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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
母の想いと魔法の都
338/503

その大魔女、楽園の場所を知る

ミラリアの旅のゴール地点へ。

【スペリアス様が楽園の場所を……!? それって本当なんですか!?】

「少なくとも、彼女がそう語ったのは事実じゃ。ただ、儂も本当に海の先に楽園があるかまでは存じ得ぬ。実際にどうやって辿りけるのかも分からぬしな」


 コルタ学長がかつてスペリアス様から聞かされたというのは、なんと楽園がある場所とのこと。ツギル兄ちゃんは声を上げ、私はちょっぴり絶句。

 確かにスペリアス様には楽園へと繋がる要素が多い。だけど、そんな昔から楽園の場所まで知ってるとは思わなかった。

 エスカぺ村にいた時にもそんな話は聞いたことないし、ツギル兄ちゃんも同じく知らない。ただ、ここまで来るとどこか不自然なものを感じてしまう。


「スペリアス様、どうして楽園の場所を知ってるのに教えてくれなかったのかな……? 手紙に場所を示してくれれば、長く旅をする必要もなかったのに……」

「ふむ。そこにもスペリアスの考えがあると儂は見受けるな。彼女は意味もなく過程を増やす人間ではない。哲学的考察のためにあえて道を増やすことはあったが、君達の旅にもそういった意味があると儂は考えておる」

「その話、前にも聞いた。……うん。私もそうだと信じたい」


 でも、その不自然さでどうこう言う気にはなれない。エスカぺ村やスーサイドで知ったスペリアス様の人柄から『意味なく旅をさせて楽園を目指させてる』とは考えにくいって意見には同意。

 最初は私の旅に同伴するつもりだったとも言ってたし、今はエスカぺ村を襲撃されてそうなっただけ。目的地が楽園であることより、旅をすることに意味があるのも同感。


【……ミラリア。お前はこの旅を通して大きく成長した。スペリアス様の狙いまでは俺も断言できないが、少なくともミラリアの成長はスペリアス様にとっても喜ばしいことだ。その姿を見せるためにも、目指す歩みを止めるわけにはいかない……だろ?】

「……うん。ツギル兄ちゃんの言う通り。私もスペリアス様に見てほしい。そして、あの日言えなかった『ごめんなさい』をキチンとする」


 何より、私の心にある明確な気持ちは一つ。スペリアス様に会いたいってことだけ。

 ツギル兄ちゃんも汲み取ってくれる気持ちこそ、私が長旅の果てに楽園を目指す原動力。大切な家族に――お母さんに会わないことには終われない。

 そして、今示されたのはそのための道筋。この旅の終着点が見えようとしている。


「コルタ学長、ありがとう。私達、まずはその海辺へ向かってみる」

「やはり、そう言うと思ったわい。じゃが、その先はどうするつもりじゃ? あの海辺には船どころか人も寄り付かんし、海を渡る術はないぞ?」

「そこは行ってみないと始まらない。これまでの旅だって、辿り着いた先での出会いと発見だった。まずは踏み出すことが肝心」

「本当に芯の強い子じゃ。スペリアスがさぞ大切に育てたことが伺えるわい。……ならば、儂も後はここで応援させてもらうとしよう」

「ありがとう。スペリアス様と再会できたら、またスーサイドにも来る。その時はスペリアス様も一緒。きっと、コルタ学長にも会いたがってる」

「ホホホ。そうじゃといいのう。いつかそんな日が来るのを、儂も楽しみにして待っておるわい」


 まだ到達のための手段は見えない。コルタ学長の示してくれた場所の詳細も分からない。でも、知った以上は動かずにはいられない。

 次なる目的はスーサイド南方の海辺と決まった。その先にずっと目指し続けた楽園がある。





「ミラリア、もう旅発つのか? 少しぐれえゆっくりしてったらどうだ?」

「そうですの。今回の騒動において、ミラリア様はスーサイドの英雄。もっとおもてなしだってしたいですの」

「気持ちだけありがとう。でも、私がスーサイドに立ち寄ったのだって、旅の途中で目的があったから。次の目的が分かった今、ジッとしていられない」


 コルタ学長との話を終えると、学生服からいつもの旅装束へ着替え直して入口の門へ。まだまだ騒動が終わった直後だけど、居ても立っても居られない。

 シード卿やシャニロッテさん達が見送りに来て引き止めるものの、ここで私がやれることはもうない。

 後のことはスーサイドでどうにかなるってコルタ学長も言ってたし、お任せするのが一番。


「あなた達もありがとう。また会える日を楽しみにしてる。アーシさん達が元気になれるようにお願い」

「せっかく憧れのミラリア様とお会いできたのに……」

「でも、旅するミラリア様との別れは必然になります……」

「だからこそ、託された役目を全うするのです!」


 ミラリア教団の面々も最初は押されるばかりだったけど、終わってみれば大切なお友達。こんなにたくさんのお友達ができたのは初めてだし、内心別れるのは名残惜しい。

 でも、そういったことはこれまでだってあった。ポートファイブのランさんにイルフの里のトトネちゃん。みんながみんな、旅の中で出会った大事なお友達。

 そんなお友達に別れを告げながらも、私には成し得たいことがある。目的の楽園がそこまで近づいているからこそ、急ぐ足を止められない。


「みんな、私とツギル兄ちゃんはそろそろ行く。でも、これで完全にお別れじゃない。今度会う時はスペリアス様も一緒で、もっと時間も設けたい」

「ミラリアの母親なら、俺も一度は挨拶してえな。……頑張れよ。ずっと会いたかった母親に会えるんだからよ」

「わたくしも名残惜しくも応援しますの! かの大魔女スペリアス様ともお会いできるその日まで、スーサイドで待ってますの!」


 陽も沈み始めた中、みんなに手を振り振られながら旅立つスーサイド。エステナ教団やロードレオ海賊団まで関わり、実に騒がしい冒険であった。

 フューティ姉ちゃんの件を始め、モヤモヤしたものだって残ってる。でも、今の私にはどうしようもない。


 ――だからこそ、この旅が終わった先のことを少し考えてる。


「ねえねえ、ツギル兄ちゃん。楽園への旅が終わったら、私はフューティ姉ちゃんを救いたい。本当に救えるかは分かんないけど、スペリアス様にもきちんと相談する。その上で一緒に協力してもらいたい」

【ああ、そうだな。きっとスペリアス様だって協力してくれるさ】

「一緒に旅だってしたいし、まだまだやりたいことはたくさんある。そう考えると、楽園への旅も通過点でしかない。……きっと人生も同じこと」


 未熟だけど、朧気ながらに思う。人の願望や経験というのは、清濁入り混じった出来事と感情の先で無限に続いていく。

 その中で変化もあるし、結局のところ人生にゴールなんてものはないのかもしれない。ディストールでチヤホヤされてた時なんて、それこそ自らの意志で成長を止めていたにすぎない。

 だから、私は楽園という『ゴールの先』も見たい。スペリアス様との旅やみんなとの再会も、全部が全部やりたくて大切なこと。

 その中で苦しいことだってあるし、時間も無限ではない。だけども、やれる限りの全力で歩みを進めたい。




 ――私は旅の中でそうして強くなる。これまでも、そしてこれからも。

楽園はゴールであれど、スタート地点でもある。

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