その母、かつて滞在した地
次なる目的地は、母スペリアスとも関係の深い場所。魔法学都スーサイド。
「スーサイドが……スペリアス様の故郷……?」
【そ、それって本当なんですか!?】
「確証はないが、少なくとも彼女はイルフの里を訪れる前、スーサイドで暮らしていたことは確かだ。ならばこそ、君達兄妹が楽園を目指すヒントはスーサイドにあると考えるのが道理だろう」
長老様が語る話を聞くに、少なくともスーサイドはスペリアス様縁の地ではあるらしい。私達兄妹にしたって、エスカぺ村より前のスペリアス様は知らない。
ドワルフさんにしてもエフェイルさんにしても、本来はエスカぺ村の外で生活してたんだ。同じ三賢者で括られるスペリアス様だって、外の世界にその足跡があってもおかしくない。
「でもまさか、シャニロッテさんの住んでる場所に手掛かりがあるなんて……」
【あの時はスペリアス様の話を詳しくしなかったからな。もしかすると、シャニロッテちゃんなら何か知ってる可能性もある】
「……行ってみるしかない。楽園へのヒントが繋がってる以上、追わない理由がない」
イルフ人としても、楽園の場所までは知らなかった。空の浮島が楽園かどうかも未確定だし、いずれにせよもっと情報は必要。
その情報がスーサイドにあると言うならば、私はそこへ行くまで。またシャニロッテさんに会えるも楽しみだ。
――行くしかない。スペリアス様に会うために必要なことは何でもやる。
【しかし、スーサイドまではかなり距離があるんじゃないですか? イルフ人は海だって初めてなのに、航海の面は大丈夫なんですか?】
「一応、私でもスーサイドへ行く方法は何度かイメージで試しはした。航海術についても、かつてスペリアスから教わってはいる。……もしかすると、このような事態を想定していたのかもな」
「スペリアス様にしても三賢者にしても、どこまで先を見据えてたんだろ? 私が歩んでる旅路にしても、もしかして導かれたものなのかな? ……だとしたら、凄い計算」
箱舟をスーサイドへ向かわせる面での心配もないらしい。これらの事態を予測したのがスペリアス様達三賢者なら、相当周到に可能性を突き詰めたに違いない。
どこか誘導されてる気もするけど、悪い気はしない。たとえ誘導されていたとしても、それはスペリアス様へ繋がる確かな道筋だ。
むしろ『道を外れずに進めてる』と考えられる。少しずつでも私の旅は目的地へ近づいてる。
――スペリアス様、どうか待っててほしい。今度こそきっちりディストールでのワガママについて『ごめんなさい』って謝罪するから。
「君の旅装束についてもあらかじめ箱舟に乗せておいた。スーサイド近くまで到着すれば、すぐにでも旅を再開することは可能だ」
「ミラリアお姉ちゃんとも、もうじきお別れですか……。せっかく仲良くなれたのに寂しいです……」
「ごめん、トトネちゃん。私だって、トトネちゃんとのお別れは辛い。……でも、そんな辛さを乗り越えてでも成し遂げたい旅が私にはある。それに、これでもう完全にお別れじゃない」
箱舟はブースターを使い、夜の海をスイスイと進んでいく。スーサイドへ近づいてるんだけど、それは同時にイルフ人のみんなとのお別れが近づいてることでもある。
私のことをお姉ちゃんと慕ってくれたトトネちゃんとだって、箱舟が到着すればお別れだ。だけど、生きていればまた会える機会だってある。
「今度はスペリアス様――私のお母さんと一緒にイルフの里へ行く。その時はまた天ぷらをご馳走してほしい。私も何か美味しいものを用意しておく」
「は、はい! 私、ずっと待ってますから! イルフの里もしっかり立て直して、恥ずかしくないようにしておきますね!」
「我々も帰ったら焼けた里の修復が必要か。……苦労もあったが、此度の巡り合わせに感謝しよう。ミラリアにツギル、二人の旅先に幸あれ」
今回は私とツギル兄ちゃんだけだったけど、スペリアス様だってまたイルフの里には訪れたいはずだ。だって、ここまで色々気にかけてた人達だもん。
スペリアス様と再会できたら、もう一度旅をしたい。これまでの足跡をなぞるように、スペリアス様と一緒に歩んでみたい。
イルフの里もそうだし、ポートファイブにカムアーチ、タタラエッジにだってもう一度寄ってみたい。かつてワガママでできなかった一緒での旅をやり直したい。
長老様や他のイルフ人も祝ってくれるし、まだまだ私の旅は続く。どこにあるのか分からない楽園であっても、いつか必ず辿り着いてみせる。
――スペリアス様に『ごめんなさい』できるその日を信じて。
あの日言えなかった言葉を直接口にするその日まで。




