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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
少女と魔剣の旅は遥かなる地から再び
372/503

神と呼ばれし少女は、人として信じる

ミラリアはこの旅で誰よりも強くなった。その心根も含めて。

「ぬう? ミラリアよ。ウヌは我が語る侵攻について、嘘だと――」

「うん」

「……即答か。ならば、そう考えるウヌの真意を語ってみよ」


 内心、私もゼロラージャさんのお遊びに付き合ってるほど余裕はない。もっとも、こういった言葉にも何か意味がある気はするけど。

 とりあえず、納得いくよう説明するのは必要か。ゼロラージャさんもご所望だし、率直に述べてしまおう。


「ゼロラージャさんって、タタラエッジの頃から私を試したがってる節がある。再会して最初のやりとりもそんな感じだった」

「されど、我は魔王ぞ? 人間を脅かす魔の王ぞ?」

「それも自分で言ってるだけ。そもそもタタラエッジで私の願いを聞いてくれた人が、今更何を素っ頓狂なことを口にするの? 王様は約束を違えないんじゃないの?」

「……ドラララ。で、あるな」


 思うに、ゼロラージャさんはかなりクセの強いタイプ。相手を試すような態度がそのいい例。

 それでも素直に尋ねれば答えてくれるし、元々が悪い人ってわけでもない。少なくとも、嘘で約束を反故にはしない。

 何より、私には一番信じられる要因がある。


「私はお母さんを――スペリアス様を信じてる。スペリアス様は死の間際、あなたを頼るように教えてくれた。スペリアス様が信じた人が、その思想を無下にするはずがない」

「……ただの無知とも言えぬということか。なおも我を人の枠組みとして接するか。……ドラララ。やはり王では神を計り切れぬか」

「その『神様』って表現はやめてほしい。私は『人間』だってさっきも言った。それも試すための挑発なら、これ以上は意味がない」

「……で、あるな」


 スペリアス様はゼロラージャさんを信じてた。だから、私も同じように信じる。

 人と魔物の違いも魔王の歴史も、私には理解しきれない。だから、ただ純粋に今思うことを信じる。


 ――何より、私は神様なんかじゃない。どんな評価をされようと、そこだけは譲れない。


「何度も機嫌を損ねてすまぬことをしたな。我も魔王として、共にするべき相手の真意は測っておきたい。上に立つ王が選択を誤れば、下に着く配下に示しもつかぬのでな」

【てことは、さっきの『人間を滅ぼす』って話も嘘で……?】

「王が虐殺などするか。さようなことをすれば、醜き暴君ぞ。仮に人間を滅ぼしでもすれば、こうして酒を呑むこともできぬ。そこを考えれば、大して難しい話でもなかろう?」

【……自分から吹っ掛けておいて、真っ当な言葉で返されると腹が立つ】


 ゼロラージャさんも頭を下げて謝罪してくれるし、意図があるならこれ以上の問い詰めはしない。

 ツギル兄ちゃんは本気で信じちゃってたけど、私は最初から自信があった。なんだか、ツギル兄ちゃんよりも見えてたっぽい。


 自身の真相を聞かされた時、確かに動揺した。でも、スペリアス様が――お母さんが私を人間だと認めてくれた。

 きっと、その自信が心を強くしてくれてる。後ろ向きな学習とはまた違う。


 ――前を向いて強くなれるのも、また人間の強さだろう。


「まあ、ウヌらを試したいという気持ちはまだあるぞ。楽園やエステナの討滅が魔王軍にとっても悲願であるのは事実。歩みを共にする相手だからこそ、心だけでなく力量も推し測りたいものだ」

「……そのパターン、なんだか覚えがある」

【……俺もだ。つうか、ユーメイトさんもいつの間にかいなくなってるんだが?】

「大事な配下を巻き込むわけにもいかぬ。此度再び、我も動かせてもらうぞ」


 意志は示した。ただ、それでゼロラージャさんが完全に納得したわけではない。

 むしろ、ここからが本番か。いくらスペリアス様の願いを聞き入れても、魔王と一緒に挑める力が私にあるかは話が別。

 グラスを置いて玉座からゆっくりと立ち上がり、右手には以前と同じ魔王専用の王笏を握るゼロラージャさん。立ち上がった巨体を見れば、やっぱり覇気が尋常じゃない。

 もっとも、これからのことを考えれば覇気がビンビンで当然。人払いがされてることからも予想できる。


 ――タタラエッジの時と同じく、ゼロラージャさんは戦って私達を試す気だ。




「構えよ、スペリアスの子供達。我も今回は全身全霊にて相手しよう。……王笏に宿りしオーブよ! その力を示せ! ルーンスクリプト『ᛏᛖᚾᛋᛖᛁᛗᚨᚱᛁᛃᚢᚢ』――輪廻(まわ)(りゅう)なりし紫!!」

「やっぱり、その流れ――ッ!?」

【い、いや……あれは今までのとは……!?】




 思った通り、ゼロラージャさんはルーンスクリプトの詠唱を始めてくる。ただ、タタラエッジの時とは変化が全然違う。

 今回は王笏を武器に変化させてるんじゃない。紫色のオーラに包まれながら、ゼロラージャさん自身が王笏を取り込んでいく。

 以前と違い、今回は全力で試すつもりってのは理解できる。ただ、力の底がまるで見えてこない。


「古の時代より、人世には『最強の生物』という伝承があった。巨体で空を舞い、生態系の頂点に君臨する者。別の生へと力を繰り越し、さらなる進化を遂げる者」

「あ、ああぁ……!?」

「なれば、魔王とは何か? ただ代替わりする強き王か? ……否。魔王こそ世界において『絶対的最強の力』を示す者なり。代々魔王の力を受け継ぎ、その身に至るまで最強となった存在……! 闇瘴という苦痛の中で、種を存続させるため手にした進化……!」

【そ、そうか……!? これが……魔王の真の姿……!?】

「魔王軍とて、この姿と人の姿を併せ持つのは我とユーメイトのみ。されど、我のものはまさしくその極地ぞ……!」


 部屋ごと揺らしながら、ゼロラージャさんの姿はどんどんと変化していく。広い玉座の間でなければ収まることさえできそうにないほど大きく、見た目だけでも分かる強さを纏って。

 仮面も外れ、巨大な爪に牙に尻尾。空だって飛べるであろう翼。それらを覆うは紫色の鱗。ユーメイトさんのように人の姿から生えたわけでもない。

 この姿には覚えがある。スアリさんが――スペリアス様が私を助けるために乗ってきて、私をここまで導いてくれた存在。


 ――タタラエッジでも見た『最強生物』の姿は、魔王であるゼロラージャさんも持ってた。




「ドララララァァア! さあ、来い! 運命に選ばれし兄妹よ! 我が名はゼロラージャ! 代々の魔王から輪廻を続けて至りし転生魔竜よぉぉおお!!」

再びここに挑戦の時!

転生で進化を遂げたドラゴン! 転生魔竜ゼロラージャ、圧参!

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