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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
永き歴史を紡ぐ種族の里
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その長老、少女の話を聞く

見た目は若い男性の長老様。いよいよ、イルフ人の核心へ迫る。

「あなた、本当にイルフ人の長老様? 長老って、お年寄りじゃなかったの?」

「私がイルフ人の長老で間違いないよ。まあ、人間の世界の感覚からすると不思議かもね。こう見えて、君達よりはるかに高齢でもある」

「……腰、大丈夫?」

「高齢と聞いて気遣ってくれたのだろうが、肉体に関しては見た目相応でね……。別に腰を痛めるほど弱ってはいないよ……」


 トトネちゃんに案内されて姿を見せたのは、この里を治めるイルフ人の長老様。でも、全然長老様って気がしない。

 スラリと背が高くて、凄く綺麗で整った容姿をした成人男性。シード卿を一回り成長させた感じの人。

 確かに耳は長いし、高貴な感じもするからイルフ人の長ではあるのだろう。


 ただ、年齢は見た目不相応に高いらしい。つまり、この人もスペリアス様と同じで若作りが得意なのかも。

 そう思って腰の心配をするも、余計なお世話と一蹴される。スペリアス様だって、見た目は若く見せて腰はおばあさんだったし。


「ミ、ミラリアさん。長老様に失礼ですよ?」

「いや、構わんさ、トトネ。……それより、君は確かミラリアだったね? そして、腰の刀に宿るツクモはツギルだったか? トトネより少し話は聞かせてもらった」

「名前は合ってる。でも、ツギル兄ちゃんはツクモじゃない。今は魔剣だけど、元々は人間」

「……そうか。それはこちらも失礼した」

「こっちこそ、腰の心配をしてごめんなさい」

「……そこを謝られても反応に困る」


 トトネちゃんも間に入りながら、私達はそれぞれ床の上に座って話を進める。思えば、こうして床に直接座るのって久しぶりかも。

 エスカぺ村では普通だったけど、外の世界では基本的に椅子とかソファーだ。こんな時だけど、なんだか懐かしい。


 ――今の長老様みたいに呆れ顔を向けられるのはいつものことだけど。


「なんでも、君達は我々イルフ人を探してこの森へ来たそうじゃないか? また何のために? 近くのパサラダという村に住む者でさえ、この森へ闇雲に立ち入るのは控えているのだが?」

【あっ! 長老様! そういえばこいつらがいた近くで、森が火事になったみたいでい! おそらくこいつらも、たまに出るイルフ人狙いの人間だい! 森に火をつけて炙り出そうとしたに違いない!】

「カミヤスはしばし黙っておれ。もし仮にこの者が人攫いだとしたら、奇妙な話だってあるだろう? 人の世で我らは『森の民』や『精霊を讃える種族』としか呼ばれていないのに、この者は『イルフ人』という固有の名称を知っていた。相違点がある以上、下手な疑いは妨げになる」

【す、すんませんやい……】


 見た目こそ若い男の人だけど、流石は長老様と呼ばれるだけのことはある。相変わらずどこかこちらへ突っかかるカミヤスさんに対しても、落ち着いた物腰で戒めてる。

 ただ、話の内容としては私のことを何か疑ってる感じもあるにはある。森が火事になった件は別としても、私がここまで辿り着いたことが不思議みたい。


「ミラリア。君は何故、我々イルフ人の名を知っている? どこで知った? トトネが助けた相手に無礼は承知だが、私も長として知るべき立場にある」

「成程、疑われても仕方ない立場ってのは理解した。だから、私も正直に全部話す。長くなるけど……いい?」

「ああ、構わん。是非とも君がここへ至った理由を存分に語ってくれ」


 だからこそ、お互いに話し合いが必要という判断。実に合理的で同調できる。

 長くなってもいいみたいだから、時間をかけてでもしっかり語ろう。


 私が住んでたエスカぺ村のこと。イルフ人の存在を知ったエスターシャ神聖国でのこと。

 楽園を目指すために旅をしており、その中で魔王軍とも戦ったこと。カラクリやゲンソウといったエデン文明の手掛かりも追ってること。


 ――とにかく頭に浮かぶ限りのことを話し、長老様やトトネちゃんも聞き耳を立ててくれる。


「後、最近食べた中ではパサラダのピッツァが美味しかった。それと、ロードレオ海賊団は危険。トトネちゃんもパンティーを盗まれるかも」

「そ、その辺りの話はおそらく不要だな……」


 まだまだ話せることはあるけど、長老様もいったんはここまでと制してくる。私としてはロードレオ海賊団の危険性をもっと伝えておきたかったんだけど。

 だってあそこのレオパルさん、トトネちゃんみたいな女の子のことを絶対に狙ってきそう。命の恩人でもあるし、見つかったらパンティーどころか攫われて海まで連れてかれないかと心配。


 ――ここ、森の中だけど。ロードレオは海賊だけど。


「まだ断片的とはいえ、全体像は見えてきたか。つまり君は楽園を目指すため世界中を旅し、そのヒントを得るために我々イルフ人を探していたと?」

「うん、そういうこと」

「そして、君の故郷エスカぺ村にもイルフ人が住んでいた。タタラエッジにもその手掛かりがあったため、パサラダ西にあるイルフの隠れ里を目指すことができたと?」

「流石は長老様。その通り」


 私の話はそれなりに長くなったけど、長老様は要点を抑えてこちらの真意を理解してくれる。やっぱり、人の上に立つ人は違う。

 魔王のゼロラージャさんにしてもそうだったし、理解できる力はとっても大事。私ではとても及ばない。


「……なら、ミラリア。私から君へいくつか質問したい。さっきの話を深堀する形でね」

「私もそれがいいと思う。頑張って答える」

「その気持ちはありがたいものだ。なら、まずは――」


 長老様はそこからさらに理解を深めるため、私へ質問もしたいみたい。こっちも話を聞いてもらってる以上、相手の話も聞くのが礼儀。

 何の話か知らないけど、しっかり正直にお答えしよう。こんなところで嘘をつく意味もない。




「君は……『ドワルフ』に『エフェイル』というイルフ人を知ってるかい? もしかすると君の故郷に住んでたイルフ人こそ、その二人のことじゃないかい?」

この長老様何歳だよ。

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