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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
永き歴史を紡ぐ種族の里
276/503

その少女達、無事帰還する

ロードレオとの意味不明なバトルもようやく幕引き。

「トトネ、ミラリア、ツギル! 無事だったか!」

【うおぉお! トトネ様ぁぁあ! オイラが不甲斐なくてごめんよぉ……! 魔剣兄妹もありがとなぁ……!】


 ロードレオ海賊団のことはもう記憶ごと海へ投げ捨て、私達はようやく箱舟へ戻って来れた。

 長老様やカミヤスさんにイルフ人のみんなが出迎えてくれて、私達の無事を祝ってくれる。色々ありすぎたけど、ようやく全部が無事終わった。

 本当に長かったし、意味不明なことも多かった気がする。でも、終わり良ければすべて良しだ。


「よもや、人間に攫われたトトネちゃんを人間が救い出してくれるとは……」

「人間というのはこれまで、全員で徒党を組んでるものとばかり思ってたがな……」

「人間は別にみんな仲良しとも違う。私はそうしたいけど、簡単にはいかない」

「君のように優しい少女がそう言うのだから、世界は我々が思う以上に複雑なのだろうな」


 当面の危機も去り、イルフ人のみんなとも言葉を交わす。これまで祖先の記憶から人間を怖がってたらしいけど、どうやら『人間全部を一括り』に見てた部分もあるみたい。

 人間みんなが怖いわけじゃないし、かといっていい人ばかりとも言えない。私だって旅なのかで世界の広さを実感し、いろんな人間がいることを理解したばかり。

 レパス王子のように恐ろしい人もいれば、フューティ姉ちゃんのように優しかった人もいる。ランさんにシード卿にシャニロッテさんといった人達も含めて様々だ。

 『十人十色』という言葉を聞いたことがあるけど、まさしくこういうことなのだろう。


 ――さっきまで戦ってた人の顔も脳裏を横切ったけど、そのまま流しておこう。


「世界は広くて、ただ聞いただけでは判断できない。良いことも悪いことも、全部経験の中で培われる。……それが私の旅で得た考え。私から正解なんて何も言えない。そんなものは存在しない。だけど、もしイルフ人のみんなが外の世界へ目を向けるなら、しっかりとその眼で見極めてほしい。……清濁入り混じった世界は自分で確かめ、自分で道を見つける必要がある」

「……不思議な少女だな。まるで、旅の経験そのものが具現化したような語りだ」

「だが、分からなくもない。長老様も気に掛ける少女だけのことはある。言葉一つにも神妙な重みを感じるな」


 私だって偉そうなことを言える立場じゃないけど、ついつい口にせずにはいられない。ちょっとした経験談でしかないけど、イルフ人のみんなは静かに聞き入れてくれた。

 これから先をどうするかはイルフ人次第。私では長くて辛い歴史の先を指し示せない。


 ――でも、心から願う。イルフ人が奴隷だった過去に怯えることなく、さらなる未来を掴めることを。




「ミラリアにツギル。トトネとカミヤスを助け出してくれたこと、改めて感謝する。……ただ、私も話の続きもしたくてな。帰って早々だが、船に揺られながらでも構わないか?」

「長老様? う、うん。私も気になるけど……」




 そうこうみんなで語ってると、長老様が割って入りながら言葉を紡いでくる。

 確かに元々は長老様との話が主題だったし、私だって是非聞きたい。でも、なんだか急いでる感じもする。


「まずはこの箱舟だが、今から君達をある場所へ送り届ける。本来の予定とは違ったが、こうして動かすことになったのもまた運命かもしれない。何より、あそこへ辿り着くには船がないと厳しい故な」

「そこまでしてくれるの? イルフ人にとって外の世界は初めてなのに、なんだか申し訳ない」

「私としても恐ろしさはある。だからこそ、できる限り安全に手早く送り届けたいのだ」


 どうやら、長老様も外の世界は初めてで怖いらしい。本当は早く森へ帰りたいんだろうけど、それでも私を送り届けたい場所があるとのこと。

 イルフ人にはお世話になってばかりだけど、私だって楽園へのヒントが眠っているなら是非行きたい。


「今から目指す場所は、人間の世界で『魔法学都スーサイド』と呼ばれる地だ。なんでも、魔法研究が盛んな地だとか」

「スーサイドって……聞いたことある。確か、シャニロッテさんもそこに住んでるんだっけ?」

【タタラエッジで会ったのは、あくまで用事があったからだな。あれから時間も経ってるし、もしかするとシャニロッテちゃんも戻ってるかもな】


 その場所こそ、以前シャニロッテさんからも聞かされた魔法学都スーサイド。まさか、このタイミングでそこへ向かうことになるとは予想外。

 シャニロッテさんに会えるかもしれないと思うと、嬉しさ半分怖さ半分。さっき戦った顔も忘れたい人ほどじゃないけど、シャニロッテさんもかなり暴走気質だったっけ。


 ――もう一度会えたら、あの人みたいにならないよう注意しておこう。ニャンニャンパラダイスとか作ってないよね?


「でも、どうしてスーサイドへ行くの? そこに何があるの?」

「私も何があるかまでは知らないが、あの地は『魔法研究が盛ん』以外に重要な点がある。……我々イルフ人やミラリアとツギルにとっても因縁ある地だ」

「イルフ人や私達に……?」


 ただ、気になるのはスーサイドを目指す理由。箱舟は夜の海を静かにスイスイ進んでおり、スーサイドへも近づいてるのだろう。

 でも、肝心の理由が見えてこない。何かあるのは確からしいけど、いったい何があるのかな?




「魔法学都スーサイドは三賢者筆頭である大魔女……スペリアスの故郷と思われる地だ」

話は本題へ戻り、次なる目的地スーサイドについて。

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