その学生、再び出会う
シードに続いて再登場のシャニロッテ。
その暴走についても目の当たりにする。
「や、やっぱりミラリア様とツギルさんですのぉぉお! またお会いできるなんて、光栄極まるですのぉおお!!」
【ちょ、ちょっと!? シャニロッテちゃん!? お、落ち着いて!? つうか、なんで『ミラリア様』なの!?】
「な、なんだこの女子学生は? ミラリアに魔剣の兄貴の知り合いか? テ、テンション高すぎるだろ……」
なんとなくまた会える気はしてた。だって、ここはシャニロッテさんが元々住んでる場所だもん。
タタラエッジの一件からそれなりに時間も経ってるし、予想通り帰ってきてたみたい。クルクル金髪も相変わらずだ。
ただ、その様子やら呼び方やらに思わず度肝。『ミラリア様』って本当に何? 説明を求める。
「も、もしかして、あのお方こそがシャニロッテさんのおっしゃってたミラリア様!?」
「タタラエッジの窮地を救い、かの魔王とも肩を並べたという!?」
「あのアホ毛……語られてた通りです! あのお方こそ、我らが崇めるミラリア様です!」
なのに、状況はますます意味が分からなくなってくる。シャニロッテさんと同じ服装をした同い年ぐらいの女の子が、続々とこちらへ駆け寄ってくる。
旅先でどこを訪れても、驚くことは多々あった。でも、今回は事情が違う。
凄く歓迎されてるっぽいけど、その意図が汲み取れない。羨望の眼差しでキラキラ見つめられるけど、何一つ理解できない。
――そもそも、どうしてこの人達まで私のことを『ミラリア様』なんて呼んでるの? いったい、私の知らないところで私はどんな扱いを受けてたの?
「……シャニロッテさん、説明お願い」
「これは失礼しましたの! 実はタタラエッジからスーサイドへ戻った後、どうしてもミラリア様に対する敬意と興奮が冷めやらなかったですの! そこでわたくしが主導するサークルにもお話をしたところ、皆様にもそのご活躍が伝わりましたの! 結果、サークルの方針と名称を変えることにしましたの!」
「サー……クル?」
「所謂『集まり』だと思えばいいさ。仲のいい人間同士の簡単なグループだ」
かなり圧力に腰が引けちゃうけど、とりあえずはシャニロッテさんに話を聞かないと進まない。
シャニロッテさんはまだまだ興奮してるけど、シード卿も横で解説を加えてくれる。私と同じく腰、引けてるけど。
とりあえず、シャニロッテさんはあれからスーサイドで自らのサークルとやらにおいて、私のことで何かやらかしたらしい。
――爆発魔法の加減ミスとは違うベクトルで嫌な予感がする。
「わたくしどもは!」
「ミラリア様を神と崇拝する!」
「サークル『ミラリア教団』でございます!」
「シュピーン……です!」
「ミ、ミラリア……教団……」
「……いや、流石にそこまで行くのは俺もどうかと思うが?」
【不覚にも、俺もシード卿と同意見だ】
その嫌な予感、見事的中。他の女の子と一緒になり、ポーズを決めながら自己紹介してくる。なんだかパサラダのノムーラさんを思い出す。
タタラエッジにいた時からそうだったけど、シャニロッテさんは私のファンとしてかなり熱が入ってた。
あの頃から私を『神様』とか呼んで、女神エステナと同列に扱っていた。だけど、これにはシード卿やツギル兄ちゃんと一緒にドン引きしながら思う。
――ミラリア教団って……やりすぎ。エステナ教団みたいになっちゃってる。
「そ、そんなに引かないでほしいですの! ミラリア教団とは名乗ってますが、あくまでサークル活動の一環ですの!」
「教員や上級生に目をつけられたくないので、活動自体は慎ましくやってますから!」
「主にシャニロッテさんからミラリア様の話を伺ったりとか……」
「髪の毛を自在に動くアホ毛にする練習とか……。全然できてないですが」
「……そう。まあ、私もあんまり口は挟まないでおく」
一応の一応の一応でわきまえてはいるらしいし、シャニロッテさんのことは信用してる。タタラエッジではお世話になったし、あんまり止めるのも気が引ける。
さっきまでのシード卿に対するドキドキがシャニロッテさん達からのドキドキで上書きされたし、私もペースが戻ったという意味ではよかったかも。
そういうことにしておこう。もとより、私ではシャニロッテさんを止められない。
「俺もミラリアの噂は音に聞いてたが、この様子を見るに全部事実みてえだな。……予想の斜め上で」
【多分、俺の口から全部語っても『予想の斜め上』って感想は変わらないだろうな】
「魔剣の兄貴がそう言うなら、俺もここは流れを読んで身を任せるさ。……どうでもいいが、あんた口ないだろ」
シード卿とツギル兄ちゃんもどこか観念した様子。珍しく二人一緒となり、これ以上こっちから関わることは避ける選択をしてくれた。
今のシャニロッテさんのやってることって、レオパルさんのニャンニャンパラダイスとかに近い感じだもん。今の段階である程度わきまえてるなら、こっちから下手に刺激するのも悪手。
スーサイドの中だけならば、このままが一番だろう。構ってばかりでは本題だって進まない。
「ねえねえ、シャニロッテさん。私、ここへは楽園のヒントを求めてやって来た。教員っていう偉い人がどこにいるか知らない?」
「俺もいい加減挨拶もしねえとな。コルタ学長って人に会いてえんだが?」
「コルタ学長にですの? それは構いませんが、わたくしとしては少々気になる点が……」
「むう? 何が気になるの?」
いい機会なのでシャニロッテさんにちょっと質問。どうせだったら、詳しい人に尋ねるのが一番。
シード卿の話を聞くに、コルタ学長という人がスーサイドでもかなり偉いっぽい。私の聞きたいことも尋ねられそうだし、ここは便乗させてもらおう。
だけど、シャニロッテさんはどこか渋ってる感じ。案内自体はできるみたいなのに、私の姿をまじまじと見ながら何かを考えこんでる。
「そちらの男性は別として、ミラリア様の衣装はいかにも冒険者感が強いですの。コルタ学長は厳しいお方ですし、少しおめかしが必要と思いますの」
「そうなの? イルフ人のみんなが洗濯してくれたけど、服はこれぐらいしか持ってないし……」
どうにも、シャニロッテさんは私の服装が気になるみたい。スーサイドの学生目線で語ってるのだから、間違いはないのだろう。
それにしても、また『ドレスコード』みたいな話が出てくるのか。今回はシード卿も出先だし、私用の服を持ってるとは思えない。
まあ、あんまり借りてばっかりも気が引ける。とはいえ、いったいどうしたものか――
「そうですの! ミラリア様もわたくし達と同じ学生服にお着替えしますの!」
「学生……服?」
マジでミラリア教団を作ってしまったシャニロッテ。




