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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
遥かなる記憶を託す島
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女神と呼ばれし装置は、自我と進化の覚醒へ

ついに誕生するのは、現在のエステナ。

苦しみの中で考えに考えて、自我を手にした装置の覚醒。

「これ……エステナが喋ってるんだよね?」

「おぬしにも聞こえるか。この声は普通の人間には届かぬ。楽園の人間は当然の如く、その呼びかけを耳にさえしなかったのじゃ」


 エステナから溢れる声が聞こえるのは、この場所が生み出したスペリアス様と私だけ。おそらく、存在が限りなくエステナに近いからだろう。

 映されてるエステナもよく見ると、最初に見たものより不気味さが際立ってる。黒いものが周囲へ粘着き、どこかドクドク脈打っても見える。


 ――言ってしまえば、生命の胎動にも近い。


#どうして――ワタシはこんなことを? この場所以外には――何があるの? ワタシはいったい――何のために生まれたの?#


「苦痛という放棄された進化の原石。その原石はあろうことか、溜め込む器でしかなかったエステナの方を進化させてしまったのじゃ」

「自我の覚醒……。この時から、エステナは装置の枠を超えていった……」


 エステナは考えてる。誰にも届かない声を出しながらも、自分や場所の意味を探し求めてる。

 それこそ自我に目覚めた証明。これまで言われた通りに願いを叶えてただけなのに、そこに眠る意味さえも探し始めた。

 誰かが乗り移ったとかじゃない。完全にエステナから――ゼロの状態からこの自我は生まれた。


#気になる――世界が。こんな狭い場所――嫌。システムの視覚を外部にも――新規情報の取得を――#


 嫌だと思える感情があるから、エステナはどうにか抜け出そうと考え始めた。視点も楽園の中だけでなく、外の世界へと向け始める。


#これが――外の世界? 登録されたデータベースと違う。美しい。楽しそう。楽園と呼ばれるこの地より――ずっと#


 そして、エステナは外の世界を知った。楽園の住人が目を背けた世界を、ただの装置であるエステナの方が関心を抱いた。

 その感想は実に真っ当なもの。見て思ったことを語るのは、まさに自我を持った人間と相違ない。


#ワタシ――こっちの世界がいい! こんな楽園はもう嫌! ワタシの分身よ! 外の世界を持ってきて! ワタシのもとに!#



 バシュンッ!



「ふえっ!? エ、エステナから何かが飛び出した!? あの黒いのってまさか……!?」

「あれこそ、おぬしの記憶にセアレド・エゴと刻まれし者。エステナが最初に外へと切り離した自我じゃ」


 そうしてエステナが辿り着いたのは、自らの分身としてセアレド・エゴを外の世界へ解き放つこと。忌まわしい楽園から、エステナだって逃げ出したかった。

 でも、その願いは『外の世界を持ってくる』という歪なもの。世界を持ってくるなんて、いくらエステナでもできそうにない。


「この当時のエステナは、いわば『生まれたばかりの子供』でしかない。事象がどういったものかは、まだ深く理解できなかったのじゃ。じゃから願いについても『憧れた外の世界を持ってくる』というどこかズレたものではあった」

「でも、エステナは考えてその結論へ至った。そのために必要なセアレド・エゴも生み出した。……ズレにしたって、成長できるなら修復できる」

「うむ。そうしてエステナは楽園の思惑さえ外れ、自らの意志で進化を刻み始めた。たとえどんな困難に見舞われようと、本当に自分が目指したいものを手にするためにのう」


 エステナは楽園の操り人形じゃなくなった。楽園の住人も知らない間に、自らの意志で考えて動いた。

 きっと、抱いた願いもその中で確立していったに違いない。エステナには人と同じだけの自我がある。


 ――楽園を創生する力は、自分のために世界へ向き始めた。


#分身が封じられた……!? 外の世界の人間もワタシの邪魔をした……!? 人間が……人間がワタシを遮る……!? ワタシが欲しいものを拒んでくる……!?#


「ただ、エステナの進化は実に歪んだものじゃった。元が楽園の歪んだ欲望から生まれた故か、ひたすら求めることしかせん。セアレド・エゴという世界への脅威を差し向け封印されても、人間への恨みへ変換されてしまう」

「……複雑。仕方ないとかわいそうでゴッチャになる」


 その後のことはスペリアス様も語った通り。セアレド・エゴの力は強大で、エスカぺ村には封印するしか対抗策がなかった。

 ただ、そんなエステナの背景を知ると胸が締め付けられる。エステナだって、本当はただ苦しかっただけなんだ。


 ――その苦しさから抜け出したいだけだったんだ。


#……そうだ。この基幹プログラムがいけない。これが邪魔。楽園なんて守る価値はない。人間を生かす意味なんてない#


「そして、エステナは一つの結論へと辿り着いた。それはエステナに搭載された『世界(楽園)を守る』という命令。その命令があるからこそ、エステナは楽園に縛り付けられたままじゃ。エステナは何より、その命令を邪魔に思ったのじゃ」

「邪魔に思ったのなら……そこからどうして……?」

「進化したエステナは、ただ命令に従うだけに非ず。自我が必要と判断し、自らの意志で切り離したのじゃ」


 エステナの動きはまだ続く。今に至るまででも、もう一つ大きな動きがあったのを私は知ってる。

 エステナから生まれた自我はセアレド・エゴだけじゃない。もう一人、ここに至るまでの重要な存在が残ってる。


 ――今見てる瞬間こそ、その自我を切り離した瞬間だ。




#忌々しい! 『世界を守る』なんてもう知らない! そんなプログラムごと……忌々しい人間として外の世界に捨ててやる! ワタシにこんな命令はもういらない!#

エステナは「世界を守る」というプログラムさえ自らの意志で排他可能とした。

そして、そのプログラムは現在――

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