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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
鍛冶鉱山で衝突する魔王
223/503

その巫女、次なる道を示す

エスカぺ村に住んでいたイルフ人の巫女。

次なる手掛かりは彼女の軌跡。

「おお、その女性はオラもかすかに覚えがあるべ。ハッキリと姿を見たことはないが、この姉ちゃんも耳が長かったんだべな」

「ホービントさんも知ってる人!? この人も私の故郷、エスカぺ村にいた人!」

「なんだべと? ……そういえば、ドワルフ師匠が旅立ったのも、この姉ちゃんと出会ったすぐ後だったべか?」


 シャニロッテさんとも一緒に見付けた、楽園へ繋がると思われる新たな手掛かり。それはドワルフさんの遺した写真に写るエスカぺ村の巫女さんだ。

 鍛冶屋さんだけでなく、巫女さんまでもがここで関与してきた。この人だって耳が長いし、イルフ人とみて間違いない。


 ――まさか故郷エスカぺ村での繋がりが、こんな遠方で立て続けに見つかるなんて。


「むむ? この写真、裏に何か書かれてますの。『エフェイル』……この女性の名前ですの?」

「巫女さんもドワルフさんと同じく、私達に名乗ったことはなかった。この人も同じように、ずっと『巫女さん』って認識しかなかったから……」


 鍛冶屋さんのドワルフさん同様に明らかになるのは、エスカぺ村では馴染み深かった巫女さんの名前。どうやら、エフェイルさんって名前だったみたい。

 耳の長さにしても名前にしても、本当にこれまで『そういうものだ』と簡単に流してしまっていた。『灯台下暗し』とはこのことか。


 ――灯台って何だろ? まあ、それはいっか。


「その『巫女』というのも気になりますの。このような格好をした人、わたくしも知りませんの」

「確かに私も巫女さんの格好をした人、外の世界では見たことない。これは『巫女装束』と呼ばれるもので、神聖なものだって聞いたことはある。私も修行の時、似たような恰好をしてた」

「この変わった靴もですの? 指の間に何か挟まってて、なんだか歩くのが痛そうですの」

「それは草履。これもエスカぺ村にいた時、ちょこちょこ履くことはあった。慣れれば履きやすいし脱ぎやすいしラクチン」


 思えば、外の世界ではエフェイルさんのような恰好をした人なんて見たことがない。

 巫女というお仕事がエスカぺ村のお社を管理する神聖な職業ではあったことから、役目として一番近いのはフューティ姉ちゃんみたいな聖女なのかな?

 だとしたら、闇瘴も陰で浄化してくれてたとか? エスカぺ村って、闇瘴はなかったもん。影の怪物は封印されてたけど。


「はて? 巫女……だべか? そういえば、ドワルフ師匠が残した日記にも何か記載があったような……?」

「ふえ? ホービントさん、何か心当たりがあるの?」

「まあ、ちょっとだけだべ。確かこの日記の中に『巫女がどうのこうの』と書いてた気がするべ。あんまり師匠の日記なんて見ない方がいいと思ったけんど、今は事情が違うから見てみるべ」


 それはさておき、エスカぺ村の巫女さんことエフェイルさんにはまだ手掛かりがあるみたい。ホービントさんも昔の記憶を呼び起こし、そのカギとなるものを持ってきてくれる。

 用意してくれたのは一冊の日記帳。ドワルフさんのものらしく、当時のことが書かれてるとのこと。

 勝手に読むのはいけない気もするけど、ドワルフさんにも今は心の中でごめんなさいしておこう。


 ――また全てが終わった後、エスカぺ村にある墓前で報告させてもらおう。今は繋いでくれたこの命を大切にして、目指すべき楽園のヒントが欲しい。


「おお、このページだべ。何々……『西方の森林地帯にある隠れ里よりイルフの巫女がやって来た。同じ三賢者の一人として、こちらにも協力してほしいらしい。どうやら、運命の日が近づいてきたようだ。いずれ器にもなる御神刀を持って、共にその場所へ向かうとしよう』……って書いてるべ」

【文体からして、ドワルフさんは『三賢者』って括りの一人だったってことですかね。おそらく、巫女のエフェイルさんもその一人かと】

「三賢者ってことは、三人いたということですわよね? だったら、もう一人は誰ですの? やはり、イルフ人ですの?」

「これだけで全部を断定するのは早計。でも、一つだけ確かなことがある」


 日記に書かれた内容から、ドワルフさんに会いに来た巫女さんこそがエフェイルさんなのだろう。ドワルフさんはエフェイルさんから話を聞き、タタラエッジを離れて一緒に旅へと出た。

 『運命の日』なんて書いてるから、よっぽど大事な旅だったんだと思う。それが何かは知らないけど、その果てで二人はエスカぺ村へと辿り着いた。

 三賢者が何かも、どういった人達で構成されてるのかも分からない。だけど、この日記にはある場所が示されている。




 ――タタラエッジから西方にある森林地帯。エフェイルさんことイルフ人の巫女さんは、その場所からやって来た。




【もしかすると、その場所こそイルフ人の故郷みたいな場所なのかもな。ホービントさん、おおよその場所って分かりますか?】

「タタラエッジから西方で森林地帯となると、おそらくは大農村パサラダのさらに西の奥地だべね。あそこは未開の地らしく、まだまだ人の手が入ってないべ。イルフ人なんて種族が隠れ住んでるとしたら、ここの可能性が高いべ」


 それが分かれば、私達が次に目指す場所も決まった。ホービントさんも地図を広げ、該当場所を指し示してくれる。

 これまたかなり遠いし、イルフ人がいると思われる森林地帯に至っては情報も少ない。だけど、今手元にはここを目指すだけの理由が揃ってる。


 ――イルフ人が住んでるらしい隠れ里。そこに行けば、楽園へ一気に近づけそうな気がしてならない。


「三賢者の一人も、ここに行けば会えるかも。もしそうなら、私は全ての真相を伝える必要だってある。……次はここ。この森林地帯を目指す」

「……オラにはミラリアちゃんの旅は想像もできないべ。でも、ドワルフ師匠が作った刀を持って、タタラエッジさえも救っちまった少女だべ。その旅には深すぎる意味がある……そう思わずにはいられないべ」

「わたくしもお供はできませんが、ミラリアさんを応援する気持ちは変わりませんの! 大農村パサラダまでは馬車で行けますし、少しでも旅の幸運を祈ってますの!」


 次に目指すべき場所は決まった。大農村パサラダという場所のさらに奥地にある森林地帯だ。

 パサラダまでは馬車が使えるらしいけど、私が目指すのはそのもっと先。未開の地と呼ばれる以上、何があるかは分からない。


 でも、私は辿り着いてみせる。イルフ人の隠れ里だって、楽園を目指すための過程に過ぎない。

 ホービントさんもシャニロッテさんもできうる限りの応援をしてくれるし、気持ちはとっても上々。魔王軍との問題も解決して、晴れやかな気持ちで次を目指せる。




 ――まだまだ遠いけど、確実に近づく楽園への旅路。どれだけ苦しくても、目指すべき意味が私にはある。




「スペリアス様、待ってて。私、きちんと会ってごめんなさいしに行くから」

魔王との戦いを終えても、ミラリアの旅は終わらない。

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