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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
鍛冶鉱山で衝突する魔王
197/503

◆冥途将ユーメイト・凛Ⅳ

今こそ決着の時! 最強眼鏡メイドを打ち破れ!

「魔剣に他者の魔力を集中させた!? よもや、私の隙をここまで突いてくるなどと……!?」

【主よ! 氷風冥槍(クールメード)による守りでも耐えられるか分からん! こうなれば、直接勝負に打って出るべきぞ!】


 作戦に作戦を重ねて整ったこちらの準備。シャニロッテさんの魔力を魔剣で受け取り、勝負とばかりに私も懐へ潜り込む。

 今の魔剣にはシャニロッテさん自慢の爆発魔法の魔力が蓄えられており、抜刀した時の威力は計り知れない。

 いくら氷風冥槍(クールメード)が守りに長けていても、氷と風では強大な爆風を完全に相殺などできない。至近距離なら尚更だ。

 向こうもそれを理解しているからこそ氷風冥槍(クールメード)を止め、迫る私へ最初の槍術の構えを取り直してくる。


「大したものです。ですが! 私は魔王軍の最高幹部、冥途将! 純粋な槍術においても、剣術に後れは取りません!」

「なら、試してみる!? 私の剣術だって、簡単には破れない!」


 魔法を使った攻防以上に、ここから先は純粋な武芸の勝負。だけど、私が懐へ潜り込むあと一歩のところで、ユーメイトさんは完全に迎撃の構えを整えてしまう。

 本当にこの人は武器の扱いが上手い。戦局を見極める冷静さも戻ってるし、動きも基本に忠実と言えよう。

 技量にしてみれば私より一歩上。眼鏡の下の眼光や魔槍の動きからも、基本を守って迎撃する姿勢が垣間見える。


 ――だからこそ、ユーメイトさんの次の一手は読める。



 ヒュンッ! ――クンッ!



「か、躱した!? 突きが読まれたとでも!?」

「うん、読んでた! 槍だから絶対に突きで狙いすましてくるって!」


 基本に忠実だからこそ、槍として最大限威力を発揮できる技でカウンターを狙うと賭けて正解だった。接近しながら地面を蹴り、突き出された魔槍を背面飛びで躱す。

 ある意味、これがこの人の弱点。氷風冥槍(クールメード)による戦法への自信も含めて、勝つためのパターンが出来上がりすぎてると見た。

 だからこそ一度切り崩して隙を作れば、今度は基本に対する逆張りのように動いて先読みも可能。

 槍の攻撃は突きが基本で威力もあるけど、読めれば回避できる。攻撃自体も『点』で狙ってくるし、避ければ伸びきった槍は逆に隙となる。


 ――そして、こっちは逆に『面』で狙う。ユーメイトさんの懐へ着地しつつ、シャニロッテさんの魔力を宿した魔剣で居合を放つ。




「爆発魔法版……震斬(ブレスラッシュ)!!」



 ドグアァアンッッッ!!



「ガ、ガハッ……!?」

【こ、この威力は……!? あ、主よ……!?】




 私とツギル兄ちゃんとシャニロッテさん。三人の力と想いが重なった一閃。その爆発、迫りくる壁の如く。

 まともに食らったユーメイトさんは、魔槍を握りながらも激しい轟音を響かせて吹き飛んでいく。

 私も威力の加減はできなかった。そもそも、してる余裕がなかった。

 ユーメイトさんほどの実力者を前にして、下手な加減などできるはずがない。全てのエネルギーをユーメイトさんと魔槍に直撃させることしか考えられなかった。

 結果としてそれで正解。吹き飛んだユーメイトさんは坑道の壁面へと叩きつけられ、大きな土埃を上げている。すぐに立ち上がってくる気配もない。


 ――正直、これでダメなら打つ手がない。これ以上の力なんて用意できない。


「ハァ、ハァ……! わ、私達の勝ちでいいよね……!? もう立ち上がれないよね……!?」

「ユ、ユーメイト様!? ば、馬鹿ナ!? たかが人間如きに魔王軍の最高幹部ガ!?」

「ヒィ、ヒィ……! ま、魔王軍最高幹部も最強のメイドも……た、大したことありませんの……!」


 シャニロッテさんと一緒に半ば強がりも交え、この戦いでの勝利を求める。息も切れてるし、こっちだってこれ以上戦うのは厳しすぎる。

 鎧の魔物さんは未だに信じられないって驚愕してるけど、私達もここまで戦えたこと自体が結構な奇跡。強がってても、ユーメイトさんが立ち上がらないことを願うばかり。

 土埃の向こうでは今も動きは見えないし、これで完全に――




 ビュゴォォンッ!!



「い、今のは堪えましたよ……! やってくれましたね……!」

【お、おお……! 流石は我が主よ……! あの攻撃にも耐えられたか……!】




 ――ダウンしてくれることを願ってたのに、その想いも虚しく巻き起こる旋風。晴れた土埃の先から姿を見せるのは、まだ立って魔槍を構えるユーメイトさん。

 さっきの一撃で着てるメイド服はボロボロになってる箇所もあるし、眼鏡に至っては吹き飛んでる。でも、闘志が衰えた様子は見えない。

 冷静とは言いづらいけど、眼光はさっきよりも鋭い。眼鏡がなくなった分だけハッキリと見える。


「かなりのダメージは負いましたが、私の体は人間よりも強固にできています。魔王軍冥途将の真髄、まだまだお見せしますよ……!」

「お、おオ! 素晴らしきかナ、ユーメイト様! これぞ、魔王軍の冥途将ダ!」

「応援、感謝します。ですが、手出し無用なのは変わらずで。私もここからは気持ちで動きますので、巻き添えを食らわないように離れてくれた方が助かります……!」

「か、かしこまりましタ!」


 ボロボロになりながらも、まだまだ戦う気配を見せるユーメイトさん。こっちはシャニロッテさんとも顔を合わせるけど、かなりマズいといった表情しかお互いに出せない。

 さっきまで気持ちでどうにか持ちこたえてたのに、ユーメイトさんの復活で怯んでしまう。

 逆に向こうは闘志がビンビン。アホ毛にまでピリピリとした感触が走る。


「……どうしよ?」

「……どうするですの?」

【あ、諦めるなよ!? まだ負けが決まったわけじゃないだろ!?】


 思わず挫けそうにもなるけど、ツギル兄ちゃんの言う通りだ。まだ勝てなかっただけで、負けと決めつけるには早い。

 相手の目つきも怖くなってるけど、ここで気持ちが折れたらいけない。ここまで戦った意味もなくなる。どうにか奮い立たせるしかない。


「さあ! 行きますよ! 魔王軍冥途将の全身全霊……受けてみなさい!!」


 ここからは気持ちの勝負だ。ユーメイトさんも声に覇気を乗せ、魔槍さんを前方へ突き出してくる。

 そんなユーメイトさんに負けじと、こっちも戦う構えを取り直すけど――




「ユ、ユーメイト様!? こっちじゃないでス! 人間どもは反対方向デスヨ!?」

「……あ、あれ?」




 ――何故かユーメイトさんが向いた方角は、鎧の魔物さん達がいる方角だった。

ところで、ミラリアの一撃を受けてユーメイトは何が吹き飛びましたか?

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