◇スーサイド闇鬼末行Ⅱ
全ては大魔女の子供達に託される。
「で、でも、シード卿。ここで私まで抜けたらみんながゾンビに……!?」
「それぐらいなら、わたくし達だけで持ちこたえますの!」
「何より、元凶を倒さないことには騒動も収まりません!」
「ミラリア様はコルタ学長と共に先をお願いします!」
「私も賛成です!」
私とコルタ学長だけで先を目指すというシード卿の提案を聞かされるも、不安は払拭できない。
ここで戦力を分散させれば、残ったみんなが押し負けてしまう恐れがある。
「いや、ミラリアちゃんとコルタ学長だけ行くのはええ考えちゃうか? ウチらも今ばっかりは加勢したるし、なんや親玉を倒さんとアカンのやろ?」
「レオパル船長はコルタ学長と一緒が嫌なだけなんじゃァ……? まァ、こっちとしても面倒は終わらせてェし、先のことはそっちに任せらァ」
「安心しろ。俺も一緒に戦って分かったが、スーサイドのお嬢ちゃん達だってかなりの戦力だ。足止めぐらいなら問題ねえ。だから……頼む! 先を優先して、元凶をとっちめてくれ!」
だけど、みんながゾンビの相手をしながら向けるのは期待の声と眼差し。確かにロードレオの二人が加勢してくれたことも考えれば、ここで足止めできなくもない。
不安は残るけど、誰かが先へ進まないと終わらないのも事実。だったら、私だって信じさせてもらう。
「コルタ学長! 案内をお願い!」
「ああ、分かった! 奥のエレベーターに乗り込むんじゃ!」
【みんな、少しの間耐えててくれ! 必ず終わらせてくる!】
道案内としてコルタ学長の存在は不可欠。先のことを考えれば、スーサイドに詳しい人と一緒の方が確実。
ゾンビの相手をみんなに任せ、こっちはすぐさまコルタ学長の手を取る。私にできることは一秒でも早く決着をつけることだ。
「このエレベーターならば、学長室前まで直通じゃ」
【なら、後は到着するまで待機ですか。みんなが戦っている中ですが、ここで気を引き締めておきましょう】
結界の都合で転移魔法も使えない以上、コルタ学長の道案内に従うしかない。ゾンビの相手については、残ってくれたみんなのことを信用する。
みんなが私を信頼してくれたのだから、託された役目を何よりも優先すればいい。この先へ進むことに迷ってなどいられない。
「このエレベーターの中はひとまず安全じゃ。とはいえ、最上階に到着したらそこは再び死地じゃ。君の怪我も癒しておかんとのう」
「回復魔法……助かる。女神エステナとの――フューティ姉ちゃんとのダメージは結構響いてる。……今度こそ元凶倒すためにも、今は気持ちを切り替えて準備する。それが大事」
「……あれほどの戦いの後じゃというのに、実に芯の強い子じゃ。血は繋がらずとも、君にはかつてのスペリアスの面影を感じずにはいられぬのう」
最上階を目指すエレベーターの中で、コルタ学長から回復魔法で治療も受けさせてもらえた。さっきの戦いのダメージも癒えてきたし、心持ちも新たに挑み直せる。
そんな中でコルタ学長が口にするのは、スペリアス様に関する話。そういえばこの人、若い頃は一緒にいたんだっけ。
「スペリアスも今の君と同じく、その魔剣と同じような剣を扱う武芸を得意としておったわい。しかも二刀流でのう」
「スペリアス様が魔法だけでなく、剣技も得意としてたことは知ってる。私の剣技も――理刀流もスペリアス様から教わったもの」
「理刀流……理を冠する剣技……か。もしかすると、君が今このタイミングでスーサイドへやって来たのも、スペリアスの導きなのかのう」
「スペリアス様の?」
エレベーターが到着するまではまだ時間もある。後衛に回ってくれたみんなは心配だけど、今ここで無理に心配するだけでは意味もない。
私としても、コルタ学長にはスペリアス様のことでずっとお話したかった。少しの時間だけど、その言葉は耳にしておきたい。
「スペリアスは『大魔女』と称されるだけに非ず。哲学者としても優秀であったことは少し語ったが、それ以上の何かを秘めておった。……それこそ、儂には『世界の探究者』とも見えるほどにのう」
「世界の探究者……やっぱり、スペリアス様のやることは次元が違う」
「じゃが、その片鱗は君達兄妹にあるのではないかと儂は考えておる」
【俺とミラリアの存在が……スペリアス様の行いに関係して……?】
そうして語られる中で気になるのは、コルタ学長と私やツギル兄ちゃんに見えているものの違い。親子としてではなく、かつての友達として見えていた何かがあるっぽい。
最初に私達の素性を知った時には狼狽えてたのに、今はかなり落ち着いてる。心臓の持病の気配もない。
むしろ、私達にこそ語りたい何かがあるように感じる。凄く知りたい気持ちはある。
「……コルタ学長。その話は全部終わってから聞かせてほしい。今はまだやるべきことがある」
「……ホホホ。向けるべき目線を見誤らぬのも、またスペリアスを彷彿とさせるわい。ならば、期待させてもらおう。エステナ教団の動きに対し、スペリアスの子である君達がスーサイドへ訪れた意味……儂もその運命を信じさせてもらう」
【エレベーターもそろそろ到着するみたいですね。……気を引き締めるぞ、ミラリア】
だけど、今すぐに聞くべき話ではない。再び戦う時はそこまで近づいてる。
ツギル兄ちゃんの声で気持ちも引き締め、アホ毛の先まで気合ビンビン。顔をパンパンして切り替えもできた。
この先に待つのが誰かは知らない。でも、やるべきことは変わらない。
スペリアス様がかつて過ごしたスーサイドを滅茶苦茶にして、フューティ姉ちゃんをいいように利用するエステナ教団に与する者。そんな人を野放しにはできない。
――今考えるべきは、その人を倒すことだけでいい。
迷い、葛藤に巻き込まれながらも、辿り着くべき場所は見失わない。




