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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
母の想いと魔法の都
319/503

その少女達、元凶へと迫る

・あらすじ

ロードレオは犠牲となったのだ。

「……結果として、上手くやり過ごせましたの。ただ、あれでよかったですの?」

「世の中は綺麗ごとばかりじゃない。ロードレオの二人は問題ない。……むしろ、ゾンビとなったみんなが大丈夫か心配するしかない」

「わたくしも納得できますの。ともあれ、中層広場はこの上ですの。今は先のことを考えますの」


 レオパルさんとトラキロさんを囮に使い、その後は問題なく教えられたルートを進行。ゾンビを引き寄せてくれたから、襲われることなく水道の突き当りまでやって来れた。

 シャニロッテさん達もちょっといぶかしみつつ、この判断には納得を示してくれる。説明が面倒だし、雰囲気で読み取ってくれるしかない。


 ――人間って不思議。空気を読むってこういうことなのか。文字も言葉もないのに理解してもらえる。


「ロードレオのアホコンビの話はここまでだ。……ここから先は死地になるぞ」

「儂の探知魔法でも間違いないのう。広場から感じるのは、女神エステナと……一人じゃな。攻めるなら今この時じゃ」

【俺とミラリアが先導します。皆さんは後方で守りの意識を……!】


 思わずアホ毛ピコピコと思考が逸れたけど、油断できる場合でもない。むしろ、ここからが本番か。

 水道を上へと上がり、スペリアス様の銅像が保管された倉庫まではやって来れた。ここから先のため、少しお祈りしてから目線を扉へ向ける。

 シード卿もコルタ学長も準備万端。外へ出れば、エステナ教団の領域と考えた方がいい。

 ミラリア教団のみんなはこの状況で動揺も大きいから、後ろの方でまずは待ってもらう。最初は私とツギル兄ちゃんが突入し、どうなってるかを確認する手筈だ。


「……ツギル兄ちゃん、準備はいい?」

【ああ、大丈夫だ。……ゆっくり行け】


 扉の向こうに誰かいるみたいだけど、物音は聞こえてこない。まずは慎重に様子を伺うのが一番。

 腰に携えた魔剣を左手で握り、いつでも抜刀は可能。ツギル兄ちゃんとも言葉を交え、いよいよ扉を開く。




「……カムアーチでの目撃情報は聞いてたが、まさかスーサイドにまで来ていたとはね。僕としては、憎たらしくも嬉しく思うよ……ミラリア」

「ッ……!? レパス王子……!?」




 その先でまず目が合ったのは、広場の中央に立った男の人。可能性としては十分ありえたけど、まさかこんな堂々と姿を見せるとは予想外だ。

 ディストール王国王子――レパス王子。私にとって、この人ほど忌まわしい人はいない。

 一度は甘言に惑わされた己の未熟さも、エスカぺ村やフューティ姉ちゃんを奪った悔しさも、その顔を見ればフツフツと湧き上がってくる。

 私の顔を見ても、まるで『待ってました』と言わんばかりの態度も合わさり、余計にこれまでの苦悩が脳内へ押し寄せてくる。


 ――これまで以上に感情の起伏がないその態度は、まさに『無情』という言葉を体現してると言ってもいい。


「君のことだって、そう易々と見逃してはおけなかった。こうして巡り合わさったのも、神が与えてくれた機会なんだろうね」

「…………」

「……その神様ってのは、さっきから隣で黙ってる女神エステナのこと? そんな嘘っぽい神様が与えてくれたもの、私は認めたくない」


 そして広場にいるのはもう一人。長い緑髪と額から生えた二本の触角に仮面をつけた女性――女神エステナ。

 ただ、ここに至るまでの騒動や考察を交えれば、この人が『本物の女神エステナ』とは到底思えない。


「このゾンビ騒動にしたって、あなた達エステナ教団の仕業じゃないの? おおよその見当はついてる。……第一、ゾンビになった被害者が『スーサイドの人ばっかり』ってのもおかしい。エステナ教団はどうして無事なの?」

「ほう? ディストールにいた頃は馬鹿で無知な小娘だったのに、随分と知恵がついたようだね。まあ、それでも大したことはないか。今回の騒動にしたって、バレたところでどうということはない。目撃者を全員始末すればいいだけの話さ」

「……その言葉は私の問いかけを認めると解釈する。そこにいる女神エステナにしたって、依り代でも何でもない偽物じゃないの? その人が魔力でゾンビを生み出したんじゃないの?」

「ハハハ。本当に馬鹿なりに考えられるようになったものだ。そこについても君の想像通りだよ。よく当てられたと拍手でも送ろうかい?」


 淡々と語るレパス王子だけど、その内容はあまりにおぞましい。最後に会った時より人ならざる不気味さが増した気分だ。刃を交えなくてもヒシヒシと伝わってくる。

 エスターシャでも体を細切れにされながら生きていた異形。今回は中身についての恐ろしさが際立つ。


 ――この人の顔を見れば、スーサイドのみんななんてどうでもいいと考えてるのが透けて見える。


「スーサイドの人間は魔力が潤沢だ。女神エステナを動かすためには膨大な量の魔力が必要となる。だから怪我した学生を癒す時、ゾンビへ変異する魔力を同時に注ぎ込んで円滑に供給できるようにしたのさ。別の魔力によって本来の魔力が押し出され、エステナ教団の手中へと収まる……実に効果的な構造だろ?」

「何をそんな愉快そうに語れるの? 自分達が何をしてるか理解してないの? ……その女神エステナにしたって、結局は偽物。神様がゾンビを作って人々を苦しめるなんて――命を冒涜するなんて間違ってる」

「彼女が偽物でも何でも、僕にとっては構わない。この手で夢を実現するための力なら、伴う犠牲も些細なものさ」

「……あなたほど胸糞の悪くなる人間もいない。思考が人間じゃない」


 さらに話を進めてみても、奥底に眠るのはどす黒い真意だけ。エスターシャで会った時よりも嫌悪感が増してくる。

 レパス王子の語る夢にしたって、結局はこれまでと同じなのだろう。自分が世界の頂点に立つため、楽園の力もエステナ教団も――果ては女神エステナも利用したいだけ。

 それらもスーサイドも、全部が全部黒く染まった野望への礎に過ぎない。そんな横暴は許さない。許せるわけない。


「もう御託は聞き飽きた。私はここでその女神エステナを斬る。その人がいなくなれば、ゾンビとなったみんなも戻せるんでしょ?」

「……フン。相変わらず恐れは知らないようだ。ならばやってみるかい? もっとも、彼女の力はすでに君の身へ突き刺さろうとしてるがね」

「それってどういう意味――」

【ッ!? ミ、ミラリア!? 後ろだ!】


 女神エステナが何者であろうと関係ない。そう決意を込めて腰を落として構えるけど、ツギル兄ちゃんは焦ったように声をかけてくる。

 どうにも、背後で何か起こってるらしいけど――




「グギャァァア……!」

「アガァァア……!」

「ッ!? ゾ、ゾンビがここまで!?」

【は、挟み撃ちってことか!?】

元凶との対面。ただし、罠はまだ張り巡らされている。

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