浮島に潜む知識は、古来の真実へ
この浮島こそ、世界の全てを見てきた媒体。
「ほ、本当に浮いてる……? 乗っても落ちる気配がない……?」
「我も世界中を飛び回りはしたが、宙に浮く島はここ以外にはなかったな。そして、いまだにその謎を解明できてもおらぬ」
【島自体も雲に隠されて、イルフの里からでもないと見つけることさえできない……。何かが眠ってる気配は十分か】
ゼロラージャさんが浮島へ着地すると、私も恐る恐る背中から降りて地面を踏みしめる。
急に沈むんじゃないかとも思ったけど、地面自体はしっかりしてて安心。島自体が宙に浮いてるからちょっとヒヤヒヤした。
まあ、ゼロラージャさんが乗っかってる時点で問題はないか。いずれにせよ、こんな島が宙に浮いてるなんて不思議の塊。
「島自体はそんなに広くもない。……中央に建物があるだけ?」
「左様。一応の出入り口もあるのだが、我やスペリアスでは立ち入ることができぬ。もしも立ち入ることができるならば――」
【ミラリアの可能性が高い……ってことか。確かにこれは、エデン文明の根底そのものとも思えてくるな】
着地した先に見えるのは、まん丸いドームの形状をした建物のみ。それ以外は何も見当たらない。
近寄ってみると扉もついてて、ここ以外は意味の見えない実にシンプルな造り。ただ、スペリアス様でさえも中へ入ったことはないみたい。
あのスペリアス様でさえ入れなかったんだ。楽園にエステナ、エデン文明といった古の存在を紐解く鍵があるならば、ここ以外には考えられない。
――そして、この中へ入れる可能性があるのもエステナに連なる私だけ。
ズズゥゥ
「ッ……!? わ、私の手……今、この扉の奥に入り込んだ……!?」
【開かれたとかじゃなかったな……!? まるで、ミラリアだけを招き入れるようだ……!?】
「やはり、ウヌこそがここへ立ち入る資格を持った者か。この様子だと、ウヌ以外は立ち入れぬか」
何気なく扉へ触れてみると、ズズッと吸い込まれるように私の手が中へ入り込む。
思わず引っ込めたけど、やっぱり私なら中へ入れる。スペリアス様やゼロラージャさんでは辿り着けなかった領域へ、私だけが導かれてるみたい。
ここへは楽園のことを知るためにやって来た。世界を創ったとも言われる根底を知りてこそ、この先の道も開ける。
「……ゼロラージャさん、ツギル兄ちゃんをお願い。私一人で中へ入る」
【ミ、ミラリア一人でか!? 確かに俺達じゃ入れそうにないが……!?】
「致し方あるまい。どう足掻こうと、エステナに連なる宿命は逃れられぬのであろう。我らはここで帰りを待つぞ。それこそがミラリアにできる最大限の配慮ぞ」
【……分かった。ミラリア、ヤバいと感じたらすぐにでも抜け出してこいよ?】
「うん、待ってて。……いってきます」
道がここに在るならば、進む以外の選択肢はない。一人ぼっちは怖いけど、進まないことには始まらない。
人型に戻ったゼロラージャさんへツギル兄ちゃんを託し、再び一人で扉へ近づく。今度は両手を押し当て、恐る恐るも前へ踏み出していく。
ズズゥゥウ キィィイン
「き、奇妙な感覚……! 頭もちょっと痛む……! これ、楽園の時に近い……!」
頭に痛みが走りながらも、体全部が中へ入り込むまで押し入っていく。感覚からしても、楽園で幻を見た時に近い。
この痛みがより確証させてくる。この場所こそ、楽園にもっとも近い場所だって。
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――創世装置との同期性確認。システム認証完了。
――とうとう、懸念していた可能性が動き出したか。
ならば、踏み入った者こそがそれを打ち砕く希望か。
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同じように奇妙な声も聞こえてくるし、確定と言って間違いないだろう。
ここにはまだ私達の知らない何かがある。気が付けばゼロラージャさんとツギル兄ちゃんの姿どころか、景色そのものさえ見えない。
辺り一面完全な暗闇。それでも前へ進むことはできるから、ひたすらに歩み続ける。
頭の痛みも治まってきて、まるで私が空間と同化するような感覚だけど――
「な、何……あれ……? 青くてまん丸の……玉?」
――突如眼前に現れたものを見て、足を止め眺めてしまう。
全体的には青色。ところどころ緑だったり白かったりするけど、綺麗で青い球体だ。
辺り一面は暗闇のままで、青い球体だけがこの空間に浮かんでる。ただ、手を伸ばしてもどういうわけか触れられない。
再度進んでも距離が縮まらないし、そこにあるけどそこにないという不思議な感じ。宙に浮かぶ島の中には、さらなる不思議が眠ってた。
――でも、これって何だろう? 不思議だけど、凄く知ってるような気もする。
#よくぞ参られた。おそらく、我々はそなたの到着を待ち望んでいたのだろう。あの後悔の日から幾星霜、もう正確な時間さえ記録にない#
「だ、誰? 私に語りかけてるんだよね? 姿を見せて?」
#申し訳ないが、まだ明瞭な姿は形成できていない。ただ、ここへ立ち入ってくれたそなたには、是非見てほしいものがある#
「見てほしい……もの……?」
再び聞こえてくる頭へ直接響くような声。楽園の時におそらくはエステナが語りかけてたものと違い、ハッキリ聞き取ることができる。
でも、まだ正体は見せてくれない。その代わり、私に見てほしいものがあるみたい。
姿を見せないのに見てほしいものがあるなんて、ちょっと身勝手かも。でも、何か見せてくれるなら気になる。
――私の本能が告げてくる。人間としてではなく、エステナから生まれたことによる本能が。
#そなたにこそ、この世界の真実を学んでほしい。この星がどういった運命を辿り、現在の姿へ至ったのか。その全てを#
さあ、始めましょうか。
この物語の舞台となった世界の真相を。




