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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
永き歴史を紡ぐ種族の里
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◇ロードレオ海戦・後編Ⅱ

味方の船ごと狙う砲撃まで飛んでくる大海戦勃発!

 後ろを振り返れば、私達のいる船目がけて飛んでくる大量の砲弾。大砲については私もディストールで知ってたけど、何かがおかしい。

 大砲って、爆発の力で弾を飛ばす武器だったはず。発射時にはかなり遠くでも聞こえる爆発音が響くものだ。


 ――なのに、今襲ってくる砲弾の発射音など聞こえなかった。かなりの数が飛んできてるのにだ。


「ともかく、あれは逃げないとマズい! ライフルみたいに弾けない!」

【まさか、味方の船に撃ちこんでくるかよ!? 連中は船内へ退避したみたいだし、耐えられる算段なのかもしれないにしてもだぞ!? い、いったんもう一度海中に逃げろ!】


 今は『発射音が聞こえなかった』理由を考えてる場合でもない。砲弾の雨はそこまで迫ってるし、船内への扉も閉じられている。

 ならば逃げ道は一つ。再度ツギル兄ちゃんの力も借りて、海中を泳いで回避するしかない。



 ザブゥウンッ!


 ドガァァアンッ! ドガァァアンッ!



「あ、あの人……無茶苦茶しますね……。確かにウチの船は頑丈だから、多少の砲撃で沈みはしませんが……」

「とはいえ、これぞ好機でアリンス! 魚雷次弾装填! 海に潜った小娘を再度狙うでアリンスゥゥウ!」


 砲弾の雨は海中へ潜って回避できても、脅威そのものはまだまだ続く。わずかに海面から聞こえてくるのは、再び水中爆弾で私を狙おうとする幹部さんの声だ。

 この水中爆弾があるから、海中だって安全とは言えない。どこもかしこも敵だらけで、息つく暇もない。今は魔法効果で水中でも息できるけど。


「ど、どうすれば先に進めるんだろう……!? このままじゃ、トトネちゃんまで辿り着けない……!?」

【さっき砲弾が飛んできた船だが、かなり奥の方にあった。もしかすると、あの船こそがトトネちゃんのいる船かもしれない。どうにかあそこまで辿り着きたいが、ここまで攻撃の嵐が来ると……!?】


 素早く泳ぎながら水中爆弾を回避しつつも、先へ進む事さえままならない。

 いくら水中で息が続くとはいえ、あまり長く潜ってると水温で体力を奪われる。魔法効果にだって限度がある。

 ツギル兄ちゃんも周囲を伺い、目指すべき方角は確認してくれてる。とはいえ、そこまでがとにかく遠い。

 水中でも水上でも進むのが厳しい以上、どちらか一つを強行突破する他ない。


「水上で勝負する! 砲弾の雨は怖いけど、戦う分には都合がいい!」

【ああ! とにかく少しずつでもいいから前へ進め! 海で身動き取れなくなるよりマシだ!】


 そんなわけで、選んだのは水上で砲弾やロードレオの船員を掻い潜るルート。現状、水中だと常時体力を消耗するリスクが大きい。

 水上とて安全とは程遠いけど、戦える分だけマシ。逐一悩んでる場合でもない。



 ザブゥゥウン!



「こ、この剣客小娘!? トビウオみたいに泳ぐでアリンスね!? だが、ここで終わりにしてやるでアリンスゥウ!!」

「ッ!? また幹部に……また新しい兵器!?」


 再度水面から飛び上がり、近くにあった船へ着地。目指す船はまだ遠いけど、少しずつ近づいてはいる。

 ただ、眼前にすぐさま迫るは新たな脅威。幹部さんが何やら取っ手のついた大砲のようなものをこちらへ構えている。

 でも、大砲じゃないのだけは分かる。大きな穴が一つではなく、たくさんの穴が円を描くように並んでるけど――


「ロードレオ海賊団最新銃火器ガトリングガンでアリンス! こいつで……蜂の巣にしてやるでアリンスゥゥウ!!」



 ドガガガガッッッ!!



「こ、この弾幕は!?」

【どんな連射速度だよ!? ミラリア! 刃界理閃だ!】


 ――どういう武器か考えてる間もなく、幹部さんが取っ手をグルグルすると大量の弾がこちらへ飛んでくる。

 ライフルと違い、とにかく連射速度が速い。穴もグルグル回ってるし、これまでとはまた別系統の兵器みたい。


「こいつは使う分にもコストやリスクがかさむでアリンス! たかが剣客小娘一人に贅沢だとは思うでアリンスが、存分に味わうでアリンスゥウ!」

「ぐうぅ!? じ、刃界理閃でも守りが追い付かない……!?」

【他の船員の姿は見えないし、完全にミラリア一人を標的に絞ってきたか!? 動きも交えて回避するんだ!】


 幹部さん以外の人が船の上にいないのは、このガトリングガンという兵器を使うためなのだろう。性能が圧倒的な分、巻き添えを警戒して他の人は退避させたっぽい。

 そのため、狙いは完全に私一人へ絞れる。船自体は頑丈みたいだし、手当たり次第に容赦なく乱れ打ちも可能。


 ――相手が一人とはいえ、こんな兵器まで用意してくるとは。これがあるからロードレオ海賊団は恐ろしい。


「な、なんとか凌ぐ道は……!?」

【ッ!? そ、そうだ! ミラリア、一度高く飛び上がれ! 奴の狙いを上へ向けて隙を作るんだ!】

「ふえ!? でもそんなことしたら、私だって空中で身動き――あっ、そうか!」


 ひたすら船の上で刃界理閃による盾と回避を続けるも、敵の弾が切れる気配はない。接近さえも許されない。

 どうにかこの場を凌がないと先へも進めないけど、こういう時こそツギル兄ちゃんの頭脳が光る。

 本来ならば飛び上がって上へ逃げても、空中だからこっちも回避できなくなって危険。でも、それは『空中で自由に動けない』からこそ起こる事態。


 ――空中で軌道を変える術があれば、逆にチャンスを作ることだってできる。



 ヒュンッ



「空中に逃げたでアリンスか!? 無駄でアリンス! むしろ隙だらけで……今度こそ蜂の巣でアリンスゥゥウ!!」


 私が飛び上がれば、狙い通り向こうも照準を上へ向けてくる。

 そこからすぐさま連射を再開するけど、上下に照準を変えるのは少し時間がかかるみたい。三次元的な戦いとなれば、どんな兵器でも簡単には対応できないか。

 それさえ確認できれば十分。まずは再度迫る連射への対応が一手目。


「刃界理閃! 威力ほどほど!」



 ガキキィィインッッ!!



「まーた斬撃の盾でアリンスか!? それで一時的に凌いでも、ガトリングガンの連射は終わらないでアリンスよぉぉお!!」


 この刃界理閃は牽制的な意味合いが強い。私自身がここからさらに動くだけの余裕ができればいい。

 まだまだ攻撃は続くみたいだし、空中にいる私は格好のマトにも見えるのだろう。普通ならば。


 ――だけど、空中でさらに動く手段は用意してある。




「ツギル兄ちゃん! 揚力魔法を!」

【任せろ! 一気に回り込めぇぇえ!!】

最新兵器相手でも、ミラリアとツギルは一歩もひかない!

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