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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
鍛冶鉱山で衝突する魔王
214/503

◆魔王ゼロラージャⅤ

応援は揃った! いざ、最後のチャンスを掴むために!

「つまり、完全に魔王を打ち倒さなくても勝ちになるんだな!? あの竜人メイドの横にある砂時計が――最後の黒い砂が全部落ち切るまで耐えれば、それで勝利なんだな!?」

「そうですの! 今の戦局を見るに、魔王を倒してKO勝ちは厳しすぎますの! ここは時間まで耐えきり、逃げるが勝ちしかないですの!」

「オラも賛成だべ! ここまでずっと頑張ってくれたのに、これ以上の無謀はさせられないべ!」

「相手が魔王なら尚更だ! 向こうも条件に乗ってくれてる以上、やはり時間まで耐える戦法をとるべきだ!」


 タタラエッジのみんなも一緒になり、闘技場の隅で作戦会議が始まる。

 もう白色の時間に攻めるような体力的余裕もない。でも、シャニロッテさんがみんなにルールを説明してくれたおかげで、光明は見えてきた。


 逃げ勝つのは剣客として恥と思えど、もうそれぐらいしか道がない。私とゼロラージャさんの間には天と地ほどの実力差がある。

 この白色の時間が終わった後に訪れる、ゼロラージャさん最後の猛攻――黒色の時間。そこで無理に戦わず、回避と防御で耐えきる作戦へシフトし始める。

 そこさえ凌げば私の勝利。卑怯でも何でも、これしか勝つ方法はない。


「そうは言っても、本当に持ちこたえられるんだべか!? もう立ち上がるの苦しそうなほどボロボロだべよ!?」

「くっそ! 俺らはこんな健気な少女を信じることもできず、むしろ疑って見て見ぬフリをしてたのか!? 自分の不甲斐なさに吐き気がしてくる!」

「何かないのか!? いっそ、誰かが代わりに出場するとか!?」

「……大丈夫。私がやる。そうするしかない。ゼロラージャさんもここまでルール通りに戦ってくれたし、約束を破られることはない。だから、私が最後まで戦う。せめてみんなは、私のことを応援してほしい……!」


 ルール上、この決闘は私が場に出てこそ。余計な横やりはルール違反。

 逃げ勝つ作戦とはいえ、それはルールの範疇だからできること。ルールを越えてしまえば、話を聞いてもらう約束さえも叶わない。

 私がやるしかない。砂時計の砂が全部落ち切るまで、なんとしてでもこの闘技場に立ち続ける。


 ――それらの想いがみんなと一つになれば、迷わずその通りにできる。




「人間風情がここまで追い込まれ、無駄に作戦を立てているようですね……」

「それで構わぬ。もとより、我が定めたルールぞ。……ただ、刻限が迫っていることは理解願おうか?」




 話がまとまりつつある中でも、時間は待ってくれない。すでに砂時計の色は白から黒に変わる直前で、ゼロラージャさんはスタンバイに入ってる。

 ユーメイトさんはどこかイラだってるけど、やはりルールが優先。こちらの話が聞こえていても、戦うゼロラージャさん自身は納得してる。


 ――ならば遠慮はいらない。ここから先、私はみんなのために耐えきる作戦を選ぶ。


「……それじゃ、行ってくる。ツギル兄ちゃんもワガママばっかりでごめんなさい」

【ワガママだとは思ってないさ。むしろ、みんなのためによくここまで頑張れてる。……今のお前の姿は俺にとって自慢の妹さ。ここまで人の心を動かすのは簡単な話じゃないからな】


 よろめきながらも魔剣を手に取り、私は再びゼロラージャさんの眼前へと歩み出す。ここから先は私とツギル兄ちゃんの戦いだけど、決して孤独なんかじゃない。

 シャニロッテさんにホービンスさんだけじゃない。タタラエッジのみんなにも信じてもらえた。

 作戦だって決まったし、後はやるべきことをやるだけ。


 ――もうボロボロだけど、体の奥底から不思議と力が湧いてくる。


「ウヌらの狙いは時間切れによる逃げ切り勝利であるか。それもまた良し。だが、我はその願望を全力で打ち砕きにかかる。情けなどかけぬ。……覚悟は良いな?」

「覚悟はできてる。これはみんなで考えた作戦。……あなたこそ『情け』なんて言葉を使わないで。それは私や支えてくれるみんなへの侮辱になる」

「ドラララ……! 実に強き小娘よ。……なれば我も全力にて応じよう! これより『黒』の時間ぞ! これまでと同じと思うでないぞぉ!!」


 ゼロラージャさんみたいに声を張り上げる元気も乏しいけど、内なる気力は十分。

 砂時計は黒色で最後。ここさえ乗り切れば私達の勝利。


 ――息を整えながら構えを取り、最後の時間へ今挑む。




「王笏に宿りしオーブよ! その力を示せ! ルーンスクリプト『ᚲᚨᚷᛖᚲᚨᛗᛁᚾᚨᚱᛁ』――()(がた)雷霆(らいてい)の黒!!」




 白色の砂が全て落ち、とうとう砂時計に残ったのは黒色の砂のみ。それを合図にゼロラージャさんは最後の力を見せてくる。

 杖の先端にある宝玉へ手をかざし、その形状を再び変化させてくる。これまでは弓と斧だったけど、今回もやっぱり別物だ。


 ――光に包まれながら姿を見せたのは、黒く染まった大剣だ。


「この『()(がた)雷霆(らいてい)の黒』は、今の我に使える最高の力ぞ! この力を前にして、時間いっぱい逃げ切れるなどと思うな! 我はゼロラージャ! 闘争の世において、魔王の座を掴みし者なり!!」

「もう、どんな攻撃が来ても驚かないし怯えない……! なんとしてでも守ってみせる……! 私はミラリア! 偉大な大魔女に育ててもらった娘!!」


 最後の最後で剣と剣の勝負。ただ、斬り勝つことが目的じゃない。

 形なんてどうでもいい。無様でも構わない。魔王を相手にして、見栄えなんて考えてる場合じゃない。




 ――この最後の時間を耐え抜き、必ず勝利を掴んで見せる。

魔王の第3戦闘フェーズ! これが最後だ!

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