◇スーサイド闇鬼末行Ⅳ
欲にまみれた女学生が目指す野望の果て。
「不老不死……!? 確かにレパス王子はどれだけ斬っても死なないけど、不老まで叶えてたなんて……!?」
「妾としては『不老』が何よりも重要なのです。大魔女スペリアスと学友であったコルタ学長とて、老いには敵わなかったでしょう? 妾はあのお方と同じく老いることなく、今の美貌を維持したいのです」
カーダイスさんが語る夢はアーシさんから聞かされた通りだ。若々しい見た目を保ってたスペリアス様に憧れ、同じようになるのが願いらしい。
それどころか、レパス王子のように細切れに斬られても死なない体まで望んでる。それこそまるで『今という時間のまま肉体を維持する』といったところか。
気持ち自体は分からなくもない。カーダイスさんもかなりの美人だし、綺麗なままでいたいと望むのも人間の性か。
――だけど、そのための手段を間違えてる。
「そんなことのために、スーサイドのみんなをゾンビに変えて苦しめたの? 自分が不老不死になりたいからって、他の人を犠牲にしていい理由になるの?」
「大願を成し得るためには、犠牲が必要ということですよ。スーサイドで集めた魔力をエステナ教団に献上しなければ、妾の夢も叶いませんでした。かつての大魔女スペリアスとて、同じような犠牲を払ったのではないでしょうか?」
「あなたとスペリアス様を一緒にしないで……! スペリアス様はあなたみたいに非道な人間じゃない! 知った風に語らないで!」
カーダイスさんのやってることは結局のところ、自分の欲望のためにスーサイドのみんなを犠牲にしてるだけ。エデン文明を独り占めしたいレパス王子と同じ。
エスカぺ村やフューティ姉ちゃんのような犠牲もいとわず、大願などと聞こえのいい言葉で飾ってるだけ。そんなこと、私はどうしても許せない。
スペリアス様にそう教えられたってのもある。でも、同時に私がこれまでの経験で得た教訓でもある。
私もかつてはディストールで勇者と崇められ、調子に乗って本当に大事なものを見失った。
聖女だったフューティ姉ちゃんを始め、これまで出会った『立派な人達』はみんな周囲のことを考えて先を見据えていた。
なのに、カーダイスさんにそんなものはない。人間としての欲を持つのは仕方なくても、そのために周囲へ危害を振りまくのは悪意しか感じない。
――もう、御託を聞くのも嫌になってきた。
「……コルタ学長。カーダイスさんを倒せば、スーサイドも元に戻るって認識で大丈夫?」
「……ああ、大丈夫じゃ。カーダイス君の身には確かにゾンビの原種となる魔力が宿っておる。じゃが……できるのか? エステナ教団に与することで膨大な魔力を手にした彼女を相手に……?」
【安心してください。今のミラリアは覚悟が決まってます。覚悟が決まった俺の妹は、魔王にだって屈しない自慢の妹です】
これ以上の問答はいらない。目指すべき目標だけ明白ならばそれでいい。
ここでカーダイスさんを倒せばゾンビとなったみんなも元に戻る。逆に倒せなければ、カーダイスさん一人の欲望でみんなが犠牲のまま。
スーサイドにはシャニロッテさんを始めとしたミラリア教団という友達もいるし、スペリアス様がエスカぺ村より以前に過ごした思い出の地。そんな場所をたった一人の強欲のために好きにさせたくない。
エステナ教団の庇護を受けていようが関係ない。私の覚悟はもう完全に決まった。
――この場で全てを終わらせ、必ずスーサイドを救い出してみせる。
「……あくまで妾に楯突くということですね。良いでしょう。妾としても、手にしたこの力を振るってみたかったところです。まずはあなた方を実験台とさせていただきますか」
カーダイスさんの方も腰かけてた机から立ち上がり、凛とこちらへ構えてくる。不老不死の力がどれほどのものか知らないけど、決して完全ではないはずだ。
レパス王子にしたって、斬り刻まれれば戦闘不能にはなった。ゾンビを操る魔力の維持さえできなくなるほど弱らせればいい。
――それさえ分かれば後は関係ない。スペリアス様から教わった理刀流も使い、この不条理を終わらせてみせる。
「さあ、どこからでもどうぞ。エステナ教団とエデン文明により生まれ変わった妾の力、存分にご堪能くださいませ」
スーサイド編本当の大ボス、カーダイス戦へ。




