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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
母の想いと魔法の都
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◇スーサイド闇鬼凶行Ⅴ

「藁にも縋る」とはこのことか。

「ハァ? ウチに水道内を案内せえやと? そらまた、なんでそないに面倒なことを……」

「いやァ、レオパル船長ォ。これこそ願ってもないチャンスでさァ。ここでおとなしく従えば、下手に苦労せず逃げ出せまさァ」

「しばらく儂の言う通りに動いてくれれば、後で逃がすことも約束してやろう。悪くない話じゃろう?」


 コルタ学長の狙いはレオパルさんを使って水道内を案内させるというもの。その見返りとして、牢屋から逃す提案まで持ち出してる。

 確かにレオパルさんはこの広い水道を全部把握してるっぽい。ここから狙ってお風呂に辿り着けるぐらいだし、道案内としては頼もしい。


 ――でも、引き換えで自由にして大丈夫なのかな? トラキロさんはまだしも、レオパルさんは危険すぎる。


「ねえねえ、コルタ学長。本当に大丈夫なの? レオパルさんもトラキロさんもかなり強い。……何より、レオパルさんの変態性が野に放たれるのはリスクが大きすぎる」

「そこは儂も危惧しておる。じゃが、この二人もいずれは勝手に逃げ出しておったじゃろう。内心、儂もどこか適当なタイミングで見逃そうとは思っておった。いい機会じゃろう」

「あっ、そこまで理解してたんだ」

「ホホホ。レオパル君の気質については、儂がこの中の誰よりも詳しい。安心しなさい。ここにいる君達へ危害は加えぬよう、しっかり見張っておくからのう」


 ただ、これらの心配もコルタ学長は計算の範疇。勝手に逃げ出されるぐらいなら、ここで利用して条件付きで逃がすというのは実に合理的だ。

 犬さんみたいにコルタ学長という首輪を繋げるとも考えられる。何より、この状況で道案内ができる人間は非常に大きい。


「お? よう見たら、ミラリアちゃんに風呂で見たカワイ子ちゃん達も揃っとるやないかい。これはウチもはかどるし、まずはニャンニャンと――」

「んなこと、俺だって許さねえからな。そんなこと言うなら、この話はなしにするぞ?」

「んげっ!? シード卿までおるんかいな……!? わ、分かったわ……。残念やが、背に腹は代えられへん。ここはおとなしく従ったる」

「本当にこの人はァ……。おとなしくすることぐらい覚えてくだせェ……」


 ちょっと心配は残るけど、こっちには私やシード卿だっている。余計な手出しはさせない。

 というわけで、一応の交渉は成立。コルタ学長も鍵を取り出し、二人を牢屋から出していく。


 ――なお、私はさっきから警戒を緩めてない。腰を落として魔剣を構え、シード卿と一緒にいつでも斬りかかれる準備だけは万全。



 ガシャン



「いやー、ようやっと狭苦しい牢屋から抜け出せたで。やっぱ、スーサイドは危険に溢れとるな。もう来んのやめよ」

「それはレオパルさん自身に問題が多いのが原因。コルタ学長の厚意に感謝して」

「ミラリアちゃんの言う通りだァ。それに、約束だってあらァ。ここはレオパル船長しか詳しくねェんですし、素直に従ってくだせェ」

「……スーサイドに来てから、えらく突っかかるんやないか? トラキロ? まあ、約束は約束や。ほんで? どこへ案内すればええんや?」


 牢屋から出されたレオパルさんは大きく背伸びをしながら自由を噛みしめてる。

 対するトラキロさんは肩を落として内心疲弊気味。正直、この人って今回は巻き込まれただけなんだよね。同情しちゃう。

 とはいえ、この様子ならトラキロさんもレオパルさんの手綱になってくれそう。変な感じだけど、今は頼れる人をすべからく頼りたい。


「さて、レオパル君。早速じゃが、中層広間へのルートは分かるかのう?」

「ああ、それなら問題あらへん。そこの角を曲がったら、後は突き当たるまで真っ直ぐ直進や。その先にある天井の蓋を開ければ、最初にウチらが出てきた倉庫に出れんで。……つうか、なんでこないなことしとるんや? 外も騒がしいし、何が起こっとるんや?」


 レオパルさんも周囲に睨まれながら、素直に目指すべきルートを示してくれる。

 見える範囲でも複雑なのに、よく理解できてるものだ。それだけ逃走経路として学生時代に使ったってことだろうけど。


 ただ、水道の中だと何が起こってるのかは理解できてない模様。喧騒は聞こえてても、ゾンビがいるなんて思いもしないか。

 案内してくれるわけだし、少しは説明も――



 ドガァァアアンッ!!



【な、なんだ!? この物音は!?】

「奥から煙も見えるぞ!? まさか、連中がここまで……!?」


 ――しないといけなかったんだけど、悠長なことも言ってられないみたい。水道内に響き渡った轟音を聞き、ツギル兄ちゃんとシード卿が警戒を強める。

 私もレオパルさんばかり気にかけていられない。この音はきっと、あの人達がここまで侵攻してきたことの証だ。


「ガァ……グガァァアア……!」

「ギュルルゥウ……!」

「ア、アンシー先輩達ですの!? ま、まさか、壁を突き破ってここまで……!?」

「あ、安全だと思ったのに!?」

「かなりの数がいます!」

「に、逃げ場がなくなりそうです!」


 アーシさんを筆頭とした女学生のゾンビの軍団が、とうとう水道内にまで侵入してきてしまった。壁を壊すパワーもだけど、まるでこっちの気配を感知してるみたい。

 それこそ、野性的に獲物を狙う獣のような姿。スーサイドにいる人間をみんなゾンビにしないと気が済まないとでもいった気配を感じる。


「みんな、私の後ろに隠れて! レオパルさん、早く先導して!」


 ただ、怖気てばかりもいられない。ゾンビとなったみんなを戻す手段も分かったのだから、もう太刀筋に迷いも見せられない。

 要するに、怯ませて女神エステナ討伐を優先すればいいってことだ。そのためにも、レオパルさんの案内が鍵になって――




「ニャホッ!? あ、あれは……カワイ子ちゃんが大量にウチのもとへ!? ニャッハハハァァア!!」

「レ、レオパルさん!?」

残念だったな! レオパルとは元からこういう女だ!

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