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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
母の想いと魔法の都
304/503

その学長、少女に疑われる

ちょっぴり敏感、ミラリアちゃん。

「そう。コルタ学長とスペリアス様の関係について。多分、ただの同級生とか友達とかじゃない。もっと深い何かを感じる」

「ず、随分と鋭い子じゃのう……!? い、いや、そこについては……ヒュー、ヒュー。い、いかん。また心臓の持病が……!?」

「……どこかわざとらしい。コルタ学長は何か言い逃れしようとしてる。私のアホ毛は誤魔化せない」

「ぐぬぅ!? さ、流石はスペリアスの娘……!? 本当に鋭いのう……!?」


 本当になんとなくだけど、コルタ学長はスーサイドのみんなが言ってた『スペリアス様の同級生』って枠では収まらない何かがあるとしか思えない。

 かつてはディストールで勇者といいようにもてはやされた私だけど、あの頃から大きく成長してるのが自分でも分かる。それはアホ毛の感度についても同じこと。

 成長した私のアホ毛を前に、わざとらしく言い逃れなどできない。


「ほ、本当にこれ以上は勘弁してはくれぬか? ちょ、ちょっと儂も思い出したくないというか、語りづらいというか……」

「むう……なら仕方ない。私もこの件は引っ込む」

「助かるのじゃが、随分と素直じゃな……」

「スペリアス様にそう教わった。『相手が本気で嫌がることをしたらダメ』って。まだまだ未熟だけど、お母さんを悲しませる真似はしたくない」

「……そういう話を聞いてると、彼女が母親としても偉大なのが見えてくるわい。それ自体は喜ばしい限りじゃ」


 持病は嘘っぽいけど、本気で嫌がってるのは事実っぽい。気にはなるけど、ここまで嫌がられたら流石に詰め寄るのは控えよう。

 何より、これはスペリアス様の話題。スペリアス様の教えを破る真似こそいただけない。

 ただでさえディストールの一件で『ごめんなさい』もできてないんだ。なのに余計な不安要素を重ねたくはない。


 ――スーサイドに語られる大魔女の娘として、少しぐらいは胸が張れるようになりたい。胸、ないけど。


「それより、楽園についても何か手掛かりってないの? 多分、スペリアス様はそこにいる」

「なんと? 彼女が楽園に? それならば、一つ昔に聞かされたような……?」


 ともかく、コルタ学長とスペリアス様の関係についてはここまで。こっちとしてももっと重大な話がある。

 スーサイドがここまでスペリアス様と縁のある地ならば、楽園についても何か知ってるかもしれない。過去のこともだけど、未来のことだって大事。

 そんなわけで尋ねてみれば、何か知ってるようだけど――




「コ、コルタ学長! 大変です! 実は――」

「な、なんと……!? 分かった、儂もすぐに向かう! ミラリア君。すまないが、話は後でさせてくれ!」




 ――急に男の先生がコルタ学長のもとへ駆け寄り、耳元で何かを呟いた。それを聞くや否や、慌てて先生と一緒に立ち去っていくコルタ学長。

 いきなりどうしたんだろ? 何か焦るような事態でもあったのかな?


「むむ? すっかり朝練に夢中でしたが、コルタ学長がいらっしゃりましたの? でも、慌てて帰っていきますの? 何がありましたの?」

「私にも分からない。でも、気になる」

「わたくしも気になりますし、朝練はここまでにしますの。ちょっと後を追って確かめてみますの」


 シャニロッテさん達も朝練を中断し、こっちの喧騒が気になった様子。私だって話の途中だったし、何が起こってるのか確かめたい。

 もしかして、レオパルさんとトラキロさんがまた脱獄したのかな? そうだったら大変だし、そうでなくても大変な気配はする。


 ――立ち去る時のコルタ学長は顔が青ざめてたし、ただ事でないことが起こってるのは確かだ。





【ミ、ミラリア! そっちは無事だったか!?】

「落ち着け、魔剣の兄貴。ミラリアは問題に関与してねえよ。……とはいえ、俺が聞く限りでもやべえことにはなってるか」

「ツギル兄ちゃんにシード卿? 私も何があったか理解できないんだけど……?」


 コルタ学長の後を追ってみれば、やってきたのは昨日案内された中層の中央広場。そこで最初に声をかけてくれたのは、ツギル兄ちゃんとそれを握ったシード卿。

 一時別行動をしてた時の話をする暇もなく、ツギル兄ちゃんは慌てた声を上げている。シード卿も落ち着いてはいるけど、どこか焦った顔で周囲を見渡している。


「いったい何事ですの……? 別に集会でもないのに、中央広場にここまで人が集まるのは不思議ですの……?」

「シャニロッテさん! あそこの人達って、カーダイス先輩とアンシー先輩のサークルメンバーですよ!」

「ダンジョン実習から帰ってきたみたいですが、どこか様子がおかしいような……?」

「いつもの喧嘩とも違いますし、何や胸騒ぎが……?」


 いや、焦っているのはシード卿だけじゃない。スーサイドの学生や教員が大勢集まり、中央へ何かを運んでいるのが見える。

 目を凝らして確認すれば、運んでるのは包帯や薬といった医療品。それ以外にも回復魔法を使う様子が見えるし、私も胸騒ぎが収まらない。

 中央にいるのはカーダイスさんやアーシさんのサークルみたいだけど、それぞれのリーダーの姿は見えない。


「ねえねえ、シード卿。本当に何が起こってるの? 知ってるなら教えてほしい」


 状況は呑み込めないけど、何か異常事態が起こってるのは事実。話の内容から、シード卿は事態の原因については知ってる様子だった。

 コルタ学長との話を中断されちゃったけど、こっちはこっちで見過ごせない空気。力になれることがあるならばなりたいし、まずは状況を確認したい。




「どうやら、ダンジョン実習で怪我人が複数出たみてえでな。……崩落事故が起こったせいで、かなりの人数が巻き込まれたとか」

「つまり、カーダイスさんとアーシさんのサークルに被害が……!?」

昔語りも中途半端に、スーサイドへ激震が走る。

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