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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
永き歴史を紡ぐ種族の里
252/503

◆代理霊兵デプトカミヤスⅡ

それは、紛れもなく……奴さ!

 ジャカジャカジャン、ジャッジャ~ン! ジャカジャカジャン、ジャッジャ~ン!



「ふえっ!? こ、この音楽、まさか……!?」

【な、なんでこのミュージックが……!?】

「なっ……馬鹿な!? あいつも一緒に捕らえていたはずだろう!?」


 私達の戦いの途中にどこからともなく流れてくるのは、あまりに不釣り合いなメロディー。死闘の最中だというのに、思わず耳を傾けずにはいられない。

 この音楽は私もツギル兄ちゃんも知ってる。リーダーさん達だって一度は耳にしてる。


【な、なんだい? こんな音楽、どこから流れてるんだい?】

「ど、どこだ!? まさか、逃げ出したのか!?」


 カミヤスさんは初めてだけど、唐突過ぎて動揺してる。私へ襲い掛かることも止めてしまう。

 ただ、動揺してるのはSランクパーティーも同じ。戦いの手が止まったことよりも、音楽が流れてくる場所を探すことに意識が向いてる。


「あっ! あの物陰からよ!」

「よく分かんないけど、私の魔法でとっちめてあげるわよ!」


 そして、音楽流れる場所についても突き止めた模様。Sランクパーティーがいる高台近くの物陰から聞こえてるらしく、ウィザードさんが魔法で仕留めようと詠唱を始める。

 私にも何が何だか分からないけど、このままではマズい。あの人があそこにいるならば、このままやられてしまって――




「残念だったな! そっちの音楽は囮だ! トラップ、ヘルシー!!」



 ヘルシィィイッ!!



「ガホッ!? う、後ろから!?」




 ――などと心配してたけど、なんと当人はSランクパーティーが目を向けた先の逆方向からキックでダイブ。完全に不意を突いた形となり、リーダーさんの背後へ見事命中。

 どうしてここにいるのか知らないけど、今の一撃は実に見事。まさにヘルシーであった。


「ノムーラさん!!」

「違う! 今の俺はキャプテン・サラダバーだ! 何やらピンチだったようだが、まさに『窮地にヘルシー』であったか! アホ毛の少女よ!」


 そんな不意打ちを成功させた人物こそ、パサラダで観光名物のノリが行き過ぎてしまったどこか痛い緑の男性――ノムーラさんだ。

 どうやらテーマソングの流れる箱を囮に使い、背後からの奇襲を成功させたらしい。意外とせこいと思えど、これはまさに千載ヘルシーのチャンス。


 ――私も流されるままだけど、この機会を逃さない手はない。


「縮地! ツギル兄ちゃん、狙い変更で!」

【分かってる! まさか、このタイミングで連中に隙ができるとはな!】


 ノムーラさんの唐突な乱入により、場の空気は乱れた。カミヤスさんもだけど、何よりSランクパーティーの意識が完全にノムーラさんへ逸れてる。

 動揺だってしてるし、やるなら今しかない。そもそもこの人達さえどうにかできれば、カミヤスさんも無理に戦わされなくて済む。

 縮地で一気にSランクパーティーへ接近するだけの隙はできた。さっきまで戦ってたカミヤスさんには目もくれず、目指すは高台にいる四人。




「いい加減、これで終わりにする。……斬り捨て御免!」



 スパァァァアンッッッ!!



「ガハッ!? し、しまった……!?」

「俺らSランクパーティーとしたことが……!?」

「でもまさか……!?」

「四人同時に……!?」




 勢いもそのままに、魔剣を抜刀してシンプルな居合一閃。とはいえ、隙だらけならこれでも十分すぎる。

 一太刀で四人へ突っ込み、斬り抜けて背後へ回りながら納刀と残心。手応えからも完全に決まった。背後で崩れ落ちる声や音も聞こえる。

 まだ生きてはいるけど、もうこれで戦えない。振り返ってみれば、完全に倒れ込んで意識を失ってる。

 この人達、Sランクとか呼ばれてても魔王軍よりは大したことなかった。まあ、逃げ出したのだから当然と言えば当然。


【こ、これって……もうオイラ、戦わなくて大丈夫なのか……?】

「うん、大丈夫。この人達さえいなくなれば、トトネちゃんが危険に晒されることはない」

【あ、あぁ……! ありがとよぉ……! アホ毛のちびっ子……!】


 とはいえ、これにて窮地は脱した。カミヤスさんも戦わなくていいと理解すると、さっきまでの鉄ドラゴンの姿を崩していく。

 そして中から姿を見せるのは、いつものタケトンボ姿。やっぱり、カミヤスさんってこっちの姿の方が印象強い。まだ短い付き合いだけど、無理矢理喧嘩させられるのだって嫌。

 一時はどうなることかと思ったけど、まずは無事で何よりだ。


「ハッハッハー! アホ毛の少女は本当に強いな! これは俺もパサラダを守る愛と正義と野菜の戦士として、君に感謝を送らねばなるまい! グッドラック、ヘルシー!」

「うん、ヘルシー。ノムーラさんも隙を作ってくれてありがとう。……それはそれとして、どうしてここにいるの?」

「だから、今の俺はキャプテン・サラダバーで……もういいや。こっちも助けてもらった側だし、しつこくは言えないか」


 ノムーラさんについても問題ないらしく、テーマソングの流れる箱を手に取りながら近寄ってくれる。

 その際に白い歯をキラキラさせながら、親指を立ててグッドなポーズでねぎらってくれる。名前についてあれこれ注文も入るけど、私としては『ノムーラさん』の方が呼びやすい。『キャプテン・サラダバー』は長い。

 そもそもこの人、どうしてここにいるんだろう? この人のおかげで上手くいったけど、まず重大な理由が見えてこなくて――




「……実は君と森で離れ離れになった後、この連中に捕まってた。俺一人じゃどうにもならん。……ロンリー、ヘルシー」

「……そう」

やってることがせこいし、そもそも居合わせた理由も情けない。

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