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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
永き歴史を紡ぐ種族の里
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その女海賊、ニャンニャンスイートパラダイス

ロードレオ海賊団の女船長レオパル。

その欲望は根深くも実に単純。

「この部屋にしても……何? なんだかとっても……ファンシー?」

【つうか、よく見たらレオパルの横にいる女二人って、いつぞや攫われたAランクパーティーじゃないか? なんで自分達からレオパルに寄りかかってるんだ? ……女が女二人にサンドイッチって、どういう光景だよ?】


 せっかく威勢よく踏み込んだのに、眼前の光景でまたしても気が抜けてしまう。ロードレオを相手にしてるとこういう場面が妙に多い。

 私としてはレオパルさんが酷いことをしてる光景を予想してたのに、むしろやってることは真逆。酷いというより甘い。部屋の飾りつけも含めて全部甘い。

 女の人もAランクパーティーのリーダーさんが探してた仲間だし、全然幸せそうで気が抜ける。ちょっと心配してたのに損した気分。


 ――私はいったい、何のためにここまでレオパルさんを追ってきたのだろうか? トトネちゃんのためだけど。


「あぁ? なんや? ウチのスイートタイムは邪魔すんなって、いつも言い聞かせ――って!? ニャホッ!? ま、まさか、そこにおるのは……ミラリアちゃんか!?」

「……うん。久しぶり」

「ニャハハハー! よもや、このニャンニャンパラダイス号にまでやって来るとはの~! ウチに会いに来てくれたんか!?」

「そうと言えばそう。でも、あなたの想像とは違う。断言する」


 しばらく呆気に取られて固まってたけど、レオパルさんもこっちに気付いたみたい。

 私の姿を見るや否や、どこか顔を赤らめながら興奮して言葉を飛ばしてくる。


 ダメ。この時点で無理。やっぱり、レオパルさんだけは受け付けない。

 それと気になるのがこの船の名前。『ニャンニャンパラダイス号』って……何?


「レオパル様~? あんな小娘より~、私達と楽しみましょうよ~?」

「いつもみたいに~、レオパル様のテクで癒してくださいよ~?」

「……あなた達もあなた達。どうして攫われたのに、そこまでレオパルさんに甘えるの?」


 後、Aランクパーティーの女性二人も気になる。ポートファイブで攫われた時は嫌がってたのに、あれから何があったというの?

 すっかりレオパルさんに心を開く――というより、依存してさえいるように見える。レオパルさん、この人達に何したの?


「ウチのテクがあれば、どないなカワイ子ちゃんでもあっちゅう間にウチの虜や! まだまだこのニャンニャンパラダイス号にはカワイ子ちゃんがおるんやが、みーんなウチのマイスイートキャッツや! これぞウチがロードレオ海賊団を作って推し進めとる……『ニャンニャン楽園計画』や! ウチは世界中のカワイ子ちゃんを落としまくって……ウチの楽園を築き上げる!」

「……理解不能が臨海突破して、そろそろ思考放棄したくなってきた」


 レオパルさんは指をワキワキさせて語るけど、これ以上聞いてると耳が腐りそう。Sランクパーティーほどの嫌悪感ではないけど、また違うベクトルで嫌な予感が全身を駆け巡るのだけは分かる。

 私からすれば、魔王軍なんかよりはるかにおぞましい。エステナ教団と違い、人の欲望が間違ったベクトルで暴走した感じ。

 トラキロさんも『灸を据えたい』なんて思うわけだ。レオパルさん、頭おかしい。


 ――『ニャンニャン楽園計画』ってのも何? 自分で自分だけの楽園を創ろうとしてるってこと?


「……もう長話には付き合わない」

「え? まだそないに長いこと話しとらんがな? もうちっとミラリアちゃんともお話して、ニャンニャンでパラダイスな計画への理解を――」

「そんなのいらない。理解したくもない。……それより、トトネちゃんはどこ?」

「な、なんや? 辛辣やし、怒っとるし……。まあ、トトネちゃんってのならあそこに座っとるで。ほれ、部屋の隅のソファーや」


 もうレオパルさんの変態談義は耳にしたくもない。早々に目的を果たさせてもらおう。

 まずはトトネちゃんがどこにいるかだ。身の安全を早急に確かめたい。こんなおかしな空間にいるなら尚更だ。

 レオパルさんもすんなり教えてくれたし、目を向けた先には確かにトトネちゃんがいた。


「ミ、ミラリアお姉ちゃん? 助けに来てくれたのですか?」

「トトネちゃん! 無事だった!? 変なことされてない!?」

「だ、大丈夫です。……むしろ丁重に扱われ過ぎて、コメントに困ってます」

「……そう。とりあえず、無事ならよかった」


 物凄く豪華なソファーに座らされ、特に拘束されたりもせず丁重な姿で。それはそれでいいんだけど、想像と違い過ぎて妙に拍子抜け。

 そういえば、ヤカタさんとネモトさんもトトネちゃんのために美味しいお料理を考えてたんだっけ。こういう細かな気配りが、レオパルさんのニャンニャンな計画を後押ししてるのかも。


 ――どうでもいいけど。考察したくもないけど。


「とりあえず……帰ろっか?」

「は、はい。私もこんなところにいるより、イルフ人のみんなのもとへ帰りたいです……」


 幸い、トトネちゃんはまだレオパルさんに毒された様子がない。もしも毒されてたら危ないところだった。

 これでトトネちゃんが『帰りたくない! レオパル様と一緒がいい!』なんて言い出したら、私もどうすればいいか困惑してた。

 そういう時はかつてのスペリアス様やツギル兄ちゃんみたく『ワガママ言っちゃダメ!』って言えばよかったのかな? それが一番お姉ちゃんっぽい。

 まあ、そんなものは全部杞憂だったわけだ。早速トトネちゃんの手を引き、船の外へと歩み出して――




「……って、待たんかい! せっかく手に入れた長耳キュートなニュースイートキャットを、そない簡単に返すわけないやろがぁぁあい!!」




 ――帰ろうとしたんだけど、やっぱり簡単には許してくれないレオパルさんであった。

ノリツッコミしとる場合か。

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