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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
永き歴史を紡ぐ種族の里
278/503

{アホどものその後}

三人称幕間編


アホども=ロードレオ海賊団

◇ ◇ ◇



「あー……ミラリアちゃん達の船、完全に見えなくなりましたなァ」

「あー! 悔しい! せっかくミラリアちゃんもウチのニャンニャンハーレムパラダイスに加えられると思うたのに、長耳ちゃんまで奪い返されてまうなんてぇぇええ!! やっぱ諦めきれへぇぇえん!!」


 ミラリア達を乗せたイルフ人の箱舟が過ぎ去った後、ロードレオの海賊船では副船長のトラキロが船長のレオパルと合流していた。

 自爆ドッキリという脅かしでミラリアに一矢報いるも、レオパルの内心は大絶叫もの。結果としてロードレオ本隊を動かしてまで手にした戦果を失い、悔しき変態の声が夜の海に響く。


「いい加減、諦めたらどうですかァ? もう十分に女も揃ってますし、ひっそり楽しめば――」

「アホぬかせ! そない簡単に諦めるウチなわけないやろ!?」

「……やっぱ、灸を据えるのはミラリアちゃんでも厳しかったかァ」


 レオパルの辞書に『気に入ったカワイ子ちゃんを諦める』という言葉はない。お灸を期待していたトラキロの願望も虚しく、レオパルの(サーガ)はまだまだ続く。

 ニャンニャンパラダイスを完成させるその日まで、レオパルの暴走(性欲)は止まらない。


「つうかや、トラキロ! おどれも何ミラリアちゃんに負けとるんや!?」

「実際、かなり強いんでさァ……。レオパル船長だって負けたでしょうがァ……」

「うっさい! 後、ヤカタとネモトの二大料理長はなんでミラリアちゃん側に寝返っとったんや!?」

「オレが聞いたところ『食を愛する者同士の友情』としかァ……」

「意味分からへん! せっかく長耳ちゃんにも美味しいロードレオメニューを味おうてもらおう思てたのに!」

「……多分、周囲からすればレオパル船長が一番意味不明でさァ。まァ、ようやくこっちも落ち着いたわけですし、目下の課題をなんとかしましょうやァ」


 ミラリアがロードレオ船団に潜り込んでいた話も、少しずつレオパルやトラキロへ伝わっていた。

 当人達が聞いても理解が追い付かないが、実際に伝わっている内容は事実。状況も整理され、ロードレオとしては別件でやるべきこともある。




「く、くっそ……! やっぱり、俺一人じゃ敵わねえか……!?」

「さっき別の船で乗り込んで来たこの男……どうしますかァ?」

「ミラリアちゃん騒動の隙をついたらしいが、まだまだ甘ちゃんやったな。なんや、ウチのスイートキャッツの元仲間やったっけ?」




 それこそ、ミラリアに遅れてロードレオのもとへ乗り込んだAランクパーティーのリーダーだ。

 恥を承知でミラリアが起こした騒動の後に突撃するも、見事に返り討ち。かつての仲間を助け出すどころか、逆に自らも拘束されて囚われの身となってしまった。


「リ、リーダー!? こんなところまで私達を追いかけて!?」

「お、俺だって一度は一緒にパーティーを組んだ仲間だ。見捨てて終わりは情けねえだろ?」

「う、ううぅ……! 一度は私らが見捨てたのに……! レオパル様! どうかリーダーのことは見逃してほしいし~! 私達はずっとレオパル様の傍にいますから~!」

「マイスイートキャッツに頼まれたら、ウチも断れへんなぁ……。そもそも、男なんか攫ってもおもろないし」


 とはいえ、レオパルもAランクのリーダーについては一度拘束しただけ。正直なところ、扱いには困っていた。

 かつての仲間もその心根に胸打たれて釈放を求め、レオパル自身も難儀を示す。


「……しゃーない。このままウチらはミラリアちゃんを追うが、適当な陸地で下ろすか」

「ちょっと待ってくだせェ。まさか、まだミラリアちゃんを追う気ですかァ?」

「当たり前やろが。こないなったら、海の果てまで追いかけて捕まえたるわ。逃げた方角ぐらいは分かんのやろ?」

「わ、分かるには分かりますがァ……」


 そんなわけで、リーダーの扱いは適当な感じで決定。それ以上にレオパルが優先するのは、取り逃がしたミラリアの後を追うことだ。

 一度手が届きそうなところまで来て取り逃せば、かえって執念が働くのも人の性。サイボーグのレオパルも例外ではなく、むしろ変態性にスイッチが入って追走をトラキロへ求める。


 ――ただ、返答するトラキロの口はどこか重い。


「……スーサイドでさァ」

「……今、なんつった?」

「だから、魔法学都スーサイドでさァ」

「はぁ!? スーサイドやと!? よ、よりにもよって、なんであそこなんぞに……!?」


 トラキロも望遠鏡で箱舟が見えなくなるまで方角は追っていたので、ミラリア達の行き先に見当はついている。問題なのはその場所が魔法学都スーサイドであること。

 これまでの笑ったり怒ったりがほとんどだったレオパルの表情が一転、どこか青ざめて何かに怯えるように変化する。


 ――レオパルにとって、スーサイドは『とある因縁』のせいでずっと避けていた場所だ。


「……止めますかァ?」

「や……止めへんわぁあ! こ、こないなったら行ったろやない! スーサイドに! 全船、ニャンニャンパラダイス号を中心に輪形陣! スーサイドへ舵切りやぁぁああ!!」

「……レオパル船長、ヤケクソになってませんかァ?」

「ヤ、ヤケクソがなんぼのもんじゃい! リアルでクソな思い出も怖ないわぁぁああ!!」


 拮抗した心境だったが、最終的にミラリアへの欲情がレオパルの中で押し勝ってしまった。

 半狂乱になりながらも、ロードレオの艦隊をスーサイド目指して進め始める。


「と、とはいえ、スーサイドには少数精鋭でコッソリ乗り込もか。ウチとトラキロだけでええやろ」

「レ、レオパル様? どうされたのですか?」

「なんだか、いつもと違う感じだし~?」

「あんまり触れてやるなァ。いくら天上天下唯我独尊なレオパル船長でも、苦手なものの一つや二つはあるってことだァ」


 ロードレオ海賊団において、レオパルとスーサイドの因縁を知るのは右腕でもあるトラキロのみ。

 他の船員やスイートキャッツは詳細など知らず、スーサイドに着いてからの動きについても少し語られる。

 しかし、その動きは実に消極的。かつてカムアーチで単独パンティー怪盗をしていた時以上の慎重さだ。


「そういえば、カムアーチからスーサイドへ貴族の視察も来てるとかァ。これはますます見つかると面倒ですなァ」

「なんでこないにウチに都合の悪い状況ばっかやねん……。ハァ~、これは今のウチにスイートキャッツと戯れて、活力を補充せなやってかれへんな~」


 おまけにトラキロが耳にした情報から、レオパルにとってますます不都合な事実が告げられる。

 カムアーチも都市発展の一環として、魔法学都スーサイドを視察する価値はある。かつてパンティー怪盗でカムアーチを恐怖のどん底へ陥れたレオパルが見つかれば、またしても騒動の火種になるのは明らか。

 それら心の重しを癒すためには、やはりニャンニャンスイートパラダイス。ニャンニャンパラダイス号の中へ戻り、お楽しみタイムの再開を始めようとしていた。


「俺は別にそっちの事情に口出さねえが、仲間だった二人の面倒はよろしく頼むぞ。俺にとっては、元気な姿を見れただけで十分だ。冒険者稼業もこれを機に引退するか……」

「おうおう。そういう奴は男でも気に入ったで。なんやったら、お前もロードレオ海賊団に――いや、待てよ……?」


 そんなレオパルに声をかけるのは、もう完全に観念したAランクのリーダー。かつての仲間が一応は元気にしている以上、もう余計な手出しは不要と潔く判断。

 レオパルもそういった態度には感心を示し、彼のことをロードレオ海賊団へ招き入れようとも考えた。




「……お前、よく見ると結構可愛らしい顔しとるな? ……化粧とかしたら化けるか?」

「は……へ? お、俺の顔を見て何を……?」




 ただし、それは一般的な船員としてではない。

 実のところ、レオパルは最近のニャンニャンパラダイスにマンネリを感じていた。だからこそ、トトネやミラリアという新たな刺激を欲していた。

 それが叶わなかった今、内心かなりの欲求不満。そこで見つけたのは、Aランクのリーダーという新たな境地を切り開く存在。

 彼は顔立ちがよく、元々は仲間の女二人に惚れられてもいたのだが――




「お前……ウチのニャンニャンパラダイスに加われやぁぁああ!!」

「や、やめろ!? お、俺の服を脱がし――嫌ぁぁあああ!?」




 ――今度は掘られる未来が近づいていた。


「レオパル船長ォ……どんだけ節操なしなんだァ……?」

「でも、これでリーダーとまた一緒ってことね!」

「どうせだったら、私らでおめかしするし~!」

「や、やめてくれ……!? 助けてくれぇぇええ!!」



◇ ◇ ◇

レオパルの守備範囲が広がった!

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