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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
母の想いと魔法の都
333/503

◆疑楽女帝カーダイスⅢ

無数の手とも言えるカーダイスの髪の毛を前に、ミラリアの新技が光る。

 髪の毛で両手を拘束され、首にも巻き付いて息も苦しくなってきた。それでもツギル兄ちゃんへ声をかけ、逆転の一手を思いつく。

 実際にできるか不安だけど、現状で動くのは両足のみ。この手に賭けるしかない。


「あら? 何か企んでらして? 今更どう足掻こうと、ただ醜いだけでしてよ?」

「な、なら……醜くてもいい! 私はここで倒れたくない! 倒れられない! 魔剣の力で……絶対に乗り越える!」

「オホホホ。両手も使えないのに剣を頼るなど、野蛮を通り越してただただ愚かな小娘ですね」


 カーダイスさんも私のやることには気付いてない。ならば、奇襲としても効果がある。

 ツギル兄ちゃんにも詳細を説明できないけど、今は私を信じてもらうしかない。昨日使ったあの能力さえあれば、新技で窮地を脱することもできる。


 使うのは両手じゃない。宙ぶらりんだけど自由なままの右足。

 その右足首に装着されてるのは、シード卿から一番最初にもらったブレスレット。

 今はアンクレットにしてるから、以前にノムーラさんが鎌で使った技と同じことだってできるはず。


「ミラリア流アレンジ理刀流……蹴波理閃(しゅうはりせん)!!」



 キンッ――バシュンッ!!



「ッ!? 剣を……足で!?」

【そ、そうか! これなら俺の魔力でくっついて放てる!】


 これが私の新技。本来の理刀流どころか剣技からもかなり離れるけど、両手が使えない状況で見出した新たな境地だ。

 右足首のアンクレットに意識を込め、魔剣を魔力で抜刀して接着。そのまま右足を振るって放つ斬撃で、拘束してくる髪の毛を切断。

 普段から縮地を使ってるから脚力や身のこなしには自信がある。全身をグルリと一回転させて拘束から逃れつつ、無事に床へと着地できた。


 ――まさか、ツギル兄ちゃんのイヤイヤがまさかこんなところで役立つとは。世の中、どんな経験が活きるか分からないものだ。


「ま、またしても妾の高貴な髪を……よもや下劣に足で斬り裂くなどと……!? お……おのれぇぇええ!!」

「ハァ、ハァ……! そうやって怒るぐらいなら、相手の力量をもっと推し測るべき……!」

「お、驚いたものじゃ……! 足で剣技を扱うなど、スペリアスでさえ使っていたところを見たことはないぞ……!」


 この動きは周囲も完全に予想外だったらしく、カーダイスさんは癇癪を起こして動きを止める。

 コルタ学長は感嘆の声を上げて近寄り、再度回復魔法で応急手当。危険な戦局も再度ふりだしへと戻せた。

 とはいえ、こっちが有利になったわけでもない。蹴波理閃についても、緊急脱出技でしかない。


「ここからどうすればいいのか……? まともにダメージも通らないし、何が有効打になるのか……?」

「……ミラリア君。儂に一つ考えがある。少し耳を貸してはくれんかのう?」

「ふえ? う、うん」


 カーダイスさんが癇癪で止まってる間に作戦を練り直すも、私ではいい考えが出て来そうにない。そんなところで助言してくれるのはコルタ学長。

 アホ毛で向こうの髪の毛を警戒しつつ、お耳を寄せて話をコソコソ。カーダイスさんに聞こえないように作戦を教えてもらう。


「む……むう……? 話は理解した。でも、本当に上手くいくの?」

【俺も聞かせてもらいましたが、イマイチ意図が見えてこないというか……?】

「ああ、大丈夫じゃ。儂も戦う姿を見させてもらって思ったが、ミラリア君にはカーダイス君にはない強さがある。儂はそれを信じたい」

「私の……強さ? それって何? 理刀流のこと?」


 あまり時間もかけられないから、教えてもらった作戦は端的なもの。簡単にしか聞かされてないから、本当に大丈夫か私もツギル兄ちゃんもちょっと不安。

 それでも、コルタ学長はどこか私に期待してくれる。

 カーダイスさんになくて私にある強さって何だろう? 魔法では劣ってるし、髪の毛もあそこまで器用に動かせないけど?




「君には『痛みも乗り越えて次へ繋ぐ強さ』がある。……スペリアスの娘として、自信を持って挑むがよいぞ」

「乗り越える……強さ。分かった。私もコルタ学長の作戦を信じる」




 そこについても端的にしか語ってもらえなかったけど、どことなく意味は理解できた。

 今のカーダイスさんは『痛みを感じること』がなくなった。だけど『痛みを乗り越えること』は成長の一つ。そのことはこれまでの旅で嫌というほど経験してきた。

 それこそが私とカーダイスさんの間にある差。そこを突くことがコルタ学長の作戦の一部と見た。


「さっきからコソコソと何か企んでるようですね……! ですが、それも無意味です! 妾も加減など止めて、全力で叩き潰して差し上げましょう!」


 髪を斬られた屈辱で悶えてたカーダイスさんも戦線へ復帰してきたし、おしゃべりもここまで。ここからは託された作戦を信じて動けばいい。

 迷いも恐れも今するべきことではない。カーダイスさんを倒した先にあるゾンビ騒動の収束こそが今目指すべき到達点。


 ――コルタ学長だって味方してくれるんだ。信じる強さだってある。


「さあ、行くぞ! 儂も援護するから、カーダイス君の気を惹きつけてくれ!」

「分かった! もうさっきみたいに捕まらない!」

【気持ちで押し負けるな! お前には頼れる味方がついてるんだからな!】


 私を魔剣を構え、コルタ学長も懐に手を入れて何かしらの準備を始める。

 ある意味、ここからが本当の本番。反撃の狼煙を上げる時。


 ――カーダイスさんの凶器と化した髪の毛を相手に、再び挑みかかる。

ミラリアの強さの根底。それは「乗り越える」ということ。

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