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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
鍛冶鉱山で衝突する魔王
202/503

その少女と魔王、決闘の決意を示す

アホ毛の剣客ミラリア VS 魔王ゼロラージャ

その戦いは決められた未来。

「聞け! アテハルコンを求めし人間どもよ! 我が名は魔王ゼロラージャ! 同じくアテハルコンを求めし、魔王軍の総大将なり!」

「ま、魔王だって!? ドラゴンどころか、そんな奴までタタラエッジに!?」

「あ、あの覇気……本物だ……! あいつが……魔王……!?」


 転移魔法で飛んできたのは、タタラエッジでも人が集まる一角。魔王軍討伐メンバーはいないけど、残ってた人達は結構いる。

 みんな突然現れたこちらに驚いてたけど、ゼロラージャさんの声でさらに驚く。一斉に顔をこちらへ向け、怯える人まで出てきてしまう。

 直面しただけで魔王だと認識してしまうほどの覇気。それはタタラエッジのみんなも同じみたい。


「ねえねえ、ゼロラージャさん。あんまり大きな声でいきなり喋るとみんな怖がる。もう少し手順を踏むべき」

「むしろ、ミラリアさんが堂々とし過ぎてますの。これは貫禄ですの?」

【いや、単純に認識がズレてるだけだ。それも盛大にな】

「わ、私はズレる眼鏡がないです……」

【主よ。今は黙っておくべきぞ。これ以上の醜態は勘弁願いたい。……しかし、ゼロラージャ様は何をお考えで?】


 とはいえ、こんないきなりの登場はみんなを混乱させるだけ。ちょっとは考えてほしい。

 一緒に転移してきた各人も各々のコメントを述べてくる。なお、ユーメイトさんはやっぱり眼鏡な模様。

 そんな私達や街の人達の様子も我関せずとばかりに、ゼロラージャさんは声高らかに話を紡ぎ始める。


 ――せめてユーメイトさんの眼鏡を先にどうにかしてほしいとも思うけど。


「ウヌら人間がアテハルコンを求め、我ら魔王軍が留まることを良く思わぬのは理解しておる! 我自らの手で一気に返り討ちにしても構わぬが、ここで一つ余興として試練を与えようぞ!」

「ま、魔王がいきなり何を!? 討伐メンバーは何をやってるんだ!?」

「いきなり出てきた魔王の言葉なんて、簡単に信用できるかよ!」

「まあ、まずは聞け、人間よ。我が余興に応えることができれば、魔王軍もウヌらの願望に応じるとしよう。我は魔王。魔を統べる王。王として、一度吐いた唾を飲み込む真似はせぬ」


 ゼロラージャさんの言葉を聞いても、タタラエッジの人達は半信半疑。かなり高圧的な喋り方だし、覇気やら威圧感やらで気圧されてるから無理もない。

 でも、私はなんとなく理解できる。ゼロラージャさんは嘘など言ってない。本当に試練だか余興だかを乗り越えれば、言葉通りにこちらの要望を通してくれる。


 ――この人は魔王。魔物といった魔の上に立つ王様。上に立つ人は迂闊に嘘なんてつけない。


「明日の明朝、ここにおる剣客の少女と我自らで決闘を行う。場所はここタタラエッジの上部に設置された闘技の場だ。決闘に手出しは無用。この少女の切望により、我が与えたもうた機会ぞ」

「け、決闘……!? あんな小さい女の子一人と魔王が……!?」

「何を勝手に決めつけてるんだよ!? タタラエッジの闘技場にしたって、魔王が使おうとするなよ!?」

「ドラララ! 人間が闘技の場と決めた場所ぞ。決闘において、これほど相応しい場もあるまい。……閲覧人については多いほど良い。我らも今は去るが、明日を楽しみにするがよい、人間ども! ユーメイトよ! 退散するぞ!」


 明日の決闘のことだけ言い残し、ゼロラージャさんはユーメイトさんや魔槍さんと一緒に再び転移魔法で姿を消してしまった。

 なんだかトントンと話が進んじゃったけど、明日私が頑張らないといけないのは事実。そのことはタタラエッジのみんなにも伝わった。

 まさか魔王と決闘することになるなんて思わなかったし、ゼロラージャさんもゴリゴリ行く人だ。本当にやりたいことだけやって帰っちゃった。

 それぐらいでないと、魔の王様なんてできないのかもしれない。


 ――後、急いでユーメイトさんの眼鏡を取りに戻りたかったのかも。あの人、結局私と戦った後はずっとヨロヨロだったし。


「とりあえずみんな、そういうことになった。私も魔王が相手だとどこまでやれるか分かんないけど、全力で頑張る」

「が、頑張るって言ったって……。確かにお嬢ちゃんは試験の時も凄い技を見せてたが、相手はあの魔王だぞ……?」

「そもそも、どうしてそんな話になったんだか……。なんでタタラエッジの未来が、こんな小さな女の子の手にかかっちまうんだ……?」


 ひとまずはこれにてこの場での事態は収拾。後の話は明日になってから。タタラエッジのみんなもゼロラージャさんの説明で一応の理解はしてくれたけど、納得とはいかないみたい。

 まあ、坑道であったことはこの場だと私とツギル兄ちゃん、それとシャニロッテさんしか知らない。ツギル兄ちゃんも人前で声は出せないし、私だけだと上手く説明できない。


「え、えーっと……ともかく! 明日はみんなでミラリアさんを応援しますの! 闘技場に大集合ですの! エイエイオーですの!」


 なお、シャニロッテさんも上手く説明できない模様。当事者の私と違い、どちらかといえばツギル兄ちゃんよりさらに部外者。

 ユーメイトさんとの戦いでは頼りになったけど、明日のゼロラージャさんとの決闘では手出し無用。せめて応援に力を入れてくれれば、私だってやる気が出てくる。

 握った右手を高く掲げてみんなにも応援を呼び掛けてくれるし、これで少しでもたくさんの応援が集まって――




「諸君! 騙されるな! そこのアホ毛の少女は自らの保身のため、魔王に寝返ったのだ!」

「そのせいで私達、散々な目に遭ったんだからね!」




 ――くれることを望んでたら、少し離れたところから誰かが口を割り込んできた。

 声がした方角に目を向ければ、男二人に女二人のパーティーっぽい人達がこちらへ歩み寄ってくる。ただ、その形相はとっても不満げ。

 誰かと思ったけど、よくよく目を凝らして姿を確認してみれば――




「僕らはそこのアホ毛少女のせいで、危うく魔王軍に殺されるところだったんだ! タタラエッジの諸君も、決して先程の言葉に騙されるな!」

「むう? Sランクパーティーの人達……?」

あっ、無事だったのね。

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