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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
鍛冶鉱山で衝突する魔王
225/503

{タタラエッジのその後}

三人称幕間編。


ミラリア達が旅立ったタタラエッジのその後。

◇ ◇ ◇



 剣客ミラリアと魔剣ツギル。かの者達の活躍により、鉱山街タタラエッジは魔王軍の脅威から脱することができた。

 一度は疑いの目を向けるも、それを気にせず魔王ゼロラージャと戦い抜いたその姿。それどころか、かの魔王さえも説き伏せた人徳。

 ミラリア達が旅立った後もその話題でタタラエッジは盛り上がり、挙句の果てには――




「――ということがありましたの! ミラリアさんは――いえ! ミラリア様はわたくしにとって、まさに推して推すべき神様! わたくしはどうしても、あのお方の活躍を広めたいですの!」

「おお……! やはり、あの少女はタタラエッジの救世主だけのことはあるな……!」

「スーサイドのお嬢ちゃんも語ってくれる慈悲深さ……! これは後世に語り継ぎたいな……! 早速、記者として記事にしよう!」

「女神エステナの時代は古いな! これからはアホ毛の剣客ミラリア様だ!」




 ――崇拝されるに至っていた。

 ミラリアと行動を共にしていた魔法学都スーサイドの見習い魔術師シャニロッテにより、その活躍は留まるところを知らずに広がっていく。

 街の人々も実際にその活躍を見聞きしたため、すんなりと受け入れていく。シャニロッテの熱弁も相まって、ミラリア本人がいないところで大盛り上がり。


 ――それこそまさに、エステナ教団に変わるミラリア教団の創設さえ感じる熱量である。


「シャニロッテちゃんが語りたい気持ちも分かるべが、ちょいと大きくしすぎじゃないべか? あの子、実力も活躍も確かだべど、あんまり目立ちたがる子には見えなかったべよ?」

「だからこそ、わたくしが一人で盛り上がりますの! 魔王とも対等に戦って語れる人間なんて、世界広しと言えどもミラリア様だけですの!」

「……これは何言っても聞かないべね。呼称まで変わってるべよ」


 横で眺めるホービントも苦言を漏らすが、強く止めることまではしない。事実、ミラリアの行いはそれほど大きな功績であった。

 魔剣を握りし一人の少女が、世の人々から恐れられる魔王軍と対峙。決闘の果て、一つの街を救った。

 それを間近で見続けたシャニロッテにとって、ミラリアの存在は英雄どころかまさに神。その偉大さを語らずにはいられない。


 ――少々行き過ぎて見えても、性根が純粋なシャニロッテの暴走は誰にも止められない。


「まあ、ミラリアちゃんとまた再会して『迷惑、やめて』と言われたらやめるべ。オラが口出しできた立場でもないべ」

「ホービントさんも『ミラリア様の魔剣を鍛えて勝利に貢献した鍛冶屋』として売り出してほしいですの!」

「オラはそういうのしないべ。あれだって、ドワルフ師匠のことを思い出したからだべ。……そういえば、一つだけ引っかかることがあるべ」

「引っかかること? 何ですの?」


 もうシャニロッテのことについては諦め、再び日常へ戻りたいホービント。ただ、少しだけ気がかりなことが残っていた。

 ミラリアへドワルフやエフェイルといったイルフ人の情報を伝えはしたが、その時から気になっていることがホービントにはあった。


「あの写真……確か15年程前のものだべよ? ミラリアちゃんの年齢もそれぐらいだべよね? なのに、どうして15年前の知り合いの姿を一目見て判断できたんだべ? 流石にそれだけ年月が経てば、かなり違って見えなくもないと思うべ?」

「フフン! そこもきっと、ミラリア様だからこそですの! あのお方のアホ毛は特別みたいなので、人の顔なんてすぐ判別できると思うですの!」

「なんだべ? そのアホ毛? まるで伝承にある女神エステナの触角みたいだべな……。アホ毛だべど」


 ホービントが気がかりとするのは、ミラリアが写真のイルフ人を一発で見分けることができたこと。服装や特徴的な長い耳はあれど、そこまで瞬時に判断できるほど容姿に変化が少なかったのかが気になっていた。

 とはいえ、ミラリアを崇拝するシャニロッテの曲解により、この話もまたあらぬ方向へ。ホービントも呆れながら流すことしかできず、この話もただのちょっとした不思議程度に収まった。


 ――実際には二人の容姿に『年月を感じさせないほど全く変化がなかった』のが真相である。


「スーサイドに伝わる偉大な大魔女も、その極めた魔法故か若い容姿を維持していたと語られてますの! イルフ人の二人というのも、同じ類かもしれませんの!」

「あー、はいはい。もう何でもいいべ。……ところで、シャニロッテちゃんはいつスーサイドに帰るべか? いつまでもタタラエッジにいるわけにもいかないべよね?」

「わたくしは次の定期馬車と船で帰りますの! 帰ったらスーサイドでもミラリア様の伝説を語り継ぎますの! それまではタタラエッジで布教ですの!」

「……これ、オラにはどうしようもないべね。ミラリアちゃんの知らないところでどんどん話が膨れるべ」


 伝承にまつわる仮説を交えながらも、シャニロッテの熱弁は続く。

 魔王と並びしアホ毛の剣客ミラリア。その伝説がタタラエッジの外へ広がるのも、そう遠くない未来の話である。


 ――シャニロッテの熱心な布教活動が魔法学都スーサイドでも繰り広げられるのは、この時点で想像に難くない。




「もしかすると、ミラリア様はスーサイドに伝わる偉大な大魔女……スペリアス様の再来かもしれませんの!」



◇ ◇ ◇

おいぃぃ!? シャニロッテェェ!?

その情報、ミラリアが一番欲しいものだぞぉぉ!?

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