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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
母の想いと魔法の都
332/503

◆疑楽女帝カーダイスⅡ

最早その身の深部は異形にて。

「妾の美しさの象徴たるこの黒髪を燃やすなど……おのれぇぇええ!!」

「そ、そんなに髪の毛が大事なの!? 斬られた傷じゃなく――あぐぅ!?」


 魔剣による居合は確かにカーダイスさんの体へ横一線に食い込んだ。完全に切断までは行ってないけど、普通の人なら悶え苦しむほどの一閃だ。

 なのに、カーダイスさんが気にしてるのは『髪の毛を燃やされた』こと。学生服の上から刻まれた傷など意に介していない。

 おまけに怒りに身を任せ、私の体を髪の毛で縛り付けてくる。燃やされた部分も再生してるし、少なくとも体の傷より怒る要因とは思えない。


「あ……ぐぅ……!? か、髪の毛だって元に戻るのに……どうしてここまで……!?」

「妾は何よりも美を重んじる! 『妾の髪を燃やした』という事象そのものが許せません! あなたのように野性的で下賤な小娘ごときには理解できないでしょう!」

「か、体に傷を刻まれても……!?」

「……ああ、この傷ですか? 確かにこれもうっとうしいですが、妾の美貌は顔を含めた容姿があってこそです。髪ほどではありません」


 キリキリとカーダイスさんの髪の毛が両手に食い込む中、宙吊りのままでどうしても気になることを語りかけてしまう。

 人によって差はあるだろうけど、お腹の切傷さえも気にならないほど髪の毛が大事ってこと? だとしても、痛みを超えて表情にまで怒りがにじみ出るほどじゃない。


「もっとも、この程度の傷はダメージの内にも入りませんでしてよ。ゲンソウの力で生まれ変わった妾の肉体は、髪を自在に変異させるだけに留まりません。『不老不死の肉体』という願いは、すでに妾の血肉となっておりますゆえ」



 スゥゥウウ



「う、嘘……? 傷があっという間に再生して……?」

【か、回復魔法とかじゃないぞ……? 魔法陣も何も現れなかったが……?】


 さらに驚くべきはその体質。落ち着きを取り戻しながら語り続けるカーダイスさんが傷口を軽く撫でると、まさしく再生という形で元通り。

 女神エステナみたいに回復魔法で瞬時に治したのとも違う。魔法など使わず、本当に自身の体質だけで回復してしまったのが私にも分かる。

 このバケモノ染みた回復能力はレパス王子に近い。あの人だって、細切れにされながら今も普通に生きながらえている。


 ――いや、もっと注視すべきはカーダイスさん自身の態度か。


「あ、あんなに深い傷だったのに、痛くもないの……? さっきから見てると、痛がる素振りすら見えない……?」

「ええ、痛くはありませんことよ。この肉体は『細胞の細部に至る操作』と『不老不死の実現』を成し得ました。……そして、その過程において手にした能力がもう一つ。妾は『あらゆる苦痛の無効化』ことができますのよ」

「苦痛を……無効化……!?」


 縛り付けられながらも尋ねてみれば、思わず寒気のする言葉が飛んでくる。

 確かに私だって痛いのは嫌。傷を負うのだってできることなら避けたい。動きに支障だって出る。

 だけど、カーダイスさんにそういった不安要素はない。痛みなんて感じないから、無視して動くこともできる。


 ――その事実が私には何より恐ろしい。


 レオパルさんやトラキロさんといったサイボーグにしても、アテハルコンボディーの上から斬られれば痛みに怯みはしてた。

 私だって旅の中で多くの痛みを経験した。殴られた痛みだけでなく、後悔や挫折といった精神的なものも含めてだ。そういった経験が私を成長させてくれた。


 ――だけど、カーダイスさんにそういった要素はない。存在そのものが『生命の(ことわり)』から外れたようにも見えてしまう。


「……やはり、妾としては体の傷より髪を斬られたことが憎いですね。妾の美を象徴する重要なパーツを傷つけるなど、よくも……よくもぉぉおお!!」

「カッ……ハァ……!? や、やめ……て……!?」

【ミ、ミラリア!? コ、コルタ学長! なんとかしてください!】

「分かっておる! じゃが……儂の魔法がまるで通らないじゃと……!?」


 いずれにせよ、苦痛という概念を排除できるならば、カーダイスさんの怒りの矛先は『自らの容姿に傷をつけた』ことへ集中してくる。

 髪を斬られた怒りをぶり返し、伸ばした髪の毛で今度は私の首を締めあげてくる。両手も塞がれてるから、魔剣を扱って反撃もできない。

 ならばとコルタ学長にツギル兄ちゃんも助けを求めるものの、こっちもこっちで劣勢だ。さっきから密かに火炎魔法で髪の毛を焼き払おうとしてくれるけど、カーダイスさん本体が射線上で盾となってこっちまで届かない。


 肉を切らせて骨を断つならぬ、肉を焼かせて髪で縛るとでも言うべきか。ダメージを無視できると言ってもいい状況で、普通の人ならありえない戦術まで使える始末。

 息も苦しくなってきたし、このままでは意識が落ちるのも時間の問題。両手も首も拘束された状況で、自由に動かせるのなんて足ぐらいしかないけど――




「そ、そうだ……! 足はまだ動かせる……! ならば……ツギル兄ちゃん! そのまま力を抜いてて!」

【ミラリア!? 今度は何をする気だ!?】




 ――だからこそ使える手段が一つだけあることを、今この窮地で思いついた。

こっそり装備場所を変更していたアレが活きる時!

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