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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
遥かなる記憶を託す島
397/503

次なる鍵を求めし少女は、かつて共にした種族のもとへ

魔王の背に乗り、これまで訪れた地へ再訪の時。

「古代の願いが託されし浮島の真下に、その願いを繋げるイルフの里があるとはな。これもまた運命ぞ」

「私もそう思う。いずれにしても、箱舟の話を聞くには好都合。ゼロラージャさん、すぐに向かって」


 魔剣のスペリアス様が教えてくれた楽園へ辿り着く手段は、かつて私も耳にした箱舟。箱舟が空を飛べば、結界で守られた楽園にも近づけるみたい。

 そうと決まれば早速動く。あんな話を聞かされた後で、心乱れて立ち止まってる暇なんてない。

 再びドラゴンのゼロラージャさんの背に乗り、浮島の下にあるイルフの里を目指す。


【でも確か、イルフ人の箱舟って空は飛べないんだったよな? そもそもが複製されたものとも言ってたし】

【ワシも教えられるのは『楽園を目指す箱舟という手段』だけじゃ。その後の詳細――ついて――いかんな。浮島と離れるからか、ワシとのリンクも途切れそう――】

「無理しないで。もっと大事な時に話が聞けなくても不便。また必要な機会まで休んでてほしい」

【すまぬ――一度リンクを――解除――る】


 最初に言ってた通り、スペリアス様は浮島から離れると上手く喋れないみたい。こっちの状況は見えてるみたいだし、声が途切れ途切れになるなら今は無理しないでもらおう。

 一応は魔剣として一緒に来てもらってるけど、ツギル兄ちゃんみたいに魔法といった力も使えないみたい。武器としてはあくまで普通の刀の域を出ない。

 もっとも、いてもらうだけで心強い。妙な期待より、今後もまたお話できる機会があればそれでいい。

 何より、今はイルフの里を優先したい。




【ト、トトネ様! 大変だい! ま、またドラゴンだい! こ、今度は空からこっちへ……!?】

「カミヤスさん、大丈夫です! あのドラゴンさんに敵意はないみたいです! それに、なんだか懐かしい気配が……?」




 ゼロラージャさんもイルフ人を驚かさないよう、ゆったりと高度を下げてくれる。

 少し警戒する声も聞こえたけど、同時に懐かしさも感じる声。まだ当時の焼け跡は残ってるけど、耳の長いみんなが確かに生活してる姿も見えてきた。


 ――イルフの里。楽園から逃げ出したご先祖様を持つ種族の里だ。


「あれは……トトネちゃん! カミヤスさん! よかった……また会えた!」

「ぬぬっ!? もしや、ミラリアお姉ちゃんですか!? ツギルさんも一緒ですか!? 私も会いたかったです!」


 ゼロラージャさんの背中から飛び降りれば、イルフの巫女のトトネちゃんがこっちへ駆け寄ってくれる。

 本当に懐かしい。私をお姉ちゃんと呼んで笑顔で抱き着いてくれる姿には、なんとも言い表せない感情がこみ上げてくる。


 ――これが萌えるか。萌えるとは素晴らしい。


【この二人がドラゴンの背に乗ってたってことは、とりあえず敵ではないみたいやい……。でも、だったらどういうこと――どわわっ!? ドラゴンから大男に変身したやい!?】

【その辺りの説明は長くなるが、この人も味方だ。かなり複雑な話もあるし、長老様に会わせてもらえないか?】


 タケトンボのツクモのカミヤスさんも困惑しつつ受け入れてくれる。ゼロラージャさんのことやここへ至る経緯の説明も必要だけど、ツギル兄ちゃんの言うことももっとも。下手に時間をかけてる場合でもない。

 私もトトネちゃんに萌えてばかりじゃいられない。アホ毛もピンと凛々しく立て直し、ここへ来た目的を果たさないと。


「ミラリアにツギルが再び訪れたと……!? それに先程のドラゴンの姿……もしや、あなた様は当代の魔王様で?」

「ウヌのその佇まい……成程、この里における長か。いかにも、我は当代魔王を務めるゼロラージャという者ぞ。今はこの者達と行動を共にしておるが、見る限り余計な説明は不要ぞ。まずは先に尋ねたいことがある故、足早でも話を伺いたい」

「……どうやら、私が感じた危機は確かなものだったようですね。ならば、こちらも従いましょう」


 長老さんも集まったイルフ人のみんなの中から姿を見せ、何かを察したように話を進めてくれる。

 私達が魔王と一緒にいることさえ、何かを察して話を優先する辺りは流石の長老様。全て語らずとも、事態の大きさは見えてるみたい。

 実際、この辺りは話すととてつもなく長い。下手したらお日様が一回沈んでまた昇る。


「長老様。私達、箱舟のことを聞きにここまで来た。箱舟を使ってお空を飛んで、楽園まで乗り込む必要がある」

「箱舟……を? それもまた、スペリアスの示した道のりと?」

「……そうと言えばそう。これがスペリアス様が……私へ託した最期の願い。私達にはどうしても箱舟が必要」

「最期の願い……とな。その話からするとスペリアスはすでに……いや、ここの話も含めて後にしよう。事情は私が描いたものより深そうだ。何より、箱舟の件ならば場所を移したい」


 スペリアス様のことだって話さないといけない。この地では三賢者と呼ばれてたし、どういった結末だったか伝えるのも私の義務。

 ただ、この辺りの事情も長老様は察してくれる。その上で私達を手招きして、みんなで一緒に後ろをトコトコ。

 以前にも見せてもらった箱舟が眠る森の地下を目指してるらしく、途中の長い階段も下っていく。


「私も昨今の世界情勢を見て、嫌な予感は拭えなかった。スペリアスに関しても、情勢の中での結末と考えられよう」

「世界情勢って……何かあったの?」

「この森の近くだけでも少しな。ただ何かできることを考えた時、我々にできるのは箱舟に関することだ。あれからさらなる改良に臨んだが、空飛ぶ船にはまだ成れていない」

【流石に海を渡るのと違って、空を飛ぶのは時間をかけてもできるかどうか……。ただ、俺達にはどうしても必要なんです】

「分かっている。私も考察路線を増やし、資料の精査を進めていたところだ。君達がこのタイミングで現れたのも好都合だ」


 イルフ人の作った箱舟の眠るドックにやって来て、お目当ての箱舟もあの時と同じように置かれてる。

 私達をスーサイドへ届けた後、無事にここまで戻って来れたみたい。壊れた形跡もない。

 ただ、空を飛ぶことはまだできないとのこと。今回はそれではダメ。楽園へ辿り着けない。


 ――長老様はそこも考え、これまでとは違う計画も立てていたようだ。




「我々イルフ人が作ったものではなく、古代に作られたという『本物の箱舟』の所在。私はずっと、それを調べていた」

ところで、本物の箱舟って誰が持ってるんでしょうね?

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