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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
母の想いと魔法の都
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そのサークル、お風呂タイム

ワイワイ! 女の子だけのお風呂パラダイス!

「塔の高い階層にこんなに大きな露天風呂……不思議」

「スーサイドの魔法技術により、どの階層にも水が行き渡ってますの。今はわたくし達だけですし、ミラリア様も是非堪能してほしいですの」


 魔剣のツギル兄ちゃんもロードレオ海賊団コンビもシード卿に託し、私はミラリア教団のみんなと一緒にお風呂タイム。

 案内されたのは露天風呂で、なんとスーサイドの塔の中層にあるという。夜空も一望できるし、広さだってかなりのもの。

 どうやらスーサイドは『横に広い』というより『縦に広い』とでもいった造りをしてるみたい。高いというより広い。

 旅をしてると本当にいろんな街並みに出会える。一つ一つが新しい体験だ。こんなに広いお風呂だって初めて。


「これだけ広いなら、ちょっと泳ぐこともできる」

「お行儀悪いですが、私達もたまには泳いで――って、速っ!?」

「ミラリア様、まるでお魚みたいになってます!」

「流石はミラリア様! 泳ぎまで超一流です!」


 ついつい気分が乗ってしまい、湯船の中でスイスイ泳いでしまう。魔剣がないから息は続かないけど、泳ぐだけならイルフ式泳法で十分。

 そんな私の姿を見て、またしても絶賛するのはミラリア教団の面々。確かに普通の人より泳ぎは速いけど、やってること自体は褒められたことではない。

 お風呂で泳ぐのはダメって、スペリアス様にも注意されたことがある。うっかりテンションでやっちゃったものの、これは気をつけないとダメ。


 それにしても、ミラリア教団は本当に私のことを敬ってくれる。行き過ぎにも思えるぐらいだ。

 かつてディストールで勇者ともてはやされた時を思い出すけど、あの時とは身に感じる印象が違う。上手く言えないけど『より深く人の気持ちを理解できてる』気がする。

 シャニロッテさんを始め、ミラリア教団が私を持ち上げる姿には『ディストールにあった裏側』みたいなのが見えない。心から純粋に羨望の眼差しを送ってくれてる気がする。


 ――だからなのかな。あんまり持ち上げられても、強く否定して止める気になれないのは。


「……そういえば、ミラリア様。わたくし、ずっと気になっていたことがありますの」

「気になってたこと? 私のことで?」

「もちろんですの。こうして女性同士の水入らずですし、いい機会なので尋ねてみますの」


 物思いにふけりながらも湯船に心地よく浸かってると、シャニロッテさんがこっちへスイスイ近づきながら何かを尋ねてくる。

 その時の表情なんだけど、どこか含みのある笑顔。悪意は感じないのに、何故か嫌な予感がしちゃう。

 まあ、今はツギル兄ちゃんも不在で女の子だけの水入らずだ。お風呂には入ってるけど。

 こういう時にこそ聞きたい話題というのもあるのだろう。でも、何だろう?




「ズバリ! ミラリア様と先程のシード卿という貴族の方は、どういうご関係ですの!? もしや……恋人同士ですの!?」

「ふ、ふえっ!? シード卿とのこと!?」




 ニンマリしながらシャニロッテさんが尋ねてきたのは、私とシード卿の関係について。そういえば、ミラリア教団はこの辺りのことを説明してなかった。

 直接的に何か関係ある話もなかったし、何気ないタイミングだから聞きたいってことか。でも、それだけじゃない気もする。


 ――だってシャニロッテさん、凄く楽しそうにニンマリしてるもん。


「それ、私も気になってました! あのシード卿という方は、カムアーチでも名のある貴族と聞いてますが!?」

「さっきもミラリア様にだけ、シード卿の態度が柔らかく感じました! ミラリア様ともお似合いに感じます!」

「やっぱり、恋仲なんですか!? 流石はミラリア様です!」

「あ、あう……あの……その……」


 さらにはミラリア教団のみんなまで近寄ってきて、押せよ押せよの質問攻め。あまりに押しが強いものだから、私もあうあうおどけて上手く言葉が出てこない。

 確かにシード卿からは『君に恋をした』なんて言われたけど、まだ本当の恋人同士ってわけじゃない。そこはキチンと説明したい。

 なのに、どうしてか言葉にどもってしまう。シード卿に優しくしてもらえるのは内心嬉しいからなのか、ここで『恋人同士ではない』って否定するのが申し訳なく思えてしまう。

 どういうわけか顔も熱い。お風呂のお湯だけでなく、もっと別の要因が私の体を芯から熱くさせてくる。


「べ、別に……シード卿とはまだそういった仲じゃない……」

「『まだ』ということは『脈あり』ですの!?」

「な、何のことだか分からない……ことにしておく」

「ミラリア様のお顔も真っ赤ですの! これは図星と見ましたの!」

「か、解釈は任せる。私からこれ以上口にできない……」


 曖昧な返事はダメだってスペリアス様にも教わったのに、曖昧な返事を返すことしかできない。シャニロッテさん達はキャーキャー盛り上がるけど、私は逆に湯船の中へブクブク沈んで顔を隠す。

 アホ毛も縮こまり、これまでに感じたことのない恥ずかしさが全身を駆け巡る。お風呂の熱さと血行の巡りでのぼせちゃいそう。

 旅の中で様々な感情も学んで来たけど、やっぱり言葉で説明できないものが多い。今感じてる恋についてだって、まだまだ私では理解が及ばない。


 ――でも、ちょっと理解できてきたことがある。こういった『理解できない側面』もまた、人間としての一面なのだろう。


「ミラリア様~。ちょっとは教えてくださいよ~?」

「女の子同士の内緒ってことで~」

「コイバナは定番ですし~」

「コイだかバナナだか定食だか知らないけど、これ以上は本当に――むう? ちょっと待って。お湯、少なくなってない?」

「……あら? 本当ですの? 確かに水位が下がってますの?」


 ミラリア教団に裸同士でおしくらまんじゅうされながら問い詰められてたけど、ここでちょっと奇妙なことに気付く。

 お風呂のお湯なんだけど、最初よりも少なくなってるっぽい。さっきまで私も顔を沈めてたのに、いつの間にやら水面に出てる。

 これってどうしたんだろ? お風呂の栓が抜けたのかな?

 それとも、どこかに穴でも開いて――




 ザッパァァアンッ!!



「よっしゃぁぁあ!! 脱獄成功やぁぁあ! ほんでもって……ミラリアちゃん達も発見やでぇぇええ!!」

「ふえっ!? レ、レオパルさん!?」

女風呂に下から潜り込むなんて……破廉恥な女だ!(`・ω・´)

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