラリアちゃんには楽園やエデン文明に関する情報が必要ということですね? やはりあの時、エスターシャ神聖国へ招く言葉をかけたのは正解でしたか」

「エスターシャ神聖国にはエステナ教団を始め、楽園に繋がる情報もあるはず。今の私には何も手掛かりがない。フューティ様、教えられる限り教えて」

「そうですね……。聖堂の文献なども調べれば手に入るのですが、今はこちらをお渡しするのが一番でしょうか?」

「何か持ってるの?」


 そして、私達がここへやって来た本題にも入る。できればディストール王国でも見てなかった情報がほしいけど、贅沢も言ってられない。

 フューティ様にも心当たりがあるらしく、カバンの中から何やら書物を取り出すけど――


「ッ!? それ、お社の地下にあったの! 確か……剣術の本!」

「ええ、そうです。ミラリアちゃんが私の代わりに封印された場所へ引きずり込まれた後、こっそりこちらで確保しておきました。レパス王子の態度はあの時から異常だったので、せめて使えそうなものをと思いまして。どうぞ、お受け取りください」


 ――それは私も一度は手に取った、剣術に関して記載された本。確か『剣術流派理刀流(りとうりゅう)』って名称で載ってた。

 私の居合はこの理刀流がベースらしく、少し読んだだけでも興味をそそられていた。これは本当にいいものを残してくれた。

 流石は聖女と名高きヒューティ様。目の付け所も聖女である。


「す、凄い……! 居合のことだけじゃなくて、他の技についても記されてる……!」

【『(ことわり)を表現せし剣術』……か。ミラリアがスペリアス様から教わった剣術だが、随分と大層なものだったんだな】

「それより、技が凄い! 邪をも引き裂く斬撃に、居合を活かしたカウンター! おまけに二刀流とかもある! カッコいい!」

【……お前って、歴史とかより実利を伴うものに興味持つよな。それにしても、普段からは想像もつかない興奮っぷりだ】


 私だって一介の剣士。こういう書物を見れば、思わず夢中で読み漁ってしまう。

 歴史とかもあるみたいだけど、思わず技の方に目が行ってしまう。テンションも勝手に上がるし、これは後でしっかり読み直そう。


「ただ私も読んでみた限りでは、直接的に楽園に繋がる情報はありませんでした。エデン文明の一つだとは思うのですが……」

【確かにエスカぺ村はエデン文明の存在をひた隠していました。俺もそのことは知ってるのですが、肝心の楽園に関する話には疎いものでして……】

「……ツギル兄ちゃん、なんだかフューティ様への態度が露骨に違う。またバンバンしてもいい?」

【や、やめてくれ。仕方ないだろ? 俺だって、村の外の女性と話す機会なんてなかったんだし……】


 それでも、楽園に繋がる情報は現状見当たらない。ツギル兄ちゃんもエデン文明の魔法は知ってても、その出所や歴史は分からない。

 フューティ様と私に対する扱いの差がムカつくし、魔剣になっても役に立たない時は役に立たない兄である。


 ――でも、思えばツギル兄ちゃんも初めてのことばかりなんだ。私も少しぐらいのデレデレは見逃してあげよう。


「残りにつきましては、また私の方で書物を漁っておきましょう。何でしたら、一緒にエスターシャ神聖国内を出歩いて調査しませんか?」

「え? いいの? でも、私ってお尋ね者だよ? 追われてるよ?」

「そこについてはご安心を。私の方で対策がありますので。少し頭の上を失礼します」


 フューティ様の方でも一緒に調査してくれる提案が出てくるけど、それはちょっと難しそう。私もフューティ様と一緒がいいものの、立場的に難しいのは分かる。

 それでもフューティ様にはまだ考えがあるらしく、何やら私の頭の上に手を置いてくる。

 アホ毛にも触れられてくすぐったい。自慢のアホ毛だから、あんまりクシャクシャするのは――



 コンッ コンッ



「あっ!? えっ!? まさか、訪問者ですか!? こ、こうなったら……えいっ!」


 ――などと思いながら待ってると、突如ノックされる部屋の扉。思わぬタイミングでフューティ様も慌てふためき、私の頭を軽くポンと叩いてくる。

 とりあえず、誰かが部屋に入って来るなら私は隠れた方が良いのではなかろうか?


「お待たせしました。入って構いませんよ」

「待って、フューティ様。私の顔を見られると――あ、あれ?」

【どうした、ミラリア――って、あれ?】


 そんなことにはお構いなく、フューティ様は部屋の外で待ってた人を中へと招き入れてしまう。思わず止めに入るも時すでに遅し。

 何より、近くにあった鏡を見ることで、私の動きの方が止まってしまった。ツギル兄ちゃんも同じく、鏡に映る私の姿に驚いている。


 ――まさか、これがフューティ様の言ってた『対策』ということだろうか?




「ア……アホ毛がなくなってる……!?」

【いや、それ以上に髪色が黒から銀に変わってることに驚け】

アホ毛>髪色

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