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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
母の想いと魔法の都
294/503

その教科書、深く読み解く

ついに辿り着けるか? ルーンスクリプトの実態。

「この文字についても諸説ありますが、一番有力な説では『魔法の原初言語』と呼ばれています。今の魔法はこの言語を元に改変し、使いやすい詠唱へ変化させたというのが歴史の中でも定説です」


 先生が黒板に記した謎の文字と共に語るのは、これこそが魔法の大元といった内容。現在へ至るまでの魔法の歴史も付け加えて教えてくれる。

 カムアーチでアキント卿も言ってたけど、過去の歴史を知ることって大事。今に至るまでを知ることで、新しい発見にも繋がる。

 この授業にしてもそう。私の読みが正しければ『魔法の原初言語』こそルーンスクリプトであり、楽園へ繋がる要素だ。


「原初言語は複雑でこそありますが、詠唱に用いた場合の補助効果は計り知れません。一部では古代文字としても扱われ、エステナ教団で代々聖女を務める者は解読できると――」

「ミラリア様。ここまでの話を聞くに、わたくしも先生の話こそルーンスクリプトではないかと思いますの。タタラエッジの魔王さんだって、ルーンスクリプトによる魔法で武器を変化させるという芸当を見せてましたの」

「うん、私もそう思う。でも、ルーンスクリプトって名称が出てこないのが気になる。……もしかして、そこまでは知らないのかな?」

「その可能性は大いにあり得ますの。何でしたら、手を挙げて先生に質問してみるといいですの」


 横で一緒に聞いてたシャニロッテさんも同じ見解。こうなってくると、こっちから聞きたいことだって出てくる。

 『原初言語がルーンスクリプトと呼ばれてないか?』とか『もっと他の資料も見たい』とか。

 エスカぺ村ではお勉強中に集中できず『居眠りミラリア』とスペリアス様に叱られ、両手と頭上にバケツを持って授業を受けてたことだってある私。だけど、今回は凄く集中して話を聞けてる。

 やっぱり、明確な目的があると意気込みも上がる。手を挙げて質問もできるみたいだし、ここは率直に尋ねるのが一番。


「ねえねえ、先生。私、聞きたいことがある。その『魔法の原初言語』ってのは、ルーンスクリプトって呼ばれてたりしない?」

「おや、質問ですか? 学ぶ姿勢として、大変良いことですね。おまけにルーンスクリプト……ですか。まさか、私の手元にある教科書の内容を先に言われるとは。見慣れない学生ですが、あなたは中々優秀ですね」

「それなら、ルーンスクリプトって呼ばれてるってこと?」

「ええ。ただ、それも数ある説の一つでしかありません。私自身もルーンスクリプトについては不明な点も多いもので……」


 私の質問に対し、先生は手元にあった教科書をめくりながら応じてくれる。一応はそういう資料もあるみたいだけど、確証とまでは行かない感じ。

 先生自身も教科書を見ながら手探りだし、今一つ踏み込んだ内容というのも難しい。もっと教科書に詳しい人っていないのかな?


「先生! その教員用教科書ですが、どなたが作りましたの? わたくしもここの詳細を深堀したいですの!」

「成程……良い好奇心です。私としても良い機会ですし、今日の授業ではこの教科書を一緒に深く読み解きましょうか」


 丁度良くシャニロッテさんも私と同じことを考え、先生にも提案してくれた。先生自身も興味があるらしく、素直にその言葉を飲んでくれる。

 教える側なのに一緒になって教わろうとするって、エスカぺ村の授業では考えられない話だ。先生のスペリアス様が何でも知ってたし。

 ツギル兄ちゃんが難しいことを尋ねてもすぐに返答してた。なお、私はウトウトして叱られてた。


 まあ、お勉強にはそういう思い出が多いってことで。だからこそ、みんなで一緒になって学ぶってのは新鮮。

 先生も教科書の他ページへ目を送り、その詳細を調べ始める。


「とりあえず分かることとして……この教科書はコルタ学長が書き起こしたということですね」

「なら、コルタ学長ならばもっと詳しく知ってるってこと?」

「そう断言するのは早いですね。この教科書を書いたのは確かにコルタ学長ですが、監修した人物は別にいるようです」

「カンシューって……何?」

「言うなれば『教科書の内容を示した人』ですかね。私も深く読み解く機会はありませんでしたが……成程、これは実に興味深いです」


 そんなみんな一緒になっての授業の中で、教える側の先生にも新たな発見があったみたい。歴史だけでなく、お勉強そのものに可能性が眠ってるのを感じる。

 だからスペリアス様はエスカぺ村で『良く学ぶことが肝要なのじゃ』と言ってたのか。旅を始めたことも含め、今になってあの頃の大切さが身に染みてくる。


 ――ウトウトせず、もっとしっかり学ぶべきであった。またしても後悔。


「この教科書を書き起こしたのはコルタ学長ですが、学長自身も過去に感銘を受けた人物の教えを参考にしたようです。正確には当時の教えをコルタ学長が独自に編集し、監修として名前を残したようです。その人物につきましても、スーサイドの学生である皆さんならよくご存じのはずですね」

「コルタ学長以外で有名なスーサイドの人? ……卒業生のレオパルさん?」

「……いや、どうしてそこで彼女の名前が? 確かに有名人ではありますが、問題児としてですよ? 絶対に彼女だけは参考にしないでください。あなたはあまり姿を見ないことといい、変わった学生ですね」


 ちょっと物思いにふけってると、先生は教科書から新たなことを調べてくれた。どうやら、教科書の監修をした人が分かったみたい。

 思わずちょっと前に再会してしまったレオパルさんかと思ったけど、よくよく考えたらそんなことはありえない。もし仮にレオパルさんが監修してたら、教科書の内容はもっと変態なことになってただろう。

 仮にもカラクリやサイボーグといったエデン文明の片鱗に触れていても、あれはゲンソウや魔法といった力とはまた別だ。教科書に書かれてるのは魔法のことだし、分野が違う。


 ――だとしたら、誰が教科書の監修をしたのだろう? スーサイドでは有名な人らしいけど?




「スーサイドの歴史に残る大魔女……スペリアス。この教科書には、彼女の知識が詰まっています」

ここでもまた、追い求める師匠にして母の姿が。

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