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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
鍛冶鉱山で衝突する魔王
221/503

その少女、半分こを提案する

ミラリアにとって、人間と魔王軍の垣根はないに等しい。

「半分こ……だと? このアテハルコンの鉱脈をか?」

「うん。私はその方がいいと思う。魔王軍にだって手にする権利はある」

「ミ、ミラリア様……。あなたは相変わらず、どこかズレた感性をお持ちのようで……」


 私の提案を聞くと、ゼロラージャさんもユーメイトさんも揃ってキョトンとしてしまう。確かにちょっとだけ変なことを言ってる気はしてる。

 でも、考えてもみてほしい。坑道や鉱脈はタタラエッジのものだけど、アテハルコンを見つけて採掘できるようにしてくれたのは魔王軍のおかげ。

 それに、お互いが半分こでアテハルコンを手にすれば、また奪い合いで争う心配も減ってくる。


「量に関してはお互いで話し合って、独占しないようにするのがいいと思う。私もタタラエッジの人達には頑張って説明してみる」

「そ、そこまでされますか? 確かにこの鉱脈にはかなりのアテハルコンが眠ってますし、魔王軍だけでも多すぎるぐらいではあります。とはいえ、そんな話を持ち出せば、またミラリア様が苦労されそうですが……?」

「また何か言われるかもと思うと怖いけど、私自身がそうしたい。……ダメ?」

「い、いえ……ダメかどうか聞かれましても……。ゼ、ゼロラージャ様は如何様に?」


 無論、これだって簡単な話でないことぐらいは理解してる。でも、これがお互いにとって最善の結末だと思う。

 そのためなら、私ももう一度頑張ってタタラエッジのみんなに話してみる。もうじき旅立つ中で、後悔のない選択をしたい。




「フフフ……ドラララァ! よもや、自らが打ち下した魔王軍にも慈悲をかけるか! 人の身でありながら、魔物の心も汲み取るか! 屈辱とは思わぬ! むしろ、これ以上に面白きことはないぞ! 懸け橋の少女、ミラリアよ!」




 ユーメイトさんはどこかタジタジだったけど、ゼロラージャさんの方は仮面の下で大笑いしながら了承してくれた。どこか吹っ切れたというか、納得したような笑い方だ。

 やっぱり、私が人よりズレたことを言ってるからかな? でも、認めてくれたのならありがたい。

 まずはゼロラージャさんが認めてくれないと、この話は何も進展しなかったところだ。


「まあ、魔王軍は闘争と破壊を主とする者が多い故か、採掘といった行為には難儀もしておる。仮にこれだけのアテハルコンの所有権を得ても、全てを手中に収めることは叶わぬか」

「だったら、そこはタタラエッジの人達と協力すればいい。人間も魔王軍も関係なく、話し合って手を取り合うこともできると思う」

「ドラララァ! これはまた、我も一本取られたというべきか! ウヌのその考え、気に入ったぞ! 甘くは見えれど、ここに至るまでの過程を考えれば決して甘くないことは至極当然の如く! ……我も積極的に考えてみるとしようか。人間との交渉というものを!」


 ゼロラージャさん自身も笑いながら納得し、さらにはタタラエッジとの交渉にまで乗り気になってくれた。てか、魔王軍だけじゃここのアテハルコンの採掘さえも難しかったみたい。

 ならばかえって好都合。採掘技術はタタラエッジと共有し、協力して採掘することもできる。

 これがきっと、いつか聞いたウィーンウィーンの関係というものなのだろう。ちょっと発音が違う気もするけど、多分合ってる。


「ユーメイト! 今後はウヌがタタラエッジの人間どもとの交渉に赴き、共にアテハルコンの採掘に乗り出すのだ!」

「わ、私がですか? ゼロラージャ様のご命令とあれば従いますが、本当にそのように話がトントン拍子で進むものかと?」

「ウヌは魔王軍の中でも人間に近い容姿をしており、長きに渡って人世への潜伏もしておっただろう。ウヌだから頼めることであるし、我も期待しておる」

「……かしこまりました。この最強メイドの冥途将ユーメイト、我らが魔王様のために一肌脱がせていただきます。この眼鏡に懸けて」

「ついでにその眼鏡もタタラエッジの鍛冶技術で鍛えてもらえ。さすれば、無駄に三十個も持ち歩く必要もあるまい。……持ちつ持たれつの人と魔の世か。ドラララ! 誠に面白い!」


 早速とばかりにユーメイトさんへも話が振られ、今後の方針が固められていく。眼鏡ありのユーメイトさんならば、確かにタタラエッジとの交渉にもうってつけだ。

 私やフューティ姉ちゃんのメイドさんもしてくれてたし、私としても信頼できる。


 ――後、眼鏡を鍛えてもらうことには賛成。この人、眼鏡がないと本当にポンコツだもん。


「ま、まさか、ミラリアさんの一声でこの場に人間と魔王軍の懸け橋ができてしまったですの……? こ、これってもしかして、歴史的光景ですの……?」

「むう……やっぱり、変なことしてるのかな?」

「確かに変なことかもしれませんが、わたくしだって賛成ですの! これは歴史に残りますの! 流石はわたくしも崇めたミラリアさん――神様ですの!」

「まだそう思ってたんだ……」


 傍で聞いてたシャニロッテさんについても、私の考えを受け入れてくれた。それは嬉しいんだけど、別に私は神様じゃない。神様は女神エステナ。

 仮にも私が神様だったら、アテハルコンが『ミラリアの金属』になっちゃう。神様の金属なのに。

 認めてくれるのは嬉しいけど、崇めるのはやっぱり大袈裟だ。


「ツギル兄ちゃんもこれでいいかな? 私の提案って、やっぱり変だよね」

【まあ、変ではあるだろうな。だが、卑下することはない。今のお前は自分で考えて、立派に道を選べてるさ】

「そうなのかな? 私自身には自覚がない」

【そういうもんでもあるのかもな。ある意味、無意識でもできてるのはミラリアらしいか。ただ、俺もお前の姿を見ていて、一つ誇らしくも参考にしたいものがある】

「ツギル兄ちゃんが私に? それって何?」


 後はツギル兄ちゃんの意見だけど、こっちも問題はなさそう。いつもの小言もなく、素直に私のことを認めてくれてる。

 それだけでなく、私の行動で特に褒めてくれてる部分もあるみたい。何のことだろう? 私には自覚がない。




【お前は相手が人間だろうが魔物だろうが、偏見の目を通すことがない。言葉で分かり合えるのなら、全てを『一人の人』として捉えてる。一緒の目線で考えようとしてる。……それは俺はもちろん、普通の人間にはできない誇らしいことさ】

そう。ミラリアは話し合える相手のことは全部「人」で統一していた。

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