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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
母の想いと魔法の都
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◆疑楽女帝カーダイスⅣ

コルタ学長が考えた、怪物カーダイスへの秘策。

「また同じように向かってくるとは……本当にどこまでも低俗で単細胞な小娘ですわね……!」

「そういった侮辱は素直に受け止める。……でも、全部が同じと思わない方がいい」


 コルタ学長から与えられた作戦もあるから、下手に気持ちを昂らせずに落ち着いて間合いを詰める。

 カーダイスさんも痛みは感じなくても、感情の変化は普通にあるみたい。昂った相手には逆にこっちが落ち着いて対処する方が好都合という面もある。

 これまで以上に髪の毛を学長室内へ広げて襲ってくるけど、一度痛い思いをしたから集中して動きを読める。

 どれだけ数が増えたとしても、動かしてるのはカーダイスさん自身だ。その目線を追えば予測できなくはない。



 ギュルン! ――ヒュン


 ギュルルン! ――シュン



「くぅ!? さっきよりもちょこまかと……!?」

「あまり私を舐めないでほしい。あなたのベースとなったレパス王子にしたって、二度は私に敗北してる。肉体のアドバンテージなんて関係ない」

「こ、小癪な言葉をぉぉお!!」


 まずは縮地による回避優先。カーダイスさんの髪の毛はレオパルさんの腕より数も多くて変幻自在。だからこそ、冷静に局面を見極めることがより重要となる。

 先の先を取るのではなく、狙うは後の先。ここから作戦通りに私が仕掛けるは『当てることを優先』した斬撃。


「刃界理閃・煌!!」



 シュバババァンッ!!



「ッ!? こんな細かい飛ぶ斬撃まで使えますとは……!?」

「だから、さっきとは違うと言ってる。同じと思い込むのは思慮が足らない」

「さ……さっきから小賢しいことばかりぃぃい!!」


 刃界理閃系の細かい斬撃により、髪の毛を斬り裂きながら本体へも攻撃を届かせる。無論、この程度でカーダイスさんが怯みもしないのは予測の範疇。

 こっちの狙いは攪乱(かくらん)にある。挑発と動きにより、カーダイスさんの意識をこっちに向けるのが目的。


 ――そうすれば、次にコルタ学長も動きやすい。



 ビュオォンッ! ――ザシュンッ!



「うぐっ!? 旋風魔法……コルタ学長の仕業でして!?」

「もう儂は君のことを教え子とは思わぬ。スーサイドを蝕む悪鬼の元凶として、この場で終わらせてやろうぞ。……道を外れた君にできるのは、これぐらいしかなかろう」


 タイミングを見計らい、カーダイスさん本体へ襲い掛かるのはコルタ学長の旋風魔法。スーサイドの学長なだけあって、使える魔法も多種多様だ。

 カーダイスさんは一人だけ。一度に二人へ目を向けることはできない。

 もっともその絶対的すぎる防御力があるからこそ、下手に意識を分散させる必要がないとも言える。


 ――それでも、こうして分散させながら攻撃することに意味はある。この流れがコルタ学長の狙いだ。


「肉体が苦痛を感じなくなったからか、随分と意識の向け方が疎かになっておるのう? 儂も授業で教えたはずじゃが?」

「も、もうコルタ学長の戯言も聞き飽きましてよ……! 妾の邪魔をするならば、あなたであっても突き殺して――」

「そんなことは私がさせない。私のことも忘れないでほしい」


 コルタ学長も引き続き旋風魔法による後方支援を続け、私も接近戦によるヒットアンドアウェイでカーダイスさんの意識を乱す。

 攻撃は少しずつ入るけど、やはり大したダメージにはなってない。動きを止めることなく、こちらを何度も髪の毛で突き刺そうとしてくる。


 ただ、その動きは実に単調。怒りによる乱れもあるけど、痛みを無視できる弊害とも言えよう。

 痛くないから『避けようと学習すること』が疎かになる。戦いの中で学ぼうとしないから、単調な動きを続けてしまう。

 こっちは単調に見えて裏のある動きの繰り返し。これがコルタ学長の言ってた『次へ繋ぐ強さ』ということか。朧気でも理解できてきた。


 ――そしてもう一つ、カーダイスさん自身も気付いてない弱点が見え始める。


「ど、どういうことでして……!? さっきから妾の攻撃が届かなくなって……!?」

「あなたの動きが読めてきたのもある。……だけど、それだけじゃないみたい」


 カーダイスさんが操る髪の毛だけど、最初の時より少しずつ動きが鈍ってきてる。

 回避しながら集中して捌き、少しでも斬撃を届かせた影響だろうか? いや、おそらくはこれこそがコルタ学長の作戦か。


「あ、あぐぅ……!? わ、妾の体が……言うことを……!?」


 とうとうカーダイスさんはその場でへたり込み、伸ばした髪の毛も元の長さへと戻っていく。

 なんともあっけない幕切れだ。一度は追い詰められたのに、どうやら疲労でバテたみたい。


「痛みは無視できても、疲れは無視できなかったみたい。あなたは自分自身を理解できてない」

「ば、馬鹿なことを言わないでほしくて! 妾の肉体は体力についても大幅に強化済み! スーサイドで集めた魔力があるから、バテることなどあるはずが――」

「その慢心が君の敗因じゃよ。どうやら、本当に気づいていなかったようじゃな」

「コ、コルタ学長……!? いったい、何を言って……!?」


 カーダイスさんの覇気は見て分かるほど損なわれた。どうにか動こうとしてるけど、とても戦いを続けられそうにない。

 体力についても自信があったみたいだけど、ならどうしてこんなバテ方をしたんだろ? コルタ学長もこれが狙いだったらしいけど、また別の細工をしてたっぽい。


 ――その答え合わせでもするかのように、胸元から瓶を取り出して説明を始める。




「この中身は毒じゃよ。君は『痛みを感じない』そうじゃが、それはすなわち『体の異常を感知できない』ことにも繋がる。……儂が旋風魔法に乗せて植えこんだ毒にさえ、君は気付けなかったということじゃ」

どれだけ強固な肉体と痛みを無視できる要素を兼ね揃えようとも、それだけでは逃避にしかならない。

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