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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
始まりの村と追及の王国
25/503

その村、窮地に立たされる

さあ、地獄を始めましょう。

「結界支柱? それって何?」

「エ、エスカぺ村の周囲に張り巡らせた結界を維持する装置だ。これがある限り、外敵からエスカぺ村を守ることができていた。だが、これが壊されてしまった今は……!?」


 ツギル兄ちゃんと一緒に壊れた柱を眺め、それが村の結界を作っているものだってことも分かった。そのことを語るツギル兄ちゃんの表情は酷く青ざめてて、さっきの怪物相手でも見せなかった怯えてる。

 でも、話を聞いて私も理解できてきた。今のエスカぺ村は私がいた時と違い、結界で守られていない。

 それは内からも外からも同じ。誰も出入りできてしまう。


 ――なんだか、嫌な予感がしてくる。




「ッ!? ツギル兄ちゃん! あっちの方角、煙が上がってる!」

「あの方角はまさか……エスカぺ村か!?」




 そんな嫌な予感を加速させるように、ある方角から黒煙が伸びているのが見える。間違いない。エスカぺ村からだ。

 もう嫌な予感なんかで終わらない。とにかく怖い。最悪の可能性が私の頭の中で想起されてしまう。



 ダッ!



「お、おい!? ミラリア!?」


 こうなってくると居ても立っても居られない。ツギル兄ちゃんを置いて、一人で森の中を突っ走る。

 縮地によって最高速度で駆け、煙の出る方角だけに目を向ける。

 結界は私が村から逃げ出す対策以外に、外敵を拒む役目を担っていた。それがなくなったのだから、何が起こっていてもおかしくない。

 とにかく、頭の中で浮かんだ最悪の可能性だけでも逃れてくれてればいいんだけど――




「な、何……これ……? エスカぺ村が……燃えてる……?」




 ――私の淡い希望は虚しく散った。辿り着いた先で目にしたのは、確かに私の生まれ故郷。でも、その光景は見たことがないもの。

 村中から火の手が上がり、立ち込める黒煙。見慣れた家屋も焼け落ち、見る影などなくなっている。


 ――それどころか、ところどころに見える倒れる人達。微動だにしないし血も溢れてる。とても生きてるとは思えない。


「な、なんで……? 誰がこんなことを……?」

「グゴォォォオオ!!」

「えっ!? あ、あれって……デプトロイド!? し、しかもかなり大きい!?」


 あまりの絶望に打ちひしがれていると、この事態を引き起こした犯人の姿が目に入る。

 黒煙で見えづらかったけど、そのサイズはオークロプスと同じぐらい巨大。そいつらが何体もいる。

 何より、私はその姿に見覚えがある。


 ――ディストール王国のお城の地下にあった隠し部屋。そこに眠っていたデプトロイド達だ。

 そいつらが村の中を蹂躙し、おまけに口からは炎まで吐き出している。私が戦ったのとは別物だ。


「ど、どうして……? どうしてディストール王国のデプトロイドがここに……?」

「ふむ。君は悪運も強いものだ。だが、それもここまでか。おとなしくあの洞窟から出ずにいれば、こうして巻き込まれることもなかったのにね」

「えっ……!? そ、その声……まさか……!?」


 思わず頭で拒絶しそうになるけど、こうなってくるとエスカぺ村を襲った犯人は絞られてくる。それぐらいは馬鹿な私でも分かる。

 デプトロイドはディストール王国の所有物。ならば、先導してるのはディストール王国以外にありえない。

 結界支柱を破壊し、結界の内側に大量の兵力を送り込んできたんだ。


 そして、後ろから私に語り掛けてくる声で全部が繋がっていく。この人は私のことを用済みとでも言わんばかりに切り捨てた人だ。

 最初に会った時は信用してたけど、今はもう信用も何もない。恐る恐る振り向いてみれば、私が想像した通りの人が兵を率いて立っていた。


 ――今までの優しさなどなく、完全に私を嘲笑するような表情をしながら。




「もう少し君が素直に従ってくれてれば、こんな光景を見る必要もなかっただろうにね」

「レ、レパス王子……!?」

ついに本性を現した王子様。

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