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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
古代技術を守護せし豹と虎の拠点
404/503

◇ロード岩流島喧嘩祭りⅡ

今度はフレンドリファイアされる側なトラキロ。

運が悪かったんだよ、このサイボーグは。

「……あの人達、何やってるの?」

【どうにも、攻撃が全部トラキロに向いてたみたいだな。……まあ、確かに物陰のミラリアを狙おうとすれば、必然的にトラキロが射線に入るか】


 物陰から動けずに万事休すと思ってると、ロードレオによる謎の同士討ちが発生。ただ、ツギル兄ちゃんの言う通り角度が悪かったっぽい。

 おかげでこっちは無傷。トラキロさんだけが大ダメージを受け、一人プスプスと煙を出して倒れ込んでる。


「ゲホゲホッ! 馬鹿野郎どもがァ!? こういう時こそ、タイミングが大事だろがァ!?」

「そ、そうは言うでヤンスが……トラキロ副船長の位置取りだってマズいでヤンス……。後、あんたなら『多少は巻き添えにしても大丈夫だろ。サイボーグだし』とも思ったものでヤンして……」

「だからって、全弾オレに誤射するかァ!? そもそも、その考え方自体がおかしいだろがァ! 焦ってんのかァア!?」


 これにはトラキロさんもプンプン。煙に包まれながらも起き上がり、部下達に怒号を飛ばすのはもっともだ。

 最初に私へ見せた気合はどこへやら。空回りしてると言わざるを得ない。


「……でも、これはチャンス! お先に御免!」

「し、しまったァ!? ミラリアちゃんが先に行っちまうぞォ!?」

「そ、そうはいかないでヤンス! 総員! もう一度アホ毛剣客を狙うでヤンス!」



 ドガガガガァァアンッ!!



「あだだだァァア!? だからオレを巻き込むなっつってんだろがァ!? 攻撃やめろォォオ!?」


 とはいえ、千載一遇のチャンスとはまさにこのこと。物陰から素早く飛び出し、前方のヤンスな幹部さんを飛び越えようと駆け抜ける。

 こっちの狙いは最奥にいるレオパルさんまで辿り着くこと。全員を倒す必要はない。

 もちろん再度狙われるけど、一度緩んだ攻撃なら掻い潜る隙は十分。縮地で回避できる。


 ――後、あえてトラキロさんと同じ射線に入るように動いてみた。あの人の追走も避けたいし、狙い通り私の回避した攻撃に巻き込まれてくれる。


「トラキロさんって、頑丈だけど回避は苦手みたい。避けなくても耐えられるからか」

【部下も理解してるんだろうが、悪い方向に働いてるみたいだな……。トラキロがかわいそうにも思えるが、構ってる時間も惜しい。このまま先へ進むぞ!】


 トラキロさんの頑丈さが変な形で仇となり、味方からも巻き添えを食らう始末。とはいえ、戦いにかわいそうも何もない。

 剣だろうがガトリングガンだろうが、攻撃を向ければそこは命を削って測り合う世界。まあ死にはしないだろうし、先へ進むことを優先しよう。


 ――とりあえず、ラッキーだったとは思う。





「一難去ってまた一難……!」

【流石にさっきみたいなので終わりじゃないか……!】


 ライフルと大砲にトラキロさんのガトリングガンを抜け、弧を描くような通路を駆け抜けた先まで辿り着いた。

 途中でもロードレオの攻撃は加わって来たけど、狭い通路だとライフルみたいな武器は悪手みたい。こっちの居合で先手を取り、有利のままに進むことができた。

 ただ、この先はまたしても難所。眼前の光景は前にしては、一度立ち止まるしかない。



 ビュゥウンッ! ビュゥウンッ!



「な、何これ……!? 大きな振り子……!? たくさんビュンビュン振られてて、当たったら下に真っ逆さま……!?」

「驚いたでゴンスか! ここはロード岩流島名物『鉄球ハンマー振り子の間』でゴンス! いくつもの巨大鉄球が振り子のように飛び交い、当たれば頑丈鉄板床へ転落! ここを抜けない限り、レオパル船長のもとへは辿り着けないでゴンス!」


 まさに行く手を遮る鉄球の乱舞。離れた安全な高台から、今度はゴンスな幹部が語りかけてくる。

 室内の端ではロードレオの下っ端が絶えず鉄球を押して飛ばしており、ロープで結ばれたそれらが振り子となって暴威を放ってる。

 足場は細くて、転落すれば固そうな床へ叩きつけられるおまけつき。転移魔法で抜けようにも先の確認が難しい配置となってる。

 これはなんとも考えられたものだ。行く手を遮るには好都合。


 ――でも、こういうのは決まった場所でしか使えないよね。何だったら壁でも作った方がいいとは思うけど。


「ロードレオによる試練の恐ろしさ、理解したでゴンスか? これこそがロード岩流島喧嘩祭りでゴンス!」

「……成程。これもあくまで私を試すためってことか。だったら望ませてもらう。私の身のこなしを甘く見ないで……!」


 とはいえ、完全に塞いで私が辿り着けなくては意味がない。これはあくまでロードレオの挑戦状だ。

 この巨大鉄球による振り子に細い足場も、いわば『権利を手にする道の厳しさ』を表現してると言えよう。

 ならば挑ませてもらうのみ。振り子の動きを見極め、タイミングを見計ることができれば――



 ギュイィィィ――ドッガァァアン!!



「ミラリアちゃんよォオ! 追いついたぜェエ! 右腕を換装すれば、ショートカットだってできんだよォォオ!!」

「ふえっ!? ト、トラキロさん!? もうここまで!?」

【本当にタフさだけは折り紙付きだな!? おまけにあの右腕は、以前に見せたドリルか!?】


 ――などと考えて駆ける準備をしてると、轟音を立てて貫かれる壁。そこから姿を見せるのは、右腕をドリルへ変更したトラキロさんだ。

 ここに至るまで、道は弧を描くように続いてた。だからトラキロさんはドリルを使い、一直線に繋がる道を作ってここまで来たみたい。

 少し前に味方の攻撃で黒焦げだったのに、よくぞここまで追いついたものだ。敵ながらアッパレと言えよう。


 ――ただ、出てきたその位置はマズいかも。


「ト、トラキロ副船長!? そこにいたらマズいでゴンスよ!?」

「あァ? マズいって何が――」



 バッコォォオンッ!!



「ピンボォォオル!?」


 だって、振り子の鉄球がまともにぶつかる位置だもん。

えっと……あの……トラキロさん?

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