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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
母の想いと魔法の都
305/503

その学生達、事故に巻き込まれる

様々な人間の思惑が巡るスーサイドの物語が加速する。

「い、痛いよぉ……」

「だ、誰か……助けて……」

「回復魔法が使える者、急いでくれ!」

「被害者の数が多いな……! まさか、実習用のダンジョンでこれほどの事故が起こるとは……!?」


 少し中央へ近づいてみれば、そこにいるのは怪我をした大勢の学生。包帯や回復魔法で手当てを受けてるものの、怪我の度合いもかなり酷い。

 教員達もこんな事態は初めてなのか、かなり焦って対応してる。


「ううぅ……アーシとしたことが……」

「アーシさんも酷い怪我……! 何があったらここまでに……!?」

「俺も少し聞いたが、実習用ダンジョン内で魔法の加減が上手くいかなかったみてえだ。派閥同士のいがみ合いでもあったのか、場所も考えずにやり合ったとか。それが事故の原因だとよ」


 怪我をした学生の中にはサークルリーダーであるアーシさんも含まれてる。見てるだけで痛々しいほどの負傷だ。

 横でシード卿が事態について教えてくれるけど、なんともやるせない気持ちがこみ上げてくる。かつてツギル兄ちゃんがシャニロッテさんに危惧した事態が、別の形で現実となってしまった。


「ハァ、ハァ……。た、助け……。妾は……死にたく……」

「コルタ学長! カーダイスさんに回復魔法を! 急いで!」

「むぅ……!? こ、これは一際酷い怪我じゃな……!?」


 そんな大惨事の中でも特に苦しそうなのは、アーシさんと同じくサークルリーダーを務めるカーダイスさんだ。ボロボロの学生服の上から包帯でグルグル巻きにされ、苦しそうに声を上げている。

 艶やかな黒髪と整った容姿も見る影がない。痛々しすぎて見てられない。

 コルタ学長も率先して回復魔法を施してるけど、明らかにダメージの方が大きすぎる。


 ――このままだと、カーダイスさんは命を落としてしまう。


「こ、これが魔法を無闇に使った末路とでも言うですの……!? もしかすると、わたくしもこうなっていたと……!?」

【だからこそ、俺はシャニロッテちゃんに厳しくも忠告したのさ。強大な力には相応のリスクが伴う。シャニロッテちゃんは理解してくれたから良かったが、あのカーダイスという女の子は……】

「……言いたくねえが、望みは薄いな。さっきから回復魔法の効果も見えねえ」


 身から出た錆とも言えるのだろうか。カーダイスさんもアーシさんとの派閥争いに夢中にならなければ、こんな目に遭うことはなかった。

 だからといって、見捨てていい理由にはならない。私だってどうにかして助けたいけど、助ける方法がない。

 薬もダメ、魔法もダメ。命の灯が弱まるのを見ただけでも感じ取れてしまう。


 ――凄く歯痒い。このまま黙って見てることしかできないってこと?




「おやおや、これはこれは。随分と怪我人が出てしまったようですね。とはいえ、彼女の力を試すには良い機会でしょうか」

「ふえ? 誰――ッ!? あ、あの人ってまさか……!?」




 人ごみに紛れてただただ見守ることしかできなかった私達。そこへ入り込んでくる一人の男の声。

 少し目線を向けてみれば、同じローブを着た集団が数名ほど。スーサイドの人じゃないみたいだけど、私には見覚えがある。


 ――何より、先頭に立ってる人の顔は嫌でも覚えてる。あの張り付いたような笑顔だけは忘れたくても忘れられない。


「ミ、ミラリア様? どうされましたの?」

【ど、どうしてあいつがここに……!?】

「チィ……コルタ学長の言ってた通りか!? ミラリア! いったんこっちへ隠れるぞ!」


 シャニロッテさんを始めとしたミラリア教団は理解できてないけど、ツギル兄ちゃんやシード卿だって一目で理解してくれた。何より、シード卿の動きが早い。

 すぐさま私達を人ごみに紛らせながら移動させ、やって来た一団から目をくらませてくれる。少し離れた物陰へと場所を移すことで、見つからずに様子を伺えるところまで来れた。

 この判断は助かる。私としても、あの人達に見つかるのだけは避けたい。

 だって、あの一団の正体は――




「負傷した学生の皆様、どうかご安心ください。我々エステナ教団が来たからには、その苦しみから介抱して差し上げましょう」


「や、やっぱり……!?」

【エステナ教団……!?】




 ――聖女だったフューティ姉ちゃんを切り離すように見殺しにし、かつてシード卿にも取り入ろうとしたエステナ教団だ。

 そして、先頭を歩いて空気を読まない笑顔で語るのは、仇敵とも言えるリースト司祭。他のエステナ教団も揃ってるし、こんな場面で見つかったら何をされるか分かったものじゃない。


「あの人達がエステナ教団ってことは分かりましたの。ですが、どうしてコソコソ隠れますの?」

「俺はちょっとした因縁があってな。あまり、顔を見せてえ相手じゃねえ。……それより、ミラリアの方はもっと根が深いんだろ?」

「……うん。私はあの人達のことだけは許さない。今は語りたくもない」

【俺も同じ意見だ。それにしても、連中は何をしに来たんだ? 後ろの方に顔を隠した女性の姿も見えるが……?】


 隠れながらもみんなと言葉を交わし、ただひたすらに様子を伺う。今はそれしかできない。

 幸いこちらには気付いておらず、広場の中央にリースト司祭が陣取りながら何かを促してるのが見える。一番気になるのは、ツギル兄ちゃんも言ってる女の人か。

 他のエステナ教団とは明らかに異質で、身に纏う空気が違って見える。黙りこくってるけど、リースト司祭に導かれてスぺリアス様の銅像があった場所へ立たされてる。


 ――何だろうか。人とは違う何かの気配を感じる。あの女の人って誰なの?




「負傷者の皆様のために、我々エステナ教団が力を振るいましょう。……我々が崇め奉る神――女神エステナの力そのものをね」

エステナ教団が用意したのは神そのもの。

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