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少女は魔剣と共に楽園を目指す  作者: コーヒー微糖派
鍛冶鉱山で衝突する魔王
192/503

そのメイド、再び推参する

魔王軍冥途将、魔槍使いのユーメイト再見参。

「こちらの方々ですか? どうやら正面の部隊とは別に動き、魔王軍へ奇襲を仕掛けようとしていたようです。もっとも、その程度のことは私の想定内。事前にその可能性も考慮し、私が待ち構えさせていただきました。最高幹部である冥途将の肩書は伊達ではありません」

「成程、流石は眼鏡でメイドさん」

「眼鏡もメイドも『成程』と納得できる理由になりませんの……。そ、それより、この竜人のような女性が魔王軍最高幹部ですの? この人もミラリアさんの知り合いですの? わたくし、いきなり凄い面々に面食らいすぎてついていけませんの……」


 私達を陥れて先へ進んでたSランクパーティーだけど、その先に待ち構えてたユーメイトさんを前に全く歯が立たなかったみたい。

 魔槍さんを構える凛とした佇まいからも、余裕と実力が伺える。以前に闇瘴に操られてた時と違い、磨き抜かれた技が今にも飛んできそうな感じ。


 ――もう勝敗は決しているのにこの隙のなさ。この人、多分以前よりもずっと強い。


「明鏡止水たる冷静で繊細な槍捌きこそが私の真髄です。闇瘴で荒れ狂うこともなく戦えれば、この程度の人間の相手は造作もありません」

「ぼ、僕らを『この程度』だと……!? Sランクパーティーだぞ!?」

「そんな肩書があっても、結果として私に負けているではありませんか? 不満があるならば意地を見せてください。ミラリア様達も少々お待ちを。……この者達の相手を先に終わらせますので」

「な、舐めやがって……!」


 Sランクパーティーのリーダーさんやタンクさんは恨みがましくユーメイトさんを睨んでるけど、今来たばかりの私からしても勝敗は一目瞭然。

 地面についてた膝を頑張って立ち上げても、もう戦える余裕なんてなさそうだ。ユーメイトさんもそれが分かってるから、右手で魔槍さんを体に添わせ、左手で誘うように手招きしてる。

 狙いとしては『次で完全に終わらせる』と見た。あえて挑発し、カウンターでトドメを刺すのが狙いか。

 私もこの人達には罠にハメられたけど、流石にここは止めた方が――




「リーダー! これ以上は無理よ!」

「離脱の羽根を使う! この場は退散するしかない!」

「ま、待て! 僕はまだ――」




 ――いいと思ってたんだけど、先にヒーラーさんとウィザードさんが動いた。

 羽根を取り出すと放り投げ、瞬く間にSランクパーティー四人の姿が光とともに消えていく。おそらく、緊急離脱用のマジックアイテムか何かだろう。

 これは賢明な判断。あそこで無理に挑みかかれば、ユーメイトさんによって瞬殺されていたに違いない。


「……逃げましたか。まあ、いいでしょう。正面で交戦してるドラゴン達はどうなってますか?」

「ハッ。あえて戦力の投入を段階的にすることデ、予定通り持久戦に持ち込めていまス。まだ十分に継続戦闘は可能でス」

「かしこまりました。……ならば、こちらも時間は十分ということですね」


 ユーメイトさんも追走するようなことはなく、鎧の魔物さんへの状況確認を優先してる。

 どうにも、魔王軍の方が策略では上回ってるっぽい。別動隊の奇襲も読まれてたし、その気になれば正面の部隊だって危ない気配がする。

 そんな話を聞いてしまえば心配になるけど、危険なのはこっちも同じ。一度魔槍さんを下ろしたユーメイトさんは、私達の方へゆっくり歩み寄ってくる。


「今回は別にお連れの方もいらっしゃるようなので、改めて自己紹介させていただきます。私は魔王軍冥途将のユーメイトと申します。以後、お見知りおきを」

「ご、ご親切にどうもですの……。い、一応確認したいのですが、あなたは本当に魔王軍の最高幹部ですの?」

「その通りでございます。魔王ゼロラージャ様の右腕にして、あらゆる敵を冥途へ送る最強メイド――冥途将。誉れ高きその肩書に嘘偽りはございません」

「メ、メイドの定義がわたくしの認識と違いますの……。なら、ミラリアさんのお友達というのは?」

「……それは違います。私はあくまでメイドで冥途将。ミラリア様とは知人であれど、友人ではございません。一時期メイドをしていたことは確かにありますが」

「……『メイド』がゲシュタルト崩壊しそうですの」


 その際に当然シャニロッテさんの姿も目に入り、かつてディストールでお世話になった頃からの礼儀正しさで挨拶してくる。

 こういう姿を見てると、別に悪い人には見えない。魔王軍がどうのこうので大変だけど、それだけで判断するのは早計にも思える。

 メイドの世界の奥深さも気になるけど、こうして知ってる人と再会できたんだ。何より、魔王軍最高幹部となれば話してみる価値はある。


「ねえねえ、ユーメイトさん。私もタタラエッジの魔王軍討伐メンバーに加わってる。でも、話ができるなら無闇に戦いたくはない」

「ミラリア様ならそうおっしゃられると思っておりました。とはいえ、我らは魔王軍。本来、人間とは敵対する勢力でございます」

【魔剣を携えていようとも、魔槍使いの主とは大違いだな。そこまでして戦火の拡大を避けたいか?】

「うん、避けたい。人間も魔王軍も、どっちにも被害を出したくない。ワガママな願望だけど、少しだけでも事情を聴いてみたい。そもそも魔王軍はどうしてタタラエッジの坑道を狙ってるの?」


 このまま坑道正面での戦いも続けば、たくさん苦しい思いをする人達が双方に出る。そんなの私も嫌。

 だから、少しでもその可能性を避けられる選択をしたい。一番事態が丸く収まる道を探したい。


 そのために重要となるのは、魔王軍が今回ここまで動いてる理由。ドラゴンという最高戦力まで動かし、最高幹部のユーメイトさんまで場に揃ってる。

 そこまで本気になる理由がこの坑道にはある。多分、それは私も事前に聞いてたものが目当てなのだろう。




「我ら魔王軍の狙いは、この坑道に眠る神の金属アテハルコン。まずはそれを手にすることこそ、魔王ゼロラージャ様から与えられた使命です」

とりあえず「メイド」連呼しすぎや。

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