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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
母の想いと魔法の都
327/503

◇スーサイド闇鬼末行

スーサイド闇鬼末行あんきまっこう


本当の親玉はまだ別にいる。

「う、嘘!? どうして!? エステナ教団もフューティ姉ちゃんもいなくなったのに!?」

【むしろ、さっきより荒くなってないか!? おとなしくするどころか、完全に暴走してるだろ!?】


 残念な結果は残りつつも、スーサイドとしては落ち着くと思われたその矢先のこと。焦る声の方角へ目を向ければ、これまで動きを止めてたゾンビの軍団が再びみんなを襲っている。

 コルタ学長やミラリア教団も魔法で応戦してるけど、これまで以上に劣勢と感じる。それほどまでにゾンビの勢いは凄まじく、少しでも接近を許せば噛まれてしまいそうなほどだ。


「コルタ学長!? これはどういうことですか!? 女神エステナがいなくなったのなら、連中も元に戻るはずじゃ……!?」

「おそらくじゃが、ゾンビの核となる魔力は別の人間が持っておるのじゃろう! じゃから、指揮系統である女神エステナがいなくなっただけでは意味がない! むしろ暴走したままじゃ!」

「と、ということは、その人を倒さないことにはまだこのままってことですの!? も、もう勘弁してほしいですの!?」


 私やシード卿も加勢するものの、気持ちも含めて限界が近い。さっきの戦いも終わって解決と思ってただけに、絶望感も大きい。

 どこかに女神エステナとは別の元凶がいて、その人を倒さないことには騒動が収まらないことは理解した。ただ、それがどこにいる誰なのかさえ理解できない。

 混乱覚めぬ間に押し寄せる危機。まだ疲れは残ってるし、状況的にはさっきよりも厳しい。



 ドッゴォォオオンッ!!



「ふえっ!? ま、また何が!?」

【広場の下から出てきたのか!? まさか、さらにゾンビが!?】


 だというのに、事態はもっと混迷を極めていく。

 突如足元から衝撃と共に何かが飛び出す砂煙。状況からして、暴走したゾンビとしか考えられない。

 まだ元凶の場所さえ把握してないのに、これ以上のピンチは――




「あー、もう! 嫌や! ウチ、海賊辞める! 普通の女の子に戻ったるわぁぁあ!!」

「テメェで始めたロードレオ海賊団だろがァ! 途中で投げ出すんじゃねェよォ! 第一、海賊辞めたところでテメェが『普通の女の子』になれるかよォ! この変態女船長がよォォオ!!」




 ――勘弁願ってたんだけど、どうにも思った状況と違うみたい。

 砂煙を巻き上げながら地面を突き破って姿を見せたのは、レオパルさんにトラキロさんのロードレオコンビ。そういえば、道中で囮になってもらってたんだった。忘れてた。

 もっとも、二人のやってることは取っ組み合いの喧嘩。今もまだ続いてるらしく、その衝撃波は周囲まで巻き込んでくる。


「ゲ、ゲガァァア!?」

「グゴォオオ!?」

「こ、これは……!? 諸君、頭を下げるのじゃ! 巻き添えを食らうぞい!」

「わ、分かりました! コルタ学長!」

「なんという衝撃波……!?」

「体が吹き飛びそうです!」


 周囲のゾンビを巻き込んでるのまで同じ。こっちもコルタ学長の声を聞き、屈んで巻き添えを回避する他ない。

 おかげで助かりはしたけど、ゾンビ達はまたしても喧嘩の余波の巻き添えに。どうにも、知性がなくなってるから反応が遅れたみたい。


 ――で、結果として一応の危機は脱することができた。なんだかんだで役に立つサイボーグである。


「ん? なんや? いつの間にか中層広場に出てもうたんか?」

「そうみたいでさァ。さっきのヤベェ連中も新たに増えてますなァ」

「二人とも! 力を貸して! ゾンビ達を止めてほしい! お願い!」

「おっ、ミラリアちゃんも一緒やないかい。つうか、めっちゃヤバそうやな。ウチらに頭下げなアカンほどか?」

「態度による度合の変化は理解してるんですなァ……」


 唐突とはいえ、このチャンスを逃すわけにはいかない。沈んだ気持ちも切り替え、ロードレオの二人へアホ毛も含めて頭を下げる。

 この状況において敵も味方もない。人数は多いほどいい。レオパルさんとトラキロさんが協力してくれれば、戦力としては申し分ない。


「レオパル君! 君達は迫るゾンビの相手をしてくれ!」

「ハァ!? ウチは道を教えたらお役御免やなかったんかいな!?」

「君達とて、この状況でとやかく言ってる場合でもないことは分かるじゃろう! それとも、まだ秘密を暴露されたいのか!?」

「ウゲェ!? ウ、ウチの秘密をネタに揺さぶりおってからに……!?」

「そうは言っても、言われたことは事実でさァ。オレらも加勢しねェとマズいのは目に見えてまさァ」

「わ、分かっとるわ! こないなったら、流石のウチかて真面目にやるわ! ほれ、トラキロ! 御一行さんのお相手すんでぇえ!」


 コルタ学長の脅しも効いたし、流石に二人も喧嘩を止めてゾンビの相手へ加勢してくれる。

 目からのオメメガビームという技も含め、二人の実力は相変わらず。敵として恐ろしかった分、味方としては頼もしい。

 これで少しは余裕もできる。後は元凶がどこにいるのかさえ分かればいい。


「……よし! 儂の魔法で新たな気配を探知できたぞ! どうやらスーサイドの頂上――儂の部屋でもある学長室に誰かいるようじゃ!」

「その人が女神エステナに代わる元凶ってこと!?」

「そう見て間違いないじゃろう! 魔力からも想定できる!」


 そこについても、余裕のできたコルタ学長が素早く魔法で探ってくれた。ここからまだ上を目指せばいいらしく、コルタ学長なら正確な場所も問題はない。

 誰かはまだ分からないけど、エステナ教団と絡んでることは事実。すなわち敵だ。

 その人を倒して、今度こそこのゾンビ騒動を治めてみせる。


「で、ですが、この大量のゾンビに追われながらは無理がありますの!」

「加勢が増えても、迎撃が精一杯です!」

「学長室を目指すのは厳しいと思います!」

「前に進めないです!」


 ただ、後方から迫るゾンビの勢いはロードレオコンビが加勢しても止めるのが精一杯。隙をついて先へ進むには無理がある。

 コルタ学長が目を向ける方角には別のエレベーターがあり、そこを目指せば学長室を目指せることは分かる。ただそこまで距離があり、このままでは辿り着く前にゾンビに包囲されてしまう。

 私も斬撃を飛ばして対処するけど、これもいつまでもつかどうか――




「チィ……仕方ねえ! ミラリアに魔剣の兄貴! それとコルタ学長! あんた達だけで先へ進んでくれ!」

「シ、シード卿!?」

殿は仲間に任せるしかない。

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