そのサークル、枕ロワイヤル
パジャマパーティー……枕……となれば、やることは当然分かりますよね?(`・ω・´)
「さあさあ、どうですの? ミラリア様の気持ちも気になりますの?」
「むう~……シャニロッテさん、ちょっとしつこい。顔も近い」
まさに嫌な予感的中。シャニロッテさんが尋ねてきたのは、シード卿との関係について。お風呂での続きを求めるように、ほっぺをスリスリしながら詰め寄ってくる。
久しぶりに再会して時間も経ったからなのか、距離感が大分近づいてる。私としても友達とは近い距離で接したい。
だけど、話題は選んでほしい。コイバナナとやらはコメントに迷う。
「私も気になりますよね~。パジャマパーティーにコイバナは付き物ですし~」
「同じく気になります! かなり親しい間柄とお見受けします!」
「旅する少女と貴族の恋なんて、ロマン溢れるです!」
「み、みんなもそう強く尋ねないで……」
他のミラリア教団も一緒になり、私へさっきの続きとばかりにグイグイ質問攻め。距離感が近づいてきたからこそ、遠慮のない場面も見えてくる。
パジャマパーティーの定番だか定食だか知らないけど、シード卿との関係については本当に言葉に詰まる。深い悪意がないのは見て取れるんだけど、そうニマニマしてもの欲しそうに尋ねないでほしい。
――ちょっとこっちも反撃したくなっちゃう。アホ毛で密かにターゲットロック。
「それそれ、ミラリア様! この際ですので、事の真相を皆様に――」
「……シャニロッテさん。流石にしつこい。ちょっとこれで黙ってて」
ポイッ! ――ボスン!
「あぎゅんっ!?」
「なんと!? 枕投げですの!? ですが、わたくしはミラリア教団内トップの枕投げクイーン! そう簡単には当たりませんの!」
そう思い、ベッドにあった枕を一投。シャニロッテさんの顔面目掛けて放ったけど、あっさり回避。代わりに延長線上にいた他のミラリア教団員に当たってしまう。
私だって我が家で二位の枕投げプレイヤーだったのに、シャニロッテさんは想像以上に枕投げが強い。一位はツギル兄ちゃんで三位以下はいないけど。
「シャ、シャニロッテさん! いきなり回避はやめてほしいです!」
「フフン。枕投げもまた、パジャマパーティーの定番ですの。避けられない方が悪いです――のっ!?」
「だったら、自慢げによそ見も厳禁ですね!」
「こっちも準備できてます!」
「や……やってくれますのぉぉお!!」
私の一投が引き金になったのか、素早く枕を構えていたミラリア教団の全メンバー。その目つきにしても、ウキウキしながら獲物を狙う枕投げプレイヤーそのもの。
どうやら、私も気を抜いてはいられないようだ。
「ミラリア様にも……それ!」
ポイッ! ――ヒュンッ!
「甘い。来ると分かっていれば回避できる」
「な、なんてスピード!? 魔剣がなくても、流石はミラリア様……!?」
シャニロッテさんが標的にされてたのなんて一時的なもの。すぐさま私にも枕が飛んでくるけど、ここはすんなり縮地で回避。
体技だけなら魔剣も不要。今宵、ツギル兄ちゃんの出番はない。
エスカぺ村を代表して、本当の枕投げというものを――
ポイッ! ――ボスン!
「むぎゅん!?」
「ミラリア様も甘いですの! 枕投げとは一瞬の油断が命取りですの!」
――教えようとしたんだけど、逆に教えられてしまった。戦線復帰したシャニロッテさんが私に対し、意趣返しとでも言わんばかりの枕を顔面へ放ってきた。
シャニロッテさんの言う通りだ。枕投げにおいてはどこの世界でも油断禁物なのは常識か。
「……やってくれる。理解した。ここからは私も本気。みんな、覚悟して」
「望むところですの! わたくしも本気で行きますの!」
「こっちだって、今日こそシャニロッテさんを超えてみせます!」
「枕投げなら、ミラリア様に勝てるかもしれない!」
「私だって負けないです! このパジャマパーティーのチャンピオンになるです!」
気が付けば、一緒に談笑する最初のパジャマパーティーもどこへやら。部屋にいる全員が枕を構え、完全に枕投げモードへ移行している。
これはもう油断も何もない。私とシード卿のコイバナナもどこ吹く風となり、部屋に立ち込める枕な気配。
――ここからはまた別の勝負。全員が向き合って枕を構えると、自然なタイミングでついに戦いの火蓋が切られた。
ポイ、ポイ、ポイ! ボス、ボス、ヒョイ!
ポイ、ポイ、ポイ! ヒョイ、ヒョイ、ボス!
「回避は得意! 私だって、人間だった頃のツギル兄ちゃんと鍛えて――はむぎゅっ!?」
「ここはわたくしのホームですの! どうやらミラリア様は、この人数での枕投げに慣れ――ひしゅんっ!?」
「シャニロッテさんこそ、ミラリア様が加わったことで意識に乱れ――ふもんっ!?」
「ならば、私の必殺『乱れ枕』でさらに場を乱せ――へきゅいっ!?」
「『乱れ枕』は私だって使えるです! 今回は私がチャンピオンで――ほんわっ!?」
完全なアウェイで初めての対戦相手。私にとって、この枕投げは不利と言えよう。多人数を相手にするのは初めてだし、ミラリア教団にはそれに対応した技を持った人までいる。
部屋には大量の枕が飛び交い、整えられたベッドもグチャグチャ。そうなってしまうほどの激戦ということだ。
そもそも、どうしてこんなに枕が多いんだろ? いつもやってるのかな?
「ミラリア教団のみんな! 私、この中で神様じゃなかったの!?」
「都合のいい時だけ神様宣言はフェアじゃないですの!」
「言ってくれる! その心意気……買った!」
まあ、枕の数とか枕投げが始まったこととかどうでもいい。今一つだけ確実に言えるのは『この瞬間が楽しい』ということだけだ。
友達と一緒になってワイワイする。上下関係などなく盛り上がる。それができる友達がいる。
ただただそのことが嬉しくて楽しい。時間も忘れて熱中できる。
――旅はまだまだ続くけど、いつか私もたくさんの友達と一緒に生活できたらいいな。
「こら! またあなた達ですか!? もう就寝時間なんですから、騒がずおとなしく寝なさい!」
「せ、先生ですの!? 怒られましたの!? み、皆様! 枕投げを中断して、布団へ潜るですの!」
ただ、あんまり騒ぎすぎるのもよろしくない。近くを通りかかったらしき先生がドアを開け、私達へと怒号一発。
ミラリア教団とも一緒になり、慌てて布団の中へとダイビング。さっきまで枕投げ合戦してたのに、こういう時は息が合う。
――思えば、スペリアス様にもよくこうして怒られてたっけ。ちょっと反省しよう。
怒られても楽しいひと時。これまで味わうことのなかった新たな経験。




