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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
永き歴史を紡ぐ種族の里
232/503

その少女、搦め手に弱い

ペイパー警部の時もそうなのですが、ミラリアにとって最大の弱点は……。

「ッ……!? 何か仕掛けてくる!?」

【気をつけろ、ミラリア! 実力で上回っていても、こいつらは魔王軍とは違う! 正々堂々とはいかないぞ!】


 完全に私の優勢を見せつける形だったのに、Sランクパーティーはまだ諦める様子を見せない。リーダーさんが不敵に笑い、何かを企んでることだけは分かる。

 こういう姿を見ると、私もあんまりいい気がしない。レパス王子を思い出す。

 でも、何を企んでるのかが読め――



 ビンッ!



「ふ、ふえっ!? 急に体が!?」

【まさか、トラップか!? こ、これじゃ身動きが取れない!?】


 ――なかったんだけど、気付いた時にはもう遅かった。

 突如身に走ったのは、足元からすくい上げるような感覚。どうやらネットが仕掛けられてたらしく、私の体は近くの木に吊るされる形となってしまう。

 身動きもとれず、魔剣で脱出もできない。ネット自体が特殊な素材なのか、上手く体に力も入らない。

 ネットの中でスッテンコロリンな体勢となり、Sランクパーティーへお尻を突き出す形となってしまう。


 ――悔しいし、恥ずかしい。


「ハハハッ! こっちは数日も前から、森に住む希少な種族を狙ってたからね。そこかしこに罠だって用意してるのさ」

「まさか、タタラエッジで煮え湯を飲ませてきた女の子を捕らえるとは思わなかったが、お前もある方面には需要のある容姿だ」

「残念だけど、奴隷として売り飛ばさせてもらうわね」

「思わぬ収穫だよね~」


 身動き取れずに宙ぶらりんな私を見て、Sランクパーティーの面々はそれこそ本当に獲物を捕らえた狩人の表情。別に食べるわけじゃなく、どこかに売り飛ばすために捕まえられるなんて冗談じゃない。

 こういった罠や狩りは、生きるために必要な時にやること。人攫いなんかして、何をどう楽しむのか気が知れない。


 ――でもこれ、かなりピンチかも。まさか魔王軍じゃなくて、こんな人達に追い詰められるなんて思いもよらなかった。


「ツ、ツギル兄ちゃん! どうしよう!?」

【どうするも何も、俺だって思案中だ! このままじゃミラリアが不逞な輩に食べられる!】

「ふえっ!? 私、食べても美味しくないよ!?」

【多分認識がズレてるが、とにかく脱出を急がないと! 転移魔法さえ使えれば、すぐさまここから逃げ出せるのに……!】


 とにかく私はパニック状態。ツギル兄ちゃんにも助けを求めてみれば、どうにも私をご飯にしちゃう人も世界にはいるらしい。

 それはそれで生物の掟だけど、このまま食べられるのはやっぱり嫌。少しでも居合を放てれば転移魔法も使えるのに、絡まったネットのせいでそれもできない。

 なんと無様なことこの上ない。まさか楽園を目指す旅の中で、ご飯にされて死んじゃうなんて――




 ジャカジャカジャン、ジャッジャ~ン! ジャカジャカジャン、ジャッジャ~ン!



「な、なんだこの奇妙な音楽は!? こんなもの、罠にも仕掛けてないぞ!?」

「ふえっ!? この軽快ながら独特なミュージックは……!?」




 ――そう思って諦めかけていると、突如聞こえてくるポップなサウンド。リーダーさんも慌ててるし、この音楽自体は罠でも何でもない。

 てか、私は聞いたことがある。おそらく、この場における第三者の仕業だ。


 ――まさかと思うけど、あの人の登場なの?




「人攫いが森へ忍び込んだとは聞いてたが、パサラダでピッツァを堪能してくれた少女を捕らえるとは……バッド、ヘルシー! 不届きな輩を成敗するのは、愛と正義と野菜の戦士の宿命! レッツ、ゴー、ヘルシー! パサラダ農戦法! イネカリカマキィィック!!」



 ヘルッシィィイ!



「なっ!? せっかくの罠を斬り裂いただと!? 何者だ!?」

「むぎゅっ!? あ、あなたは!?」




 ミュージックに気を取られてると、突然私を捕らえてたネットが斬り裂かれる。唐突過ぎて尻もちついちゃったけど、おかげで私は無事脱出。

 そのネットを斬り裂いてくれた人についても私の予想通り。何故か右足に鎌をくくりつけてるけど、全身緑色にキラキラ白い歯の独特なシルエット。


 ――流石は愛と正義と野菜の戦士。実にヘルシーな参上だ。


「ノムーラさん!」

「ノムーラじゃない! 今の俺はキャプテン・サラダバーだ! いずれにせよ、君のように心清らかな少女のピンチを見て、助けない道理はない! 問題の人攫いも見つけたことだし、今こそヘルシータイムで成敗だ!」


 やっぱり私を助けてくれたのはノムーラさんだった。足にくくりつけた鎌でキックを放ち、ネットを斬り裂いてくれたみたい。わざわざ足でやる意味は分かんないけど。

 とはいえ、これで窮地は脱した。ノムーラさんも一緒に戦う構えを見せてくれるし、これにて再度形勢逆転だ。


「ぐ、ぐうぅ……!? これでもかと変人な助っ人がいたとは……!?」

「『変人』については私も同感。だけど、私も今度は油断しない。もう罠だって警戒する」

「パサラダに伝わる精霊伝説の地を穢す悪党め! 俺も流石にアングリー、ヘルシー! こうなった以上、もぎたてトマトのように甘くはいかんぞ!」


 いきなりの登場だし、変なのは私も認めざるを得ない。でも、ノムーラさんは確かに私の味方だ。

 私だってもう甘くはいかない。カムアーチで食べたプリンのように甘くはない。

 ノムーラさんと一緒に気合を入れて、今度こそSランクパーティーを成敗して――



 ジャカジャカジャン、ジャッジャ~ン! ジャカジャカジャン、ジャッジャ~ン!



「あっ、すまない。テーマソングを切り忘れてた」

「……締まらない」

そもそも、そのテーマソングは必要か?

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