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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
最果てに望みし楽園
345/503

その剣士、最後の場所へ導く

剣士スアリ。いまだ謎に包まれた存在が導く最後の道筋。

「別に構わないけど……どうしてスアリさんが?」

「……どうしても、実際に食べさせたい奴がいてな」

「お店で作ったご飯にはかなり劣るけど、スアリさんがそうしたいなら喜んでどうぞ」


 余ったミラリアスペシャルを片付けようとすると、スアリさんから唐突な提案。私的にはイマイチだったのに、スアリさんは気に入ったのかな?

 よく見ると、器に盛りつけた分のミラリアスペシャルもほぼ完食してる。塩辛いコメントはあったけど、調整も入ってほどよくオススメできるぐらいにはなったか。

 どこの誰に食べさせたいのか知らないし、恥ずかしくもある。でも、それがスアリさんの望みなら遠慮はいらない。

 今回のミラリアスペシャルだってスアリさんのために作ったものだし、密閉式のお鍋ごとプレゼントだ。


「私としても、スアリさんにこれまでのお礼ができた。物足りないかもだけど、少しでも喜んでくれたなら嬉しい」

「ああ、俺も喜んでる。……ならば、今度は俺が礼をする番か」

「……スアリさんへのお礼でご飯を作ったのに、またスアリさんにお礼される。不思議で複雑な気分」

「気にするな。俺としても、お前には伝えたい話があったんだ」


 スアリさんも表情には出さないけど、多分満足してくれてるっぽい。しかもそのお礼までしたいとのこと。

 これまでのお礼の意味でしたお礼に対し、さらにお礼で返される現状。ならば、私はまた今度改良したミラリアスペシャルでお礼すればいいのかな?

 お礼にお礼が重なりすぎて、どこからどこまでがお礼なのか分からなくなりそう。


 ――でも、人との繋がりってこういうものなのだろう。誰かが誰かのことを思うから、孤独ではなくなる。


「こっちだ。ついてこい」

【どこかへ案内したいんですか? ……ミラリア、とりあえず言われた通りにするか】

「うん。……でも、後片づけが終わってない。ちょっと待って」


 どこか急ぎ足なスアリさんは、私のことを手招きしながら海岸線の先へ案内してくる。こっちも急いでご飯の後片付けをして、魔剣を携え後ろをトコトコ。

 それにしても、私へのお礼って何をするつもりなんだろ? この先にとびっきり美味しいご飯でもあるのかな?





「……ここだ。今のお前になら、この場所を案内もできる」

「海岸付近の……森?」

【何やら、ここだけ池みたいになってますが?】

「マングローブ林だ。ここの水も海水で、底は海と繋がってる」


 とりあえずついてきた場所だけど、残念ながら美味しそうなものは見当たらない。マングローブという木には実もないし、中央にポツリと池があるだけ。

 近くは海なのに林があるってのも中々不思議で面白い光景。スアリさんが見せたかったのって、この光景のことなのかな?


「ミラリア。お前は旅の中でイルフ人とも出会ったな?」

「ふえ? スアリさんもイルフ人を知ってるの? 確かに出会ったけど……?」

「なら、そこでイルフ人式泳法についても教わったか? 水中で息ができるようになる術だ」

「うん、それも教わった。ツギル兄ちゃんの力を借りればできる」

「……よし。ならば好都合だ。わざわざ俺が教える必要もない」

「……?」


 話を聞いてると、別にこの光景を見せたかったわけではないっぽい。むしろ気になるのは、スアリさんもイルフ人のことを知ってたってこと。

 スーサイドでスペリアス様の話は出てきたけど、そこからイルフ人や三賢者に繋がる話は出てこなかった。多分、情報がバラバラになってて、私はそれらを繋ぎ合わせられたにすぎない。

 まあ、スアリさんも理刀流が使えることといい、多くは語らずともどこかで楽園との繋がりは見え隠れしてる。イルフ人のことも少しは知っててもおかしくないか。


「少し待ってろ。ここから先を案内できる者を呼ぶ」

「案内? どこへ?」

【池に向かって指笛なんか吹いて、誰かここへ来るってことで……?】


 そんな私も疑問も露知らずと、スアリさんはさらに話を進めていく。マングローブの中にある池を見ながら口元に指を当て、ピューっと指笛を鳴らし始める。

 誰かを呼ぼうとしてるってことはその姿からも理解できる。でも、こんなところに誰が来るんだろ?

 周囲を見渡しても人や魔物の気配はないし、何が起こるのかも分かんない。




 ザパァァアアンッ!



「キュッ! キュキュキュ!」

「よし、いい子だ。しっかり来てくれたな」

「ふえっ!? 池の中からお魚さん……なのかな?」




 ただ言われるがまま待ってると、突然池の中から顔を見せる影が一つ。結構大きなお魚さんが鳴きながら現れ、スアリさんにナデナデされてる。

 このお魚さんがスアリさんの呼んだ誰かってことなのかな? にしても、不思議なお魚さん。

 普通のお魚さんと違って鱗がなく、表面はツルツルしてる。立派な背びれもあれば、スアリさんの言葉を理解するぐらいには賢いみたい。

 キューキューと鳴き声もあげてるし、普通のお魚さんでないのは見ただけで分かる。


【えーっと……この魚がスアリさんのお礼ってことですか? ここから先の案内がどうとかってのも?】

「ああ、そうだ。こいつは『イルカ』と言ってな。海において高い知性を持ち、一部では『人魚伝説』とも呼ばれる存在だ」

「イルカ、人魚伝説……。なんだか、イルフ人の精霊伝説に近い」


 名前も伝承も、どこかイルフ人と重なるものがある。もしかして、このイルカさんも楽園やエデン文明に関わる存在なのかな?

 さらにスアリさんが語るのは『ここから先の案内』とのこと。それをこのイルカさんがしてくれるってこと。


 これらの要因から、もしかして案内場所って言うのは――




「ミラリア、ツギル。水中用の魔法をかけて、イルカの背に掴まれ。後はこいつが案内してくれる。……お前達兄妹が目指す楽園へな」

ついに目的の楽園が現実的な範囲へ。

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