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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
母の想いと魔法の都
283/503

その少女、学生に紛れる

ミラリアのファッションタイム。

「さあさあ! どうぞこちらにお着替えくださいませ!」

「ミラリア様のような凛とした佇まいとアホ毛にもきっと似合います!」

「スーサイドの学生服は他の地方でも人気なんです!」


 シャニロッテさんが提案すると、あっという間に私はサークル『ミラリア教団』の面々に近くの部屋へ案内される。

 そして衣装を渡され、流れに流されて着用。反論どころか意見の余地すらなかった。

 まあ、私としてもしっかりとした衣装の必要があるなら丁度いい。カーテンで覆われた一角で着替え終えると、早速外へ出て姿を見せてみる。




「こういう衣装も初めて着る。どう? 似合う?」

【ぐっ……!? に、似合う……!?】

「そこは素直に褒めてやれよ。まあ、俺から見ても魅力的だぜ。ミラリア」




 紺色で統一された長袖の上着にふんわりとしたスカート。

 膝下までの靴下に、草履やブーツとも違う紐なしの靴。ハイソックスとローファーって言うみたい。

 ドレスとも違うけど、これはこれでお洒落な気分。ツギル兄ちゃんとシード卿も好印象だ。ちょっと照れる。


「やはり、わたくしの目測は正しかったですの! ミラリア様にスーサイドの学生服! 足元の脚線美もグーですの! 神の調和が今ここに……ですの!」

「何してるの!? 早くカメラ回して!」

「分かってます! シャッター、16連打で行きます!」

「ミラリア様、こっちにもポーズをお願いです!」


 なお、学生服を渡してくれたシャニロッテさん達は、ツギル兄ちゃんとは違うベクトルで褒めてくれてる。

 むしろ興奮してる。色々と動きが荒い。後、カメラってそんな形だったんだ。てか、用意してたんだ。

 何やらポーズまで催促されるし、ついついクルリと回転までしちゃう。私も学生服とやらは気に入ってるけど、ちょっと勘弁してほしいかも。


 ――レオパルさんみたいに性的な嫌悪感はないけど、恥ずかしいことこの上ない。


「これなら、ミラリア様がコルタ学長に会っても問題ないですの! むしろ、スーサイドの学生と勘違いしそうですの!」

「それはそれでどうかと思うが、俺としてもそろそろコルタ学長には会いてえ。悪いんだが、案内を優先してくれねえか?」

「かしこまりましたの! ……ところで、あなたはどちら様ですの?」

「ミラリアのことばっかし気にして、俺のことは眼中になかったってか……。カムアーチからの視察だ。あんまり俺を待たせるのも、コルタ学長に申し訳ねえ話だぞ?」

「そ、それは失礼で大変ですの! 皆々様方! 早速コルタ学長のもとへ向かいますの! この時間ならきっと、中層階の広間にいますの!」


 シード卿も話を進めてくれたし、シャニロッテさんもコルタ学長がどこにいるのか知ってるみたい。

 余計な手間を取っちゃったし、急いで向かいった方がいいかもしれない。シャニロッテさん達サークルメンバーも一緒になって案内してくれるから、迷子になる心配もなさそうだ。


 ――ただ、ちょっと人数が多いかも。こんなに大勢で押し寄せて大丈夫かな?


「このエレベーターを使えば、コルタ学長のいる中層階までひとっ飛びですの!」

「何これ? 階段じゃないけど、上に行けるの?」

「カムアーチにも小型のものはあるが、これだけの人数を収容できる大型はスーサイドならではか。こういうところも参考になるな」

【シャニロッテちゃん達サークルメンバーを含めても十分収まるし、歩かずとも上へ行けるとはな。揚力魔法の応用もあるだろうが、大した技術なもんだ】


 そんな心配もなんのその。エレベーターとやらへみんなで乗り込み、勢いそのままにコルタ学長を目指す。

 かなり広い部屋へ入ったと思えば、シャニロッテさんが壁のポチポチを操作。すると部屋全体が上へと動き出し、飛んでもないのにスイスイ進む。

 魔法を使ってるんだろうけど、どことなくロードレオのカラクリに近いものも感じる。ついつい少し前のことを思い出しそうになるけど、流石にここまで来ることはありえない。

 ちょっとだけ逸れたことを考えていると、あっという間に到着したみたい。かなり上へあがった感覚はあるのに、とってもラクチンで快適であった。


「建物を上へあがったのに、草木のある広場に出てきた。不思議」

「塔の中にこれほどの庭園を造るとはな。流石は魔法学都スーサイド。カムアーチと違い、統一された文化的な美しさがあるな」

【なんだかんだで、シード卿も視察という仕事はしっかりこなすんだな。これは俺も、ミラリアのためにコルタ学長って人を探すのを頑張るか】


 再び部屋の外へ出れば、そこはさっきと違う光景。柵越しに下の階が見えるし、模様替えとかそんなレベルじゃないぐらい変わってる。

 私達が到着した中層階の広間というのは、ちょっとしたお庭みたいな場所。周囲の窓から注ぐ陽の光もほどよく柔らかく、草木もいい香りを漂わせて茂ってる。

 イルフの里までは流石に行かないけど、やっぱりこういう自然のある光景って好き。エスカぺ村がどれほど私にとって過ごしやすかったのか、今になって身に染みてくる。


「むう? シャニロッテさん、真ん中に銅像がある。何か作業もしてるけど?」

「そうでしたの! このフロアにはかつてスーサイドに君臨した――って、あらら?」

「あの銅像、取り外してるの? もう布にくるまれてるし、大人の人も集まってるけど?」

「ど、どうしてあのお方の銅像を……? わたくしとしても、ミラリア様に見てほしかったですのに……」


 そんな広間の中央にあった銅像が目に入るも、詳しく確認するより先に周囲の人達で取り外されてしまう。姿を見ることもできず、どこかへ持ち運ばれてしまった。

 シャニロッテさんの言葉から、何やら偉い人の銅像ではあったらしい。なのに取り外されるなんて、部外者の私でも不思議に思えてくる。

 そもそも、銅像ってかなり重かったはず。そんなものをわざわざ取り除く意味って何だろう?




「あ~? 誰かと思えば、最近話題のシャニロッテちゃんご一行じゃん? 新しい人まで連れて、何をやってんのかアーシも気になるしー」

「むむっ!? この声は……アンシー先輩! ごきげんあそばせですの!」

「ごきげん!」

「あそばせ!」

「です!」




 当初の目的よりも銅像のことが気になってると、私達よりも年上の女学生が声をかけてきた。

 なんだか、シャニロッテさんよりも偉いみたい。他のサークルメンバーも一緒になり、軽やかにお辞儀をして挨拶してる。


 ――でも、挨拶を区切ってやるのはお行儀悪いと思う。なんだかシャニロッテさんの友達って、変な人が多い。

ツギル(多分、シャニロッテちゃんの友達で一番変人なのはミラリアだろうな……)

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