その冒険者、仲間のために
かなり久々の登場だけど、ミラリアもなんとか覚えてた。
「ど、どうしてあなたがここに……!?」
「ちょっと俺の個人的な都合で、Sランクの連中を探ってたのさ。……だが、結果はこのざまだ。見つかって返り討ちに合い、あえなく俺も奴隷として商品にされるところだった。そこを助けてくれたことにも感謝してる。当初は色々あったが、流石の俺も嬢ちゃんには頭を下げるほかねえな」
意外なことに、トトネちゃんやノムーラさんと一緒に捕らえられていたのは私の知ってる人だった。
かつてポートファイブであれこれ言われ、いざこざもあったAランクパーティーのリーダーさん。そういえば、闇瘴を浄化した後どうなったかは知らなかった。
様子を見る限り、あの時の後遺症などはないっぽい。どこかバツが悪そうに目線を逸らしはするけど、当時や今回のことでお礼も言ってくれてる。最初に会った時が嘘みたいだ。
それにしても、まさかこんなところで再会するとは予想外。思わず驚き、お口をあんぐりさせちゃう。
「思わぬ結果だけど、あなたも無事で何より。でも、なんでまたSランクパーティーを追ってたの?」
「あの連中、世間ではそれなりに名が通ってるが、俺らみたいにランクが近いと悪い噂も目立ってな。人攫いの噂もあったし、その関係で俺が追ってる連中にも繋がると思って調べてた」
「冒険者の世界も色々なんだ。それで、あなたは何を追ってたの?」
頑張ってお口を戻し、話を本題へと戻す。どうやらこのリーダーさん、Sランクパーティーの足取りを辿ってたみたい。
今回は嫌味も言われないし、私への態度も柔らかい。素直に話を聞いて問題ないだろう。むしろ、こっちも聞きたいことがある。
トトネちゃんを攫った人達の正体も知ってるみたいだし、Sランクパーティーのリーダーさんなんかよりよっぽど信用できる。
その辺りについては是非とも耳にしたい。
「俺が一番追ってたのは……ロードレオ海賊団だ。……そして、嬢ちゃんの言う長耳の少女を攫ったのもロードレオ海賊団だ」
「ふ、ふえっ!? ロードレオ海賊団!? またなの!?」
すんなり教えてもらえたんだけど、内容についてはどこかジットリ。まさかポートファイブやカムアーチからも遠く離れたこの地で、あの人達の名前を聞くとは思わなかった。
ペイパー警部と一緒にランさんを助け出したのも、パンティー怪盗レオパルさんを撃退した時のことも、今思い出すと懐かしく感じるほど前の話。なのに、思い出そのものは鮮明に蘇ってくる。
――それぐらいインパクト強すぎ。
「攫われた仲間を助け出すため、俺はどうにかロードレオ海賊団の足取りを追ってたんだ。その中で同業をしてるSランクの連中との接点もかすかに見えたんだが……まさかその矢先に捕まり、ロードレオが横取りに動くとは予想外だ」
「ロードレオ海賊団というのはパサラダにも悪名が届いている。さっきの四人と違い、人数も戦力も桁が違う。この倉庫へ乗り込むや否や、まるで稲を刈り取るように素早く長耳の少女だけを攫っていった。俺達には目もくれなかったし、あまりの手際に介入することさえできなかった……オーマイ、ヘルシー!」
「つ、つまり、ロードレオの狙いは最初からトトネちゃんだった……!? こ、これ……大変なことになったかも……!?」
リーダーさんやノムーラさんの話を聞くと、嫌な予感がどんどんこみ上げてくる。
直感だけど、ロードレオは別に『イルフ人が狙いだった』わけじゃない。言うなれば『トトネちゃんが狙いだった』といったところか。
Sランクパーティーがイルフ人を狙ってる情報をどこかから聞き出し、まさしく漁夫の利として私が戦ってる最中にトトネちゃんを誘拐。イルフ人だからとか巫女さんだからとか関係なく、トトネちゃんがかわいいからこそ攫っていったんだ。
――その目的は一つ。船長レオパルさんの変態思考のためだ。
「た、たた、大変! は、早くロードレオ海賊団を追って、トトネちゃんを助け出さないと……!?」
「動揺する気持ちは分かるが、連中はとっくに船で沖合まで逃げた後だ。俺だって仲間が攫われたままだし、やすやすと見逃すつもりはねえが……」
「一応、この港にも船はあるようだ。おそらくは四人組が使っていたものだろうし、使えなくはない。とはいえ、ロードレオの海賊船とやらははるかにスピーディー、ヘルシー。とても追いつける速度じゃない」
私も一度はその毒牙にかかりかけたし、より鮮明なイメージが脳裏に浮かんでくる。きっと今頃、トトネちゃんはレオパルさんにアレコレされて怯えてるに違いない。
アレコレな経験ってよく分かんないけど、少なくとも良いことではない。カムアーチでレオパルさんから感じ取った脅威が第六感を刺激し、とてつもない動揺を引き起こしてしまう。
すぐに助け出さないといけないけど、ロードレオの海賊船は確かに速い。今から追いつけるかは――
【……おい、ミラリア。すぐにでも箱舟に戻るんだ。箱舟ならば、ロードレオにも追いつける】
「ッ!? そ、そうか!」
――そう焦りながら悩んでると、ツギル兄ちゃんが小声でアドバイスしてくれた。
そうだった。私達がここへ来るために使った箱舟には、ロードレオの海賊船と同じブースターという機能がついている。
あれなら追いつけるかもしれない。考えてる暇もないし、すぐにでも長老様にお願いしよう。
「私、これからロードレオ海賊団を追う。協力してくれる人に心当たりがある」
「だ、だったら、俺も連れて行ってくれねえか!? 攫われた仲間の二人を助け出すためにも――」
「それはダメ。協力してくれる人、私以外の人には億劫。おまけにロードレオ海賊団はSランクパーティーより強敵だし、Aランクパーティーのリーダーさんでは荷が勝る」
「い、言ってくれるが、確かにその通りか……。分かった。同行するのは諦める」
まだトトネちゃんを助け出せるチャンスはある。相手が超絶変態船長率いるロードレオ海賊団でも諦めるわけにはいかない。
私はトトネちゃんのお姉ちゃん。可愛い妹が大変な目に遭ってるのに、見捨てたらお姉ちゃん失格だ。
「ただ、待ってるのは性に合わねえ。俺の方でもSランクどもの船を準備して、後から追わせてもらう。そこからは自己責任でやらせてもらうさ」
「口惜しいが、俺ではあまりに敵が強大でハイカロリー、ヘルシー! おとなしくパサラダへ帰り、畑を耕しに戻る!」
「……判断は賢明だと俺も思うが、逐一変な表現の多い奴だ。『ハイカロリー』で『ヘルシー』って何だよ……」
Aランクのリーダーさんやノムーラさんともここでお別れ。イルフ人のこともあるし、一緒とはいかない。
リーダーさんはまた後から来そうだし、できることなら私で先に決着をつけておきたい。とはいえ、相手はあのロードレオ海賊団。
――激戦は必至。再度覚悟を決めて大海原を目指そう。
ついに動いた最恐最悪! その恐ろしさ……魔王軍を超える!(別ベクトルで)




