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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
永き歴史を紡ぐ種族の里
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その少女、未開の森へ立ち入る

いざ、ヘルシーにフォレストの中へ。

 ピッツァでお腹を満たし、ノムーラさんのテーマソングが妙に頭にこびりついちゃった翌日。私とツギル兄ちゃんはついにパサラダ西にある森林地帯へ足を踏み入れる。

 ここもまた、エスカぺ村近くの森と近い雰囲気だ。

 エスカぺ村の巫女さん――エフェイルさんの故郷が近いからなのかな? 似たような環境のエスカぺ村だから、エフェイルさんも住んでたのかな?


「……とはいえ、広さは別問題。この森、とても深い」

【これだけ深い森だと、パサラダの人達も精霊伝説とかに関係なく立ち入る気にもなれないか。そんなに人の多い村じゃなかったし、下手に行動範囲を広げて危険を冒す意味も薄いな】

「だからこそ、私達のことは素直に入れてくれたのかも。人攫いについては、止める目がなかったとか」


 ただ、道のりは中々に険しい。こういった森の中は慣れてるとはいえ、広いしヒントも見つからないしで疲れるばかり。

 一応、今回は相応の準備をしておいた。水や保存食を適度に用意し、野営の準備は万端。重すぎて動けないということもない。

 時間がかかること自体は大丈夫だけど、何も見つからないのは精神的にキツい。あんまり焦らず、じっくり進んでいく方が気持ち的に楽かも。


「ふう……ちょっと休憩。綺麗な川もあるし丁度いい」

【だな。ここまでの森でイルフ人を探すとなると、それこそいつになるか分からない。下手すれば数日かかりそうだし、食料についても少し考え直してみるか】


 こういう時こそ、急いては事を仕損じる。スペリアス様の教えの一つだ。

 ゆっくりとはいえそれなりに歩いたし、額の汗もスッキリさせたい。近くの川辺でジャブジャブして、顔を洗いながら一息入れる。

 楽園の原住民と言われるイルフ人。そこへ辿り着けば大きな手掛かりになるとはいえ、先はまだまだ長そうだ。

 水についてはこうして川を見つけられたことだし、河川を拠点に動くのがいいかも。幸い、飲み水としても問題ない。

 食料については今はまだ大丈夫だけど、今後どれぐらいの時間がかかるかも不明。持ってる食料以外にも、何かしら森の中で調達できる手段は今のうちに考えておこう。

 ラディシュ草みたいに保存に役立つ薬草だって、早い段階で集めておけば――




「んっ!? あそこにいるは、俺らが捜してる種族か!?」

「いや、違うわね。耳が長くないし――って、ま、まさか!?」

「あ、あの子って、タタラエッジで出会った……!?」




 ――そうこうジャブジャブしながら頭の中でモンモンしてると、誰かがこちらへ近づいてくる気配がする。

 後ろの草むらから私の様子を伺ってるみたいだけど、どうにも怪しい気配。耳を研ぎ澄まして声を聴いてみるけど、なんだかこっちを狙ってるみたい。

 もしかして、イルフ人が警戒してるのかな? いや、そうでもない感じ。


 ――私はこの声に聞き覚えがある。




「……あっ、タタラエッジで私とシャニロッテさんに酷いことしたSランクパーティー」

「ば、馬鹿な!? 君は魔王と戦って、そのまま死んだんじゃなかったのか!? 何故再び僕らの前に現れる!?」




 思った通り、背後でコソコソしてたのはイルフ人じゃない。普通の耳をした人間で、私のように冒険用の装備をしてる。

 ただ、問題なのはそのメンツ。男二人に女二人の四人パーティーだけど、少し前に私も酷い目に遭わされた人達だ。


 ――Sランクパーティー四人組。タタラエッジでは誰よりも先に逃げ出した人達と、まさかこんな場所で再会するとは思わなかった。


「勝手に人を殺さないでほしい。あなた達がいなくなった後、タタラエッジの人達の応援もあって魔王との決闘にも勝てた」

「ま、魔王に勝った……だと!? まさか、あの記事の内容通りだと言うのか!?」

「あんたのせいでこっちが世間から悪者扱いされて、商売あがったりなのよ! どうしてくれるのよ!?」

「……タタラエッジでは私を悪者扱いしたくせに。ちょっとプンプン」


 今思い出しても結構腹が立つ。大口叩いたくせに、私がゼロラージャさんと決闘するタイミングではとっくに逃げてたらしいし。

 もっとも、そのおかげでタタラエッジのみんなが私の話を信じてくれたと言えなくもない。薄情なSランクパーティーなんて、今となっては誰も信じない。

 あれから少し時間も経ってるし、噂は出回ってたみたい。これは自業自得と言えよう。


「……私はもう、あなた達に興味がない。こっちもやることがあるから、早々に立ち去らせてもらう」

「……まさか、この森に住むという『耳の長い特殊な種族』を探してるのかい?」

「ッ……!? どうしてそのことを……!?」


 ただ、ここで怒りに任せて剣を振るう意味もない。この人達のことはもう記憶の外にでも追い出し、今やるべきことを優先したい。

 そう思って立ち去ろうとするも、リーダーさんの言葉が私の足を止めてしまう。それって、イルフ人のことだよね?

 まさか、イルフ人について手掛かりがあるってこと? だとしたら、不満を抑えてでも聞く価値はある。


 ――そう考えてたけど、同時にSランクパーティーが私やシャニロッテさんにしようとしてたことも思い出す。パサラダで聞いた話も重なり、妙な不安感までこみ上げてくる。




「今の僕らの目的は、この森に住むという特殊な種族を捕らえることさ」

「普通の人間じゃないらしいし、奴隷として売ればかなりの値になるだろうな」

「あなたもわざわざこの森にいるってことは、そいつらが狙いなんでしょ?」

「何か知ってるなら、おとなしく語った方が身のためよ?」

この連中、本当にロクなことしねえのな。

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