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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
母の想いと魔法の都
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そのサークル、パジャマパーティーへ

あらすじ:変態出現でお風呂中断

「まさか、コルタ学長が用意した牢屋まで脱獄するとは思いませんでしたの……。ロードレオ海賊団……恐ろしいですの」

「シャニロッテさん達も気を付けて。特に船長のレオパルさんは危険。さっきは上手くいったけど、次もそうとは限らない」


 お風呂のお湯も抜けてしまったので、楽しかったお風呂タイムもあえなく終了。レオパルさんは退けたけど、本当に面倒ばかり起こしてくれる。

 今回はトラキロさんが寝返ってくれたから良かったけど、あれがなかったら危険だった。体にタオルを巻きながらレオパルさんと戦うなんて嫌。


「あの二人、その気になればスーサイドから脱出できるんじゃ……?」

「お風呂を目指さず、素直に外を目指せば良かったと思います……」

「でもあの人、意地でもお風呂を覗かないと気が済まないって感じだったです」

「多分、いずれは完全に脱獄する気がする。レオパルさんとトラキロさんはそれぐらい強いし、ロードレオの増援が来たら牢屋も何も無駄」


 正直なところ、あの二人がこのままおとなしく閉じ込められてるはずがないのは理解できる。今回はわざわざお風呂を狙い、双方でいがみ合うトラブルがあっただけ。

 協力してロードレオ海賊団の援軍とも手を組めば、脱獄なんてわけはない。コルタ学長には悪いけど、逃げ出すのは時間の問題だと思う。


 ――むしろ、おとなしく逃がした方がいいんじゃないかな? このままだとスーサイド自体がヤバい。


「まあ、今ここでわたくし達が考えても仕方ありませんの。コルタ学長もレオパル船長については詳しいみたいですし、お任せするのが一番ですの」

「私もそうしたい。できる限りロードレオには関わりたくない。……それはそれとして、これから何するの? 学生服とはまた違う服装だけど?」

「フッフッフッ。お風呂の中断は残念でしたが、次なるイベントだってありますの!」


 そんなロードレオ海賊団のことはさておき、私が現在案内されたのはシャニロッテさん達のお部屋。扉には『ミラリア教団スーサイド本部』と書かれており、このサークルの拠点で宿泊場所ってことは分かる。

 変に名前をデカデカと張ってほしくはないけど、寝る場所としては良さそう。ベッドどころか、可愛らしいヒラヒラとした寝巻まで用意してくれた。

 軽く夕食もとって歯も磨いて後は寝るだけ――と思ったんだけど、シャニロッテさんはまだやることがあるとでも言いたげ。

 何をするんだろう? みんなで枕投げ大会?


「ズバリ……パジャマパーティーですの!」

「パジャマパーティー? ……この格好で今から冒険?」

「そっちのパーティーではありませんの! もっとこう……何と言いますか……」

「大丈夫。理解してる。この『パーティー』は盛り上がる方のパーティー。今のはジョーク」

「なんと!? ミラリア様の口からジョークですの!? これは貴重な体験ですの! 感激ですの!」

「……感激されるのは反応に困る」


 とりあえず、みんなでワイワイする雰囲気なのは理解した。ミラリアジョークも飛ばしながら、揃ってベッドの上で円を描くように顔を向ける。

 ここからパーティーみたいだけど、特にご飯の用意もない。まあ、歯も磨いたので何かを口にするのもお行儀が悪いか。


「私達、是非ともミラリア様の旅での経験を耳にしたくて。シャニロッテさんから聞いてるのだって、タタラエッジでの一部だけですし」

「その話題で今宵はワイワイします!」

「そしてそのままグーグーお休みです!」

「成程、夜のお話タイムってことか。理解した」


 実際の内容を聞いてみれば、本当のパーティーのように着飾って騒ぐというものではない。あくまでみんなでお喋りし、その雰囲気を楽しむことと見た。

 こういう経験って初めて。同世代の話相手なんて、これまでツギル兄ちゃんぐらいしかいなかった。だけど、今は同い年ぐらいの女の子が四人も一緒にいてくれる。

 相変わらずの持ち上げムードはムズムズするものの、悪い気はしない。私が旅した経験が知りたいみたいだし、少しずつでも語ってみよう。


「ディストールやエスターシャでは大変なこともあって、エステナ教団とも色々――でも、ポートファイブで新大陸に来てからは、いろんな出会いもあって――何より、新しいご飯の発見が――」

「凄いですの! ミラリア様は想像以上に世界中を旅してますの!」

「その土地ごとに人々や食べ物との出会いもあって、聞いてるだけで楽しいですね!」

「いつか私も旅に出てみたいです!」

「その時はミラリア教団で一緒がいいと思います!」


 私だってみんなでワイワイしたいし、極力暗い話題は避けて端的にこれまでの旅路を語ってみる。みんな前のめりになり、興味深そうに話を聞いてくれる。

 パジャマパーティー自体が新鮮な体験だし、何より楽しい。私が経験したことを聞いてもらえると、ついつい心も弾んじゃう。

 これまでスアリさんが聞いてくれることはあったけど、今回の空気はまた違う。同世代なこともあり、口も上手くノッてくれる。


「……ねえねえ、みんな。私達って……友達だよね? 『ミラリア教団』なんて名乗ってるけど、私のことは女神エステナみたいじゃなくて……『友達』って認識してもらえてる?」

「そうですのね! 確かにミラリア様のことは尊敬してますが、どちらかと言えばお友達ですの!」

「まあ、ミラリア教団もあくまでサークル名ってことで」

「ミラリア教団の方針は『垣根なくルールを守ってフリーダム』となってます!」

「私だって、変な壁は作りたくないです!」

「……うん。みんな、ありがとう」


 こうして過ごす時間は、ポートファイブでランさんと過ごした時間に近い。『ミラリア様』なんて呼ばれても、ディストールみたいにただ祀り上げられてるのとは違う。

 距離が近くて、気兼ねなくお話ができる。この距離感が心地よい。

 辛いこともたくさんあった旅だけど、こうした出会いは胸の奥からこみ上げるものがある。出会いそのものへ感謝したい。


 ――それと同時に私は思う。人って、一人だけじゃ寂しくて生きていくこともできないのだろう。スペリアス様との再会だって『寂しさ』から望んでいる面だってある。


「ところでミラリア様。先程はお風呂の騒動でぼかされましたが、あの件はどうなってますの?」

「あの件って……どの件?」

「もちろん決まってますの! これもまた、パジャマパーティーの定番ですの!」


 少ししんみりした気持ちになってると、シャニロッテさんから新たな話題が飛んでくる。旅のことも一通り語り終えたし、話題を切り替えるタイミングとしては丁度いい。

 でも、なんだか嫌な予感がする。シャニロッテさんの表情なんだけど、さっきお風呂で見た時と同じニマニマに変わってる。


 ――アホ毛もゾワゾワするこの感覚。シャニロッテさんって、本当にこういう話が好きみたい。




「ズバリ……コイバナの続きですの! シード卿とは現在、どういったご関係ですの!?」

「む、むう……またその話に戻った……」

コイバナが好きなお年頃。

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