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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
鍛冶鉱山で衝突する魔王
212/503

◆魔王ゼロラージャⅢ

律儀にルールを守るのは、絶対強者たる余裕の表れ。

「ぬう? もうそんな時間となったか。剣客の少女よ、よくぞ耐えたものだ。我は一時控える故、ウヌは好きにするがよい」


 ユーメイトさんの言葉を聞くと、ゼロラージャさんはすぐさま弓を元の杖の形状へと戻し、完全に攻撃を止めてくる。

 砂時計に目を向けると、どうやら青色の時間が終わったみたい。つまり、弓による猛攻もここまでか。

 本当に最初言った通りで、白色の時はこっちから仕掛けない限り何もしてこない。流石は王様。嘘は言わない。

 できることなら、今のうちにこっちから猛攻で押し切りたいけど――


「ハァ、ハァ……。ダ、ダメ……疲れた……」

「ミ、ミラリアさん!? 大丈夫ですの!?」


 ――とても攻められる体力などない。こっちも動きを止め、地面に座り込んで息を整えずにはいられない。

 シャニロッテさんも闘技場の隅へと駆け寄り、必死に声をかけてくれる。それに対して返事をするのも苦しい。


 ――圧倒的力量差とギリギリの緊張状態の維持。まだ戦いは始まったばかりなのに、ここまで消耗するとは予想外だ。


【こ、これが魔王……! 世に恐れられる魔王軍の総大将……! こ、これはいくらなんでも無茶だ! 今からでも棄権するべきだぞ!?】

「そ、そうですの! このまま続けていたら、ミラリアさんが死んでしまって――」

「棄権はしない。ここで引き下がったら、タタラエッジはおしまい。ゼロラージャさんが与えてくれたチャンス、無駄にしたくない」


 ゼロラージャさんが動きを止めている間に反撃もできず、闘技場の隅に座り込んで息を整えることしかできない。

 その間、ツギル兄ちゃんやシャニロッテさんが語るのはこれ以上の戦いを止めること。確かに今の攻防を見ただけでも、私がゼロラージャさんに勝てる可能性などないに等しいのは明らか。


 だけど、棄権なんてことはしたくない。私は今、もっと大きな戦いを避けるために戦ってる。

 タタラエッジの人達が私のことを信じてくれなくても、このまま大勢の人が危険に巻き込まれるのを見て見ぬフリはしたくない。ここがドワルフさんの故郷なら尚更だ。

 ゼロラージャさんだって、その気になればタタラエッジを攻め落としてアテハルコンを独占することなんてわけない。なのにこうして私にチャンスを与えてくれた。


 ――その気持ちだって無駄にしたくない。私のワガママでも、このまま身を引いて終わりになんかしない。


「ゼロラージャ様、ミラリア様。そろそろ砂時計の色が変わります。ご準備を」

「うむ、時間であるか。ウヌも休憩はここまでぞ?」

「……分かってる。ツギル兄ちゃんももう少しだけ私のワガママに付き合って」

【ミ、ミラリア……】


 結局、今回の砂時計における白色の時間は休憩にしか使えなかった。もうじき赤色の砂が落ち始め、再びゼロラージャさんの猛攻が始まる。

 息は整えられたけど、消耗の激しさはそのまま。まだまだ勝ち筋なんて見えてこない。


 ――それでも私は戦う。逃げた先にある犠牲を伴う未来を避け、どれだけ私が痛い思いをしても犠牲のない未来を手にするためだ。




「次なる趣向ぞ。とくと味わうがよい。……王笏に宿りしオーブよ! その力を示せ! ルーンスクリプト『ᚺᛁᛃᚨᛗᚨᛁ』――(どう)ぜず侵掠(しんりゃく)せし赤!!」




 砂時計が赤色の段階に入ると、ゼロラージャさんは再びルーンスクリプトを唱えて杖の形状を変化させてくる。

 今度はさっきのような青い弓ではない。砂時計と同じ赤色をした、武骨で大きな斧。

 武器の種類からして、さっきのようなスピード勝負とは考えづらい。どちらかと言えばパワーを発揮しそうな武器だ。


「さて、今度は先程とは大いに異なるぞ。我の速さに後れを取ったウヌだが、この赤き力の前では如何かな?」

「また何か違うことをするつもりらしいけど、何が来ても私は屈さない……!」


 この人って、単純に戦術の幅も広い。手にした赤い斧を高く掲げてるし、それだけでもパワフルさ満点。

 スピードとは違うパワーによる勝負。純粋なパワーは私自身大したことないけど、別々の特性で勝負できると考えればさっきより有利かも。

 あれだけの大きさの斧だから、振るうゼロラージャさんにしても隙が生じて――


「フンドラァァアア!!」



 ズゴォォオオンッ!!



「ッ!? ひ、火が山のようにせり上がって!?」

【嘘だろ!? 斧を振るっただけで地面が!?】


 ――などと都合のいい話にはならなかった。

 今度のゼロラージャさんはその場から動くことなく、離れた位置から斧を振るってくる。普通だったら届かない距離だけど、そんなことはまるで関係ない。

 気合と共にゼロラージャさんが叩きつけた斧から放たれるのは、山のような爆発を起こしながらこちらへ襲い掛かる火炎。私の震斬(ブレスラッシュ)といった魔法効果を付与した技に近いけど、その規模は段違い。

 闘技場の地面ごと抉るような爆炎。強大なんて言葉でさえ生温い。魔剣の居合ではここまでできない。


 ――こんな技があるならば、ゼロラージャさんは動かずとも私を侵略できる。


「どうした? 驚くばかりか? これもまた我にとっては小手調べ。……まだ『温い』の内にしか入らぬぞぉぉおお!!」

「くぅ!? 一発だけじゃない……!? 攻撃が激しすぎる……!?」


 連射速度自体はさっきの青色の弓矢には劣る。でも、一発一発の威力が大きすぎる。

 たとえ躱したところで、爆炎が衝撃波を巻き起こして体の自由を奪われる。そうなってしまえば、次の爆炎までの猶予など関係ない。



 ズゴォォオオンッ!!



「あぐうぅ!?」

【ミ、ミラリア!? しっかりしろ!?】

「も、もう見てられないですのぉお!」


 あまりの激しさに、スピードで制圧するという作戦もあってないようなもの。青色の時の消耗も合わさり、とうとう爆炎に巻き込まれてしまう。

 本当に強い。あまりにも強すぎる。魔王という脅威が大きい。


 ――何度も爆炎に巻き込まれ、気が付けば私は地面に突っ伏して立ち上がることもできない。


「……フン。この程度であったか? 今降伏すれば、命ぐらいは助けてやろうぞ? タタラエッジのその後は知らぬがな」

「ミラリア様。これがあなたと魔王ゼロラージャ様の間にある壁でございます。……私にとって、あなたは一度は敬意を払った恩人。ゼロラージャ様がこう申されてるうちに、私からも是非降伏を願います」

「い、嫌……。降伏……したくない……。私が負けたら……タタラエッジのみんなが……」


 完全に圧倒した余裕からか、まだ砂時計の色が変わってないのにゼロラージャさんは攻撃の手を止めてくる。ユーメイトさんも一緒になり、私へ降伏を促してくる始末。

 でも、私にそんな話は呑み込めない。体中痛くて身動きもとれないけど、ここまで戦った意味もなくなっちゃう。


 シャニロッテさんだって見守ってくれてるのに、こんな形で幕引きなんて――




「ほら、見るべよ! あの娘っ子、オラ達のために戦ってくれてるんだべよ!? あれを見てもまだ疑うんだべか!?」

「お、おいおい!? ボロボロじゃないか!? まさか、本当に魔王と決闘してるのか!?」

「そ、そんな……!? あんなに疑ってた俺達のために……!?」

魔王ゼロラージャ第2戦闘フェーズ。

侵掠すること火の如く & 動かざること山の如く


そして、ピンチに駆けつけたのは……?

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