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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
永き歴史を紡ぐ種族の里
262/503

◇ロードレオ海戦・後編Ⅲ

死中に活を見出し、いざ目的の船へ!

 キンッ――ヒュゥンッ!



「なぬっ!? 剣客小娘が空中から消えたでアリンス!? ど、どこに行ったでアリンス!?」

「こっち! もう遅い!」


 加減した刃界理閃を盾にして、即座に発動させたのはポートファイブなどでも使った揚力魔法。その魔法陣を足場にして急降下し、再び船の上へと即座に着地。

 そのまま縮地を使い、一気に敵との距離を縮める。狙いは上に向いたままだったし、私のことも見失ってくれた。

 ここまで来れば問題ない。踏み込みと共に魔剣を抜き、居合でガトリングガンを横一閃。



 ズパァァアンッ!!



「ひ、ひいぃ!? ガ、ガトリングガンが!? 結構費用がかかったのにでアリンスゥウ!?」


 これにて、ガントリングガンによる猛烈連射も終了。厄介な兵器さえなくなれば、幹部さん一人はどうってことない。

 今回はライフルも持ってないみたいだし、納刀した魔剣を鞘ごと突きつけて勝利宣言だ。


「もうあなたは戦えない。攫われたトトネちゃんは一番奥の船にいるって聞いたけど、間違いないの?」

「そ、それはそうでアリンスが、どうしてそのこと――って!? ヤ、ヤバいでアリンス!? あの人、またアレをやって来たでアリンスゥウ!?」


 少し情報確認しようとするも、幹部さんは両手を上げながら大慌てで船内へと逃げ込んでしまう。

 この状況、さっきも見た。やっぱり、この一帯では油断も何もありはしない。



 ヒュゥゥウン ヒュゥゥウン



【砲弾だ! また飛んで来たぞ! 思った通り、一番奥に見える船からだ!】

「ッ……! 本当に手厳しい……! でも……負けない! ここまで来たら、全身全霊で突破するのみ!!」


 後ろを振り向けば、予想通り砲弾の雨がこちらへ降り注いでくる。いくら味方の船が大丈夫だからって、無茶苦茶なことをするもんだ。

 やっぱり発射音は聞こえなかったけど、この戦況にも慣れてきた。あの船こそ目指すべき場所だし、向こうが無茶するならこっちも多少の無茶で押し通す。


「揚力魔法陣! 草履の裏に展開!」

【ミ、ミラリア!? 何をする気だ!?】

「ちょっと危ないけど、ツギル兄ちゃんは我慢してて! あの砲弾を掻い潜って、一気に船の上まで飛んでみせる!」


 足裏にくっつける形で揚力魔法陣を展開させ、今度は向かってくる砲弾を回避するのではなくこっちから飛び掛かる。

 かなり危険で無茶なことをするけど、一番奥の船まではまだ遠い。船上での攻撃が怯んだ今、ここで勝負に出るしかない。


 ――砲弾の雨にしたって、上手く利用する手段はある。



 タンッ――ドカァンッ!!


 タンッ――ドカァンッ!!



【ほ、砲弾を足場にしてるのか!? 随分と無茶するが、ミラリアの身体能力があってこそできる芸当か!】

「後、魔剣であるツギル兄ちゃんの力も! 二人で絶対、トトネちゃんを助け出す!」


 足裏の揚力魔法陣を利用し、砲弾から砲弾へジャンプ。爆発するギリギリで飛び移れば、足場として利用することもできる。

 目指すべき船から放たれてるのは確かだし、乗り継いでいけば辿り着ける。まだ遠いけど、距離は確実に縮まってる。


【……って、砲弾が収まったぞ!? これじゃ足場にもできない!?】

「くうぅ……仕方ない! もう一度水中へ!」


 ただ、敵もそう簡単に辿り着かせてはくれない。こっちの目論見に気付いたのか、砲弾の発射を止めてしまったようだ。

 発射音がないからタイミングも掴みづらい。気付いた時にはもう足場用の砲弾はなくなってたし、この手はもう使えない。

 急な対応の連続だけど、まだ海を泳いで辿り着く方法だってある。焦ってしくじる真似はしたくない。



 ザブゥウンッ!


 ゴォォオオッ!!



「ッ!? またさっきの水中爆弾!?」

【奥の船から向かってくるぞ!? 誰だか知らんが、完全に狙ってやってるみたいだな!】


 もちろん、海へ入れば今度は水中爆弾の脅威が襲ってくる。まるで私が潜るのを予期していたように、何発もこちらへ突っ込んでくる。

 水中であんなものに当たれば一発アウト。敵も考えてチャンスを掴み取ろうとしてくる。


 ――でも、私だって負けない。奥の船まであと少しなんだ。


「水中での回避も限界が近い……! なら、またちょっとだけ無茶する!」

【本当に無茶してくれるな! だが、今はそれでいい! 気持ちで押し負けるんじゃないぞ!】


 いくら泳ぎが上手くなったとはいえ、水中での勝負は荷が勝る。距離もだいぶ縮まってるし、残りは水上で魔剣も使って挑ませてもらう。

 水面から飛び上がりながら、再度足裏に揚力魔法陣を展開。これは初めてやる技だし、さっきの砲弾とは事情が違う。


 ――だけど、やるしかない。気持ちで押し負けず、自分を信じて足を前へ運ぶ。



 パシャシャシャシャッ!



【水面を走ってるのか!? こんなことまでできるようになったとはな!】

「あ、あんまり長続きはしない! でも……あと少し……!」


 砲弾を足場にしたのと同じ要領で、今度は水面を足場にして猛ダッシュ。縮地の足運びを限界まで維持し、揚力魔法陣の効果も合わせて沈む前に足を前へと踏み出す。

 一応上手くいったとはいえ、そこまで長い距離は走れない。少しでも気を抜けばまた沈み、水中爆弾の脅威にさらされる。


 だけど、本当にあと少し。あと少しで船まで――



 パシャァァアンッ!!



「ハァ、ハァ……! の、乗れた……!」


 ――辿り着くことができた。

 かなり疲れたし限界だった。息だって完全に上がってる。

 それでもようやく最奥にある船へと飛び移れた。ここにトトネちゃんがいるはずだし、まだ気は抜けない。

 この船にしたって、どれだけの敵が待ち構えているか分からない。




 ブォォオンッ!!



【ッ!? ミラリア、前!】

「ッ!? 砲弾!? 斬る!!」



 キンッ――ドガァアンッ!




 油断せずに正解だった。思った通り、ここにも誰か待ち構えてる。

 突然砲弾で襲い掛かって来たけど、即座に居合で真っ二つにして回避。背後で爆風を感じながらも、視線は前方へ向ける。


「……やっぱり、あなたもここにいたんだ。それにしても、さっきの砲弾は……!?」

【た、大砲なんてないし、まさかあいつが自ら……!?】


 何より、ここまで戦ってきたロードレオ海賊団の中に、もっとも注意すべき二人の姿はなかった。そのうちの一人は眼前で何かを投げ終えたように構え、私の方を睨んでくる。

 相変わらずグラサンとやらで目元は見えないけど、その半裸ルックとパワフルな肉体から嫌でも思い出す。


 ――かつて私も一度戦い、苦戦を強いられた強敵だ。




「チィ、下っ端連中どもが焦りやがってよォ。まァ、テメェの相手は三下には厳しいかァ。やはり、オレが直接手を下すしかねェなァ。砲弾のドッヂボールもしまいだァ……!」

「ト、トラキロさん……!」

これまでは小手調べ。ロードレオ海賊団最高戦力の一人、副船長トラキロ出陣!

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