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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
遥かなる記憶を託す島
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転生された異世界は、新たな時代へ

この物語は異世界転生物でもあったのです。


……そう。転生したのは「世界そのもの」

「あっ……さっきまでの光景、見えなくなっちゃった。でも、最後に見たのって……?」

#あの時浮かんだ島こそ、まさにこの施設がある島だ。ここは楽園へ対抗できる可能性を待ち、愚行の歴史を知るべき人間を招く場所だ#


 博士さんの乗った浮島を最後に、これまで見てた光景も終わってしまった。再び辺り一面真っ暗に戻り、説明してくれる声だけが聞こえる。

 まさしくもって運命と言うべきか。見せてもらった中で博士さんも望んだ人間は、今確かにここで楽園の歴史を知ることができた。


 ――それこそが私。まさかエステナの自我から生まれた人間が導かれるなんて、これはこれで運命的かも。


「もしかして、あなたって博士さんだったりするの?」

#いや。博士はすでにこの世にいない。これは博士がこの場に残した人工知能だ#

「人工知能? エステナと同じなの?」

#昔のエステナとは同じだった。だが、現在のエステナのような自我はない。イメージをもとに受け答えしてるだけだ#

「考えたりとかはしてないってことかな? でも、姿がないのは不便。そういうのって見せられないの?」


 流れからして、語ってくれてるのも博士さんかと思ったけど違うみたい。博士さんが作ったエステナの別バージョンみたいなものか。

 ただ、こっちは苦痛を溜め込んで装置の枠を超えたりはしてない。あくまで私の気になることへ答えてくれてるだけ。

 今のエステナと違うのはある意味安心できるけど、せめて姿は見せてほしい。

 お話してるのに姿が見えないって不便。こういうのは相手の顔をしっかり見るのが大事だって、スペリアス様からも教わった。




「――ふむ。なら、こういった姿を見せてみようかのう。おぬしにとって、特に縁が深い人物みたいじゃな?」

「ふえっ!? そ、その姿……ス、スペリアス様……!?」




 そう思ってお願いしてみたら、確かに要望通り姿を見せてくれた。ただ、その姿はなんと私のお母さんであるスペリアス様。

 口調まで似通ってるし、一瞬本当にスペリアス様かと思っちゃった。アホ毛までドッキリ。


「この姿じゃが、ワシには定まった姿というものがないものでな。じゃから、こうしておぬしの記憶をもとに仮の姿を作らせてもらっておる。やはり、不服かのう?」

「……ううん、それでいい。その人の姿は私にとって大切な人。ここまで辿り着かせてくれた人でもある。その姿で語ってくれることには、私にとっても大きな意味がある」


 なお、このスペリアス様は本人も述べる通りの偽物。この空間自体も楽園に近いし、あの時の幻と同じこともできるみたい。

 とはいえ、こっちは最初から偽物って明言してくれてる。変な誘惑もないし、嫌悪感も出てこない。


 ――むしろこうやってハキハキ述べてくれるのは、本物のスペリアス様にも近い。


「納得してもらえたのならば、この姿で説明を続けようかのう。先程も見せた通り、世界はゲンソウの果てに一度滅んだ。しかし、人間といった生命はそこから再び歴史を刻む。ゲンソウによって『魔法も魔物もある世界』がベースとなりつつも、それを受け入れた生命によって進化していった。ルーンスクリプトといった技術は『エデン文明という古代文明』として扱われ、今の世界が元々の世界であるように歴史も繋がったのじゃ」

「それこそ、私達の今住んでる世界……。なんだか、当たり前だったのが凄く壮大。世界って……神秘そのもの」

「ワシを作りし博士も同様に考えておったのう。結局のところ、人間は神にはなれぬ。世界や生命の(ことわり)とは、人間の想像を超えていくものじゃて」


 スペリアス様の目を見てお話ができるとは予想外。感慨深さはあるけど、内容へ耳を傾けることは忘れない。

 この世界は一度滅んだ。昔の人達が生み出したゲンソウと、今も君臨する楽園によってメチャクチャになった。

 今の世界はその後に創られた――進化の歴史が再びやり直された世界。まさしくもって『世界そのものが転生した』と呼ぶほかない。


 ――まさしく世界の神秘。スケールの大きさ故か、意識しないと気付くことさえできなかった。


「ここから先は博士が用意した記録とは別じゃが、その後の世界を少し見せるかのう。この施設は大空から、今に至る歴史も記録しておる」

「人々の姿が見える……。服装とかも私が知ってるものに近くなってる……。魔法だって使ってる……」

「今の世界は旧時代における『創作した物語の世界』がそのまま飛び出したようなものじゃ。旧時代の技術もエデン文明という形で組み込まれて浸透。魔法といった空想に過ぎなかった世界が新たなバランスを形成し、確かな形へと成り立っていった」

「これが進化の歴史……! 凄い……!」


 新たに見せてもらえた光景は、さっきまでの楽園誕生とは違う。世界がスクスクキラキラとしてて、どんどん成長を刻んでるのが見える。

 強欲による排他なんかじゃない。私もよく知る世界が、過去の記憶の中で確かに形成されていく。


「魔物も『最初からいて当たり前』という歴史になった。魔法はカラクリに代わる新たな生活基準となり、ゲンソウは当たり前すぎて意識もされなくなった」

「普通に魔法が使えるんだから、一番最初のゲンソウについても意識が弱くなったのか」

「左様じゃ。ルーンスクリプトは古代文明として眠ったが、それらも含めて転生した世界の構造。人が余計な手を加えずとも、世界のバランスは保たれておった。楽園から溢れ続ける闇瘴についても同じことじゃて」


 新たに見せてもらえた楽園以降の歴史には、凄いって感想しか出てこない。私が知る世界に眠ってた神秘も読み取れて、これ以上にキラキラしたものなんてない。

 過去に一度世界が滅んだことなんて知らなくても、今の時代をみんなは生きてる。自分達で確かな道を作り、自然と進化を続けていく。


 ――それは闇瘴という脅威に対しても同じこと。




【聖女様! 闇瘴が溢れているとの報告が!】

【では、参りましょう。世界を苦しめる闇の浄化こそ、神に選ばれた私の使命です】


「あ、あれって……聖女様……!? フューティ姉ちゃんと同じ……!?」

「世界は闇瘴に対しても、独自の進化で対応していったのじゃ。聖女というのも『闇瘴を浄化できる進化の選択』の一つと言えるのう」

スペリアスの姿でさらに語られるのは、ミラリアも生きる今の時代。

乱された摂理を修復するように進化した生命の歴史。

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