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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
永き歴史を紡ぐ種族の里
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その女海賊、見逃すはずがない

どこかノリが良くても、レオパルが簡単に見逃す理由はない。

「何? レオパルさん? 私達、早く帰りたい」

「え、えっと……お世話になりました」

「いえいえ、こちらこそ~。出口はあちらです~……って、なるかい! その長耳でプリティーな少女は、ウチが苦労してSランクパーティーのアホどもから横取りしたカワイ子ちゃんや! 引き下がるはずないやろがい!」

【『横取り』の時点で『苦労して』も何もないだろ……】


 内心、流れでどうにかならないかなと思ってたけど、レオパルさんも引き下がってはくれない。どこか調子を合わせることはあれど、このまま帰す気は毛頭ない模様。

 色々とツッコミたいけど、ここはグッと堪えておこう。話が余計にこじれる。


「Aランクのあなた達にしても、リーダーさんが探して近くまで来てる。きちんと元の場所へ戻るべき」

「えっ!? リーダーが!? だ、だけど……」

「もう今の私達、レオパル様抜きじゃ生きられないし……。見捨てるような真似をして、今更どんな顔をして会えばいいのか……」

「……ポートファイブから今まで何があったのかは聞かない。いずれにせよ、一度ぐらいは顔を見せるべき」


 ついでにAランクパーティーの二人にも声をかけるも、こちらはあまり手応えがない。どうやら、完全にレオパルさんに毒されてるみたい。

 まあ、そのことはもう置いておこう。私だってトトネちゃんが優先だ。


「ミ、ミラリアお姉ちゃん……。私、早くみんなのもとへ帰りたいです……」

「大丈夫。私が必ずトトネちゃんを帰す。だから、少しだけ待ってて」

「なんや!? ミラリアちゃんはそのプリティーキャットに『お姉ちゃん』なんて呼ばれとんのか!? せやったら、これはますますもって大チャンスやで! ウチの理想の一つである『姉妹丼ニャンニャンタイム』も実現可能や!」

「だから、あなたは喋らないで。耳が腐り落ちる」


 トトネちゃんだって帰りたがってるし、もう色々と面倒になって来た。レオパルさんの妄言も聞き飽きたし、必要な決着はここで着けてしまおう。

 『姉妹丼』とか『ニャンニャンタイム』とか、理解さえも頭が拒んでくる。いっそ斬り合いで白黒つけたい。


「レオパルさん。あなたに私達を素直に帰す意思がないことは理解した。……だから、ここで決着をつける。完全に斬り倒して、堂々と帰らせてもらう」

「……おうおう。言うてくれるやないかい。以前の旅装束と違う紅白衣装も相まって、凛々しさ満点ってとこやな。……アカン。今から興奮してきた」

「何に? ……いや、聞きたくもない」


 鞘に納めた魔剣を玉座に腰かけるレオパルさんへつきつけての宣戦布告。トラキロさんのお願いもあることだし、元から戦う算段でここまでやって来た。

 ならば、戦うことへの躊躇も必要ない。むしろ、私としてもここで斬り倒しておきたい。


 ――この人は危険すぎる。世のため人のため、ここで再起不能になってもらう。


「レ、レオパル様!? あの小娘、あんなこと言ってますが!?」

「レオパル様にもしものことがあったら、私達生きていけないし~! 他の女に浮気せず、ここは少し考え直してほしいかも~!」

「フッ。安心せいや、ウチのマイスイートキャッツ。ウチは気に入った女は手に入れんと気が済まんっちゅう、罪深い性分なんや。お前らに危害は加えへんから、今はウチを信じて見守っててくれへんか?」

「キャ~! レオパル様~!」

「痺れる~!」

「……どこに?」


 なんだかレオパルさんを慕う人もいるけど、あれは毒されて戻れなくなった人達だ。悲しいけど、私にはもう救えない。

 できることといえば、これ以上の被害を出さないこと。レオパルさんも乗り気だし、玉座から立ち上がってこちらへ歩み寄ってくる。


 ――なんだか妙にゾワゾワする態度を見せてたのも気にしないでおこう。シード卿に似てたけど、レオパルさんがやるとゾワゾワしかしない。不思議。


「ほんじゃまあ、このロードレオ海賊団の女船長レオパルちゃんが、再びミラリアちゃんの相手をしたろやないかい。前回は鼻血で不覚を取ったが、今回はそうもいかへんで。なんせ、ここはウチのホームであるニャンニャンパラダイス号やからな」

「そう何度もニャンニャン言わなくても分かってる。……ただ、場所は変えたい。トトネちゃんを巻き込むのは嫌」

「ほう? そこはウチも同意見やな。せやったら、ちーっとおもろいステージを用意したるわ。少し揺れるやろうが、ミラリアちゃんだけそのまま中央におってくれや」


 お互いに戦う覚悟はできたけど、場所の準備が整ってない。別に部屋を出ればいいだけだと思うけど、レオパルさんには何か考えがあるみたい。

 レオパルさんとしても、Aランクの二人を傷つけたくない気持ちだってある。トトネちゃんのことだってあるし、フィールドを変えてもらえるならどこでもいい。


 ――常識の範疇で。壁一面にレオパルさんの趣味が張り付けられた部屋とかは嫌。




「ほんなら、行くでぇぇええ!! これがニャンニャンパラダイス号に搭載されとる、決戦のバトルフィールドやぁぁあ!!」



 ガコンッ!



「ふえ!? ゆ、床が抜けた!?」

【バランスをとるんだ! 下はそこまで深くない!】




 レオパルさんが近くにあったレバーを倒すと、突然足元の床が抜けて下へと落とされる。

 幸い、落ちたのは部屋の中央にいた私だけ。トトネちゃん達は部屋の隅にいたから無事だ。

 クルリと回転して問題なく着地できたし、あんまり罠って感じじゃない。あくまで戦う場所を変えたかっただけっぽい。


「ここは……船の一番下?」

【海水も張ってあるし、多分そうだろうな。それなりに広い足場といい、本当にバトルフィールドしての意味合いが強いのか】

「ニャーハハハ! そらそうや! ここはウチがスイートキャッツに力を示して、そのハートをゲッツするための専用ステージ! ミラリアちゃんともここで(たたこ)うて、ウチにメロメロなラブリーキャットにしたるわぁあ!! ハァ、ハァ!」


 上からはレオパルさんも飛び降りてきて、とうとう戦いの幕開けか。右手には以前と同じポン刀を握ってるし、急降下しながら私に狙いを定めてる。

 なんだかすでに息をハァハァさせてるし、顔が紅潮してる。でも、そんなことは気にしないし理由もどうでもいい。


 ――とりあえず、私はレオパルさんのラブリーキャットとやらになる気はない。




「さあ! ウチのもんになれやぁぁああ!! ミラリアちゃぁぁぁあん!!」

さあ! 本章大ボス、ロードレオ海賊団船長レオパル! カムアーチ以来の激突へ!

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