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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
母の想いと魔法の都
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そのサークル、みんなでご飯

新しい場所に来れば、まずはご飯がミラリアの流儀。

「お食事中、申し訳ございませんの。わたくし達が一緒に食べられるスペースを空けてほしいですの。他にスペースがなくて困ってますの」

「ああ、シャニロッテちゃんか。構わないぜ。このテーブルを使うといいさ。こっちは他でも食べれるし」


 食堂とやらに到着すると、そこには人と人で溢れかえったご飯空間。美味しい匂いもしてくるし、ますます食欲をそそる。

 みんなで食べられるスペースに難儀はしたけど、そこはシャニロッテさんが上手く交渉。大きめのテーブル席に座ってた男子学生も、素直に場所を譲ってくれた。


「揉めるかなって思ったけど、意外とすんなり譲ってくれた。あの男子学生さん達、優しい」

「それもありますが、ここ最近のシャニロッテさんは学内での評判もいいですからね。タタラエッジから帰ってきてからは特に顕著で」

「上級生に下級生に教員。誰であっても納得できるように話を通すので、サークル外でも人気があります」

「ミラリア教団に参加してなくても、シャニロッテさんのサークルに属してるような人も多いです」

「ふえー……。シャニロッテさんって、人気者だったんだ」


 さっきの男子学生さんが優しいのもあるだろうけど、ここまでスムーズに場所を確保できたのはシャニロッテさんの人徳もあるとのこと。

 確かに綺麗なお辞儀と挨拶だったし、そこに人徳も合わさればちょっとしたお願いは通るってことか。最初に会った時はトゲトゲしてたけど、やはり人とは成長するものだ。


「わたくし、今でもミラリア様を見習って言葉による交流を意識してますの。ミラリア教団としても下手に争うことはせず、まずは話し合って解決の糸口を探すのがモットーですの」

「成程。私もそれは大事だと思ってる。いきなり争うんじゃなくて、争う理由を考えたうえで争わない選択も大事。私もシャニロッテさんを見習う」

「見習ってる相手に見習われるというのも――って、このやりとりは以前にもありましたの? でもまあ、ミラリア様らしさも感じられる一面ですの」


 どうにも、タタラエッジでの経験はシャニロッテさんにとっていい方向へ働いてるみたい。私の影響らしいけど、そうであっても感心して参考にしたい。

 私だってまだまだ未熟。いくらミラリア教団なんて作られても、私は本物の神様じゃない。人間は完璧になれない。

 だけど『さらに良い方向を目指す』という心構えはとても大事。成長を止めてしまったら、人はそこまでどころかそれ以下で終わる。


 ――かつてアキント卿に聞いた『楽園は成長を止めたから滅んだのでは?』って仮説も脳裏をよぎってくる。




「ミラリアさんにシャニロッテさん! ご飯の用意ができました!」

「今日は食券も奮発して、豪勢なメニューです!」




 そうこう考えてると、ミラリア教団の面々がご飯を運んできてくれた。わざわざ私のためにここまでしてくれるのは申し訳ないけど、この食堂とやらは普通のお店とは勝手が違うみたい。

 お金じゃなくて『食券』というものでご飯をもらえるらしく、持ってない私では購入不可。なので、今は厚意に甘えるしかない。

 後でお金は相応の額をきちんとお支払いしよう。


「それにしても……ふえー……! これまた、見たことのない料理……!」

【新しい料理を見ると目を輝かせるのは、最早ミラリアの通例だな。だが、この独特な香りは確かに興味を引くし、何より覚えがあるな……?】

「ツギルさんって、鼻がなくても匂いは分かりますのね。この料理は『カルパーチョ』といい、スーサイド近辺で撮れた魚をビネガオイルに浸したものですの。ビネガオイルが魚の肉を柔らかくも新鮮に保ってくれますの」

「ビネガオイル……エスカぺ村にあった『お酢』みたいな香り」


 とはいえ、まずは出されたご飯を堪能してこそ。ヤカタさんとネモトさんの魚料理は食べ損ねたけど、今回の魚料理はきっちりごちそうさましたい。

 どこか懐かしいお酢の香りだけでなく、見た目にもツヤツヤと煌びやかで食欲をそそる。ベースは生のお魚みたいだけど、それを漬物のようにビネガオイルで漬けたものみたい。


「エスカぺ村に近い食文化……ここにもスペリアス様の面影を感じる。その土地で食べることもまた、目指すものへのヒントになる」

【確かにそうなんだが、ミラリアとしては『とにかく美味しいものを食べたい』って気持ちが一番だろ。……さっきから手に持ったフォークが泳いでるぞ】

「これは失敬。お行儀が悪い。……では、改めていただきます」


 ついついフォークを持ってウキウキしちゃうぐらいに待ちきれない。シャニロッテさんがせっかく用意してくれたんだし、お行儀よく味わって食べないと失礼。

 ではまず、一切れフォークで突き刺して――




「ッ……!? 刺身のようなとろける舌触りと歯応え……! そこへ程よい酸味が食欲を刺激する……! こ、これがカルパーチョ……!」




 ――お口へ運べば、なんと魅力的な味わいだろうか。海のお魚特有である生の味わいとビネガオイルというお酢が織りなすデュエット。

 お魚の甘みが酸味で際立ち、全身を駆け巡る幸福感。食べるのがもったいなくも感じてしまう。

 これはしっかりカミカミして味わうしかない。一気にパクパクする料理ではないと見た。


「ミラリア様、大変味わっておられますの。満足されたようでなによりですの」

「シャニロッテさん、私達も食べましょう!」

「憧れのミラリア様と一緒にお食事……胸が熱くなります!」

「ムネアツです! ご飯はみんなで楽しく食べたいです!」


 何より、今回は食べてばかりも申し訳ない。シャニロッテさん達ミラリア教団の面々も一緒にカルパーチョをお口へ運んでいく。

 その際にするのは、ちょっとしたお喋り。食べるだけでなく、こういった交流も大事。


「ミラリア様って、シャニロッテさんとはどういう出会いで?」

「最初はシャニロッテさんがツンツンしてて、私のことにもプンプンしてた」

「む、昔の話ですの! 時が経てば人の心は変わりますの!」

「でも、シャニロッテさんとミラリア様もそこまで長期間一緒にいなかったと聞いてますが?」

「それだけ濃密な時間だったんだと思います!」


 エスカぺ村ではこうしてみんなで食事をすることも多かった。

 ご飯を食べながら、様々な話題で盛り上がる。あの時のことを思い出し、懐かしさで泣いちゃいそう。

 でも、今は頑張って我慢する。私だって、一人でご飯よりはみんなでご飯がいい。


 ――こうやって何気なくおしゃべりしながら食べる時間も、また大切なものだ。




「ちょっと~? アーシの食事場所、ここで決まってるっていつも言ってるし~?」

「妾もこの場所は気に入っておりますので。食堂は皆のものですし、あなたの方こそ別の場所で食べればよろしくて?」




 そうやって楽しくご飯をしてたのに、少し離れたところから喧騒が聞こえてくる。

 何やら、食事場所で揉めてるみたい。私達の場所じゃないみたいだけど、喧騒を聞きながらのご飯は嫌。

 とりあえずは様子を伺い、どうなってるのか把握すると――




「あれって……アーシさんとカーダイスさん?」

「あのお二方、また揉めていますの……。ついでですが、ミラリア様はアンシー先輩の名前を間違えてますの」

こういう学園パートって、ギスギスも定番ですよね。(ミラリアは蚊帳の外だけど)

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