その少女、滝つぼ急転直下
ミラリア&ツギル。絶体絶命大ピンチ!(毎度の如く)
爆弾の爆発で焦りそうになるけど、こういう時こそ冷静になるべき。森へ広がる火も消さないといけないけど、まずはここを乗り切るのが大事。
そう思って爆風に乗せられて吹き飛んでるんだけど、流石にちょっと冷静になれない事態になったかも。
私とツギル兄ちゃんが吹き飛んだ先に見えるのは――
「……ねえ!? 滝って、あんなにゴーゴーなってるの!? あれって、落ちても大丈夫!?」
【いや! とても大丈夫に思えない! 泳げる泳げない以前の問題だ!】
――川の先にあるとっても大きな滝。かなりの高さだし、下の方では物凄い水しぶきが上がってる。
音も凄いし、まるで全てを飲み込むような水流。流石の私もあそこへ飛び込んで大丈夫とは思えない。
エスカぺ村水泳大会覇者であろうとも、あんな激流は許容範囲外。滝って初めて見たけど、こんなに怖いものなんだ。
――もうじきそこへ飛び込みそうだけど。
「は、早く、転移魔法で……!?」
【こんな吹き飛ばされながらで使えるのか!?】
「無理!」
【だろうなぁぁあ!!】
爆風をまともに浴びた上、空中をヒューンとしながらでは居合が使えない。つまり、脱出のために転移魔法も使えない。
体の自由も利かないし、体勢を立て直すこともできない。滝が見えてようやく慌てるけど、時すでに遅しといった状況。
――これ、ツギル兄ちゃんを引き寄せない方がよかったかな? 巻き添えにしちゃった。
「お、落ちる! とりあえず、息止める! ツギル兄ちゃんも空気をたくさん吸って!」
【俺はそもそも呼吸してない!】
「そうだった!? 魔剣だから――ガボゴゴ!?」
パニックの中でも最善の行動をとろうとするも、逆にパニック過ぎて空気を吸う時間を逃してしまう。
私の馬鹿。結局、そのまま滝の下へと突っ込んじゃった。
かなりの深さだし、流れも凄まじい。上からどんどん水が流れ込んでくるから、泳いで上を目指すこともできない。
空気もほとんど吸えなかったから、このままだとあっけなく溺れておしまい。滝のモズクになってしまう。
まさか、こんな形で私の旅が終わりを――
「えっ!? 人間!? 女の子!? どうしてこんな場所に!? と、とにかく、助けた方がいいですよね!?」
――告げるかと思ったけど、朦朧とする意識の中で誰かの声が聞こえてくる。
水中で眼を開けるのも辛いけど、誰かが泳いで近づいてる気がする。てか、水中で声がするのっておかしくない?
ああ、そうか。きっと私は死んじゃうから、そのせいで幻を見たり聞いたりしてるんだ。
でもどうせだったら、幻の中でもスペリアス様に会いたかった。
■
「ス、スペリアス様……むうぅ? あれ? ここ、どこ?」
ただ、あれは死ぬ間際の幻ではなかったみたい。とりあえず、私は死んでない。
次に目が覚めたのは、藁で作った小屋の中。感覚的に多分死んではいない。心臓だってきちんとドクドクしてるし。
【う、うーん……ここは? 俺達、助かったのか?】
「ツギル兄ちゃんも今起きたの? とりあえず、ここはあの世とかじゃないよね?」
【もしあの世だったら、俺の姿を元に戻してほしいもんだな。……そういう冗談を言えるぐらいには、ここがあの世って気になれないか】
魔剣も傍に置かれてるし、やっぱり誰かに助けてもらったみたい。ただ、それが誰なのかが分からない。
ツギル兄ちゃんもあの後意識を失ったらしく、何があったのかは覚えていない模様。流石にあれだけゴーゴーした滝に突っ込めば、魔剣の体でもビックリしたのだろう。冷たかったし。
いずれにせよ、助けてくれた人にはお礼を言いたい。
「よく見ると、濡れた服も着替えさせてくれ――あ、あれ? この白と赤のヒラヒラした衣装って……?」
【それって……エスカぺ村でも見た巫女装束じゃないか!?】
「うん。足袋も履かせてくれてるし……どうして?」
【一応のツッコミどころとして、ミラリアを着替えさせたのが女性であれば問題ないんだがな。……それはさておき、その衣装を用意できたということは、まさかここは……?】
とりあえずは体を起こしてみると、私の服装が普段の旅装束じゃなくなってた。
防寒にもなるマントにスカートとブーツの姿でなく、白い振袖と赤い袴で通気性のいい衣装。足袋も含めて、どう見ても巫女装束だ。
確かに滝に突っ込んでズブズブだったし、着替えないと風邪をひいてたかもしれない。でも、どうして巫女装束なんだろ?
ツギル兄ちゃんは何かに気付いたみたいだけど、ここは見た方が早い。小屋の外に出れば何か分かりそう。
「ご丁寧に草履も置いてある。履いていいのかな?」
【一足しかないし、ミラリア用に用意してくれたんだろう。それより、俺も早く周囲を確認したい】
「そんなに焦らないで。助けてくれた人が近くにいるだろうし、まずはその人を探し――ッ!? こ、ここってまさか……!?」
【チラホラ人影が見えるが、やはりそういうことか……!?】
近くにあった草履を履いて小屋の暖簾をかき分け外へ出てみる。そこでまず目に入るのは、広大な森の木々。
見た感じ、さっきの森からはまだ出てないみたい。木や草の種類も変わってない。どこかの集落っぽい場所で、少ないながらも誰かが住んでる。
大きな木に橋を渡して作られたらしいけど、住んでる人達は問題なく移動してるのが見える。お猿さんみたいに木から木へ飛んで渡ってる人もいる。
――そして何より、その人達の姿が一番注目すべき箇所だ。
「み、みんな耳が長い……!? つまりここが……!」
【ああ……! 俺達が探してた、イルフ人の隠れ里だ……!】
怪我の功名の如く辿り着いたのは、イルフ人の隠れ里。




